CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】武漢脱出記 中国とフランス、二つのロックダウン

2021-05-11 20:55:30 | 読書感想文とか読み物レビウー
武漢脱出記 中国とフランス、二つのロックダウン  著:ビンタオ・チェン

フランス在住の武漢出身中国人の著者が、
春節のために帰郷した先で、コロナ騒動のロックダウンに遭遇した
その日々を記した本でありました
武漢で、かなり警戒を強めて対処していた様子が、
正直羨ましいといえるほど、国の圧力というか、
いい意味での制御が行われていたようで興味深かった

政治的な何かというメッセージは一切排除されていて、
まさに一市民の目線といった感じの文調なのがよろしく、
インドア派と思しき生き様が、なんとも共感を呼ぶようでありました
そんなに外出なくても、死なないよなぁと思ってしまう

中国での統制下における不自由と、
戦時中の闇市のようなやり取りとかが興味深くて
こういうのがさすがだなぁと思ったりもしたんだけど、
そういう闇経済もあれこれあってこそ、厳しい統制も機能したのではないかと
思わされたりするのでありました
なんだかんだ、中央の力が、著者がいうところの集団を利して、個人を排するという
その思想のもと遺憾なく発揮されているから、
収束に向って着実に進んでいるようにも見えてよかったのでありました
また、現物主義的で、医療関係者に勲章とか、誉とか
そういうものではなく金銭での支援を行っているというのが
即物的ながら、一番効果的なのかもなぁと思わされる

そんな状態で、武漢も少し納まりを見せた隙を見てフランスへ戻り、
今度はそちらでのロックダウンと、ロックダウン解除を経験していくわけなんだが、
フランス、および、イギリスあたりの右往左往しっぷりと、
市民たちの自由意志の強さが、非常に対比がきいてて面白かった
こういう事態においては、中国みたいな統制がよいのだろうと
思わされたりもするんだが、市民はそれよりも自由というものに価値を見出している
そんな風にも見えて、だからこその西洋人といった見え方もしてしまうのである
西洋人というよりも、民主主義というか、自由主義というか、
個人というものが強く力を持てる世界といえるのかもしれん

第二波を迎える前で日記は終わりを告げるといった感じだが、
はたして今どのように生きているか、気にならんでもないところ
と、実録的なもんだろうと読んでいたんだが、
訳者による解説を読んでいたら、ところどころ可笑しい、
というか、盛ってるか作ってるんじゃないか?という記述が多々あったそうで、
見事に騙されたではないが、そういや、なんでも盛るということがデフォルトだったかもなと
今更、なんでも書いてあるからと信じてはいけないと
思い知ったりしたのであった
面白かっただけに、なお罪作りであると思うのである
考えてみれば、御実家が共産党に対して割と従順な家庭であることを考えると、
当局に目をつけられるようなことは書けないだろうから、
リップサービスも含めて、プロパガンダ的なものに仕上がってるんだろうかと
かんぐってしまった