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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

いろんな色のインクで

2023-01-14 18:33:12 | 丸谷才一

丸谷才一 二〇〇五年 マガジンハウス
これは去年の夏ごろだったかな、買い求めた古本、読んだのはつい最近。
なかみはほぼほぼ書評集って感じ、一部随筆もあるけれど。
第V章「推薦します」には書評ぢゃなくて、本の帯とか内容見本と呼ばれるものに寄せた文章も収録されてる。
書評集はねえ、ヘンなときに読んぢゃうと本買いたくなってしまって、買えることができたらできたで読むの大変だったりして、危険なんだけど。
でも最近、自分にとって新しく読む本が手元に少なくなってきたようなんで、なんか面白そうなもんないかってちょっと期待したんだが、そういうときにかぎってピンとくるものが見つけられなかったりする、やれやれ。
ところで、書評家として丸谷さんはどのように本を選ぶのかって訊かれてるインタビューがあって、
>僕はなるべく自分の内心の欲求から本を読むようにしています。(略)近頃はこの傾向が流行ってるとか、どういう本が売れたとか、何が最近は評判が悪いとか、そういうことは考えないで、ただ自分の心の中だけを見つめる。(略)
>だから本を選ぶときだって、僕が読みたいと思う本を読んでみて、もしそれがダメな本だったら書評はしない。いいなと思ったら、そしてその感想をもし僕がかなりうまく書くことができたなら、それはかなりの人が読む本になるだろう。そういう非常に自己中心的みたいな、しかし実は自己中心じゃないんだけれども、そういう考え方をするんですよ。
>だから僕の本の選び方は、いわゆる書評ジャーナリズムの編集者の選び方と違うはずですよ。(略)
>それから、本の選び方では、文明というものを考え方の基準にします。狭い意味での文学とか、藝術とか、学問とかに縛られません。われわれの文明に貢献する本かどうか、検討するわけですね。(p.34-35)
なんて答えてる、とても興味深いですね。
どうでもいいけど、第IV章の随筆のなかには、1960年の優勝から丸谷さんはずっと大洋ホエールズファンで、1998年にじつに38年ぶりにベイスターズが優勝したときのよろこびを書いたものがあって、なんか無邪気っぽくていい。
コンテンツは以下のとおり。(……書評は、書名・著者名を書かないと何のことかわからんか?)
I 書評のレッスン
 藝のない書評は書評ぢやない
 マンゾーニ『いいなづけ』の書評を書き直す
 カズオ・イシグロ『日の名残り』の書評に書き足す
II 74の書評
 危険な日記
 日本にはない型の美術評論
 人生を花やかに弔ふ
 ミセス・ブラウンの配色
 辺境のキリスト教
 文学的伝説
 突起から組紐のループが垂れた感じの
 恐るべき話術の哲学書
 浅田宗伯の飴のために
 古代的なトリックスター
 偉い学者の書いた薄い本
 十六番目の勅撰和歌集
 所領を求める者、宝を求める者
 第三の男
 ロマン派の名残りのもの
 生きとし生けるものいづれか歌を
 大弓の弦は燕の声に似た響きを立てて
 戦記物藝能と体制
 戦後日本最高の喜劇
 世界文学大辞典の大項目
 ヴェニスでの宝さがし
 1939年といふすごい年
 逸民そして市民
 聖河はどこかにある
 抒情的政治への批判
 「書き出し」から「結末」まで
 蠅は鳩よりも色事が上手
 ミッソーニの織物
 わたしも出題します
 文化人類学から経済学まで
 ゴシップとスキャンダル
 元日も発掘する青春
 ものを考へない日本人
 文藝時評の時代から書評の時代へ
 「喪失」の研究
 巨匠の若書き
 正宗白鳥=小林秀雄的風土に逆らつて
 象牙海岸のベッドで
 小説的人間の探求
 挨拶といふ儀式のために
 原日本語とタミル語とそして……
 稲作といつしよに到来したもの
 花嫁衣裳の赤と白
 『万葉』から谷川俊太郎まで
 老女の変形譚
 山椒味噌のおむすび
 言葉のエネルギー
 菜の花とレイプ
 並び大名、腰元、そして……
 野毛山節考
 失はれた時間をなつかしむ
 図太い先生
 この花やかな訳者たちの顔ぶれ
 作曲家は鳥の唄を金銭出納帳に書きつけた
 ミスタ・ブルームの先輩
 詩人は人生を二度生きる
 悪の研究
 古代ローマの政治的言説
 地霊によつて祝福される恋
 ヒロイックな批評家
 灯の色がはたちではない戎橋
 わけのわからない印刷物の研究
 共同体と孤独
 サロンの主宰者
 自殺願望者の陽気な余生
 クセジュに逆らつて
 生活の藝術化
 風俗への関心
 『宮本武蔵』以後最も好評を博した新聞小説
 イプセンの同時代作家
 日本人の知らないアメリカ
 娘ごころの研究
 不死身のマーガレット
 ちようどチャンドラーと同じやうに
III ポケットの本バッグの本そして……
 一種の反小説
 山崎正和の文庫三冊を選ぶ
 共同体のための小説家
 双子をめぐる文学論
 サイデンステッカーさんの小説
 ある和刻本のこと
 慶事を喜ぶ
 しぶしぶ批判する
 林望さんの最初の本
 昭和史の戯曲三冊を選ぶ
 刺戟の強い中国文明史
 再び『灰色の午後』のこと
 近代と反近代
 蝶のための日本語
IV ときどき樹を見ながら
 東京はすごい町
 恵比寿ガーデンプレイスのことから話ははじまる
 秋の暮
 馬賊とブラジャー
 『肌ざわり』のころ
 思ひ出
 果物の詩
 俳と儒
 王朝的なもの
 造語について
 牡丹その他
 国立の旦那のこと
 十八年と三十八年
 38年ぶりの「大洋」優勝
 横浜ベイスターズ一九九八
V 推薦します
 知的興奮と哄笑とそれから
 中西進さんの学問
 十年ほどの違ひ
 健全な文明論が芯のやうに通つてゐる
 二都物語
 不思議な名作
 『荒地』にしても、ボルヘスやナボコフの小説にしても……
 ある小説のこと
 脱帽!
 故里の花
 背番号は7
 小説と女
 書物譚
 文壇史といふもの
 小説の名手
 言葉と新聞
 ダブリンの歩き方
 叶ふ願ひ
VI 名作を選ばう
 近代日本の百冊を選ぶ
  32 木下謙次郎『美味求真』
  33 佐藤春夫『退屈読本』
  41 折口信夫『古代研究』
  46 柳田國男『一目小僧その他』
  49 谷崎潤一郎『文章読本』
  80 井伏鱒二『珍品堂主人』
  83 福田恆存『私の国語教室』
 千年紀のベスト100作品を選ぶ
   1 紫式部『源氏物語』
  10 『千一夜物語』
  22 フェリーニ「8 1/2」
  52 ボッティチェリ「春」
  76 クレランド『ファニー・ヒル』


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