みなさん、こんにちは。19期の西山です。
もうすぐ今年も終わりですね。
師走でなにかと忙しい時期なので体調管理に気をつけましょう。
さて、今回のテーマは「企業戦略としてのルール形成」です。
最近、専門家の方からお話を聞く機会があり、中小企業を含めた日本企業の成長戦略として大事な視点だと思いましたのでご紹介します。
国内外のビジネス市場はWTOなどの国際ルールから、FTAなどの政府間協定、各国内の法律・規制まで、さまざまなルールで成り立っています。
ルール次第で競争条件は大きく変わるため、自社ビジネスに有利にも不利にも作用する可能性があります。
そんな複雑化・多様化する市場のなかで、企業が自国政府や外国政府への働きかけなどにより、適切なルール環境を作り上げていく活動が「ルール形成(ルール・メイキング)」です。
もっとざっくり言えば、今の時代、ルール環境を適切に形成しないと、せっかくいいものを作っていてもビジネスにつながらない可能性があります。
米中摩擦の影響で中国の通信機器メーカーが米国市場から排除されようとしているのは、シンボリックな事例です。
さまざまな事情である日突然、政策が変わり、自社に不利なルールが形成され、市場から撤退を強いられる。
ひと昔では考えられなかったような国益むき出しの攻防が世界中で進行しています。
このような潮流を日本企業はどこまで認識し、対応できているでしょうか?
専門家の話で興味深かったのが、海外企業と日本企業の考え方の違いです。
海外企業は、上記のように、自社に有利になるルール形成に力を入れ始めています。
問題があればルール自体を変えてしまおうという発想です。
一方、日本企業でよくあるパターンは、どんなルールでも与えられたものに適合しようと努力することだそうです。
ルールが変われば、文句を言いながらも、そのルール内でベストを尽くそうとする。
これは一見、正しい対応のように思えますが、すべてはルールで決まるので、ルール自体が自社にとって不利であれば、どんなに頑張っても結果は悪化してしまいます。
このように企業の成長戦略にとって重要なルール形成ですが、市場への影響力やリソースが限られる中小企業にとって、政府などへの働きかけはハードルが高いと思われます。
他方で、海外進出している中小企業は進出国のルールに沿って活動せざるを得ません。
内需中心の企業でも、たとえば政府間交渉などによって規制が緩和されたり、逆に強まったりするなどして、影響を受ける可能性があります。
ルール適応型からルール形成型への発想転換は中小企業にとっても他人事ではないと言えます。
では、中小企業はどうしたらいいでしょうか?
専門家の話では、
① 経営トップが上記の認識を持ち、状況に応じて柔軟に発想を変える
② 国内外のニュースなどから自社に深刻な影響を与える争点を抽出する。あわせて、それに関連するルール形成の動きがあれば、それを注視する
③ 争点に優先順位をつけ、事業戦略に落とし込む
④ 必要に応じて、取引先の大手企業や業界団体などと連携してルール形成を進める
などが考えられるそうです。
企業診断では外部環境は所与のものとされがちですが、これからは外部環境自身を変える努力も求められる時代なのかもしれません。
このような観点から企業の診断・支援を捉えたことがなかったので新鮮でした。
中小企業とルール形成の関係について、これからも考えていきたいと思います。