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進化する日本型経営

2019-12-23 12:00:00 | 19期生のブログリレー

皆さん、こんにちは。19期生の宇野毅です。今日は、去る12月11日の「人を大切にする経営研究会」で講演された日本レーザーの近藤亘之会長が実現している「進化する日本型経営」について紹介したいと思います。

『日本型ティール組織』として注目されている日本レーザーですが、「挑戦する経営者」のひとりとして紹介された「未踏の時代のリーダー論:日本経済新聞出版社」の中で、近藤会長自身は、自社の経営スタイルを「進化する日本型経営」と呼んでいます。そして、その経営スタイルの根幹は「自己組織化」であると述べられています。

「自己組織化」とは、秩序や構造が自然にできあがる現象のことで雪の結晶が有名ですが、人間社会における秩序の形成なども広い意味での「自己組織化」とみなすことができ、多くのジャンルで注目されている概念です。

「自己組織化」された同社では、例えば長年取引をしてきた海外有力サプライヤーから総代理店契約を打ち切られても、圧倒的な当事者意識を持つ社員たちが自律的に行動し、新規ビジネスを探してきます。その結果、25年以上に渡って黒字経営を続けられています。

東京工業大学の今田高俊教授によると、「自己組織化」が達成されるためにリーダー(社長)には、以下の4点を実践する度量が求められるとのことです。①創造的な個の営みを優先する②揺らぎを秩序の源泉とみなす③不均衡および混沌(カオス)を排除しない④コントロールセンターを認めない。

言うのは易しいですが、経営トップの実践は極めて困難だと思います。先日の講演会ではご自身の経験を二つ話されていました。一つは、全額会社負担の社員旅行の募集で、家族を残して行けないと断った社員に、家族も連れてきてよいと担当者が伝え、トップには事後承諾となったこと、二つ目は、サーバーが乗っ取られた海外取引先の偽アドレスに4千万円を振り込み年間利益の1/4が詐取された際に、担当者を怒鳴りつけることなく受け入れたこと。両案件ともトップとしてひとこと言いたい気持ちを抑えるのに必死であったと笑顔でおっしゃっていました。

日本レーザーがこのような「自己組織化」を高いレベルで実践できている要因はいくつかあるそうです。社員を大切にしている実感を持ってもらうために雇用は絶対に守ると約束したこと、外国人雇用という異文化のダイバシティを強力に進めたこと、年功序列や定昇を完全に排除し、社員ひとりひとりが高いレベルをめざせるように教育・研修などを進めていること、などです。また、クレド(基本方針)には顧客より従業員満足の方が優先すると記されています。加えて、MEBO(経営者と従業員による事業買収)で親会社から独立したことが大きな転機になったとのことでした。

近藤会長によると、「進化する日本型経営」とは、生涯雇用を前提とし多様な人材を採用していくこと、そのうえで個々の社員と向き合いその事情に応じて多様な雇用契約や待遇を実現すること、会社の都合を社員に押し付けるのではなく社員の事情に応じて会社が仕事の進め方や働き方を工夫していくことで、社員とその家族の幸福度を上げる経営である、と説明されています。また、この理念を実践して黒字を続けていくことは極めてハードルが高いがあえて困難を受け入れることで、より大きな成長が得られてきたと述べられていました。

実際、このような理念を持った、第二、第三の「日本レーザー」を目指す企業が出てくるのか、現実はかなり困難であると感じます。しかし、働き手の減少が進む日本経済の中では、従業員ひとりひとりのモチベーションを高め、当事者意識を持ってアウトプットを出し続けていける組織づくりがこれまで以上に重要になってくるはずです。すなわち、「進化する日本型経営」=『人を大切にする経営』は今後益々重要性が増して来るでしょう。このような『人を大切にする経営』を実践しようとする経営者と並走し成功に向けたサポートができるように、自分自身も学び、成長していきたいと思います。

コメント (3)
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