CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】この世にたやすい仕事はない

2016-04-30 20:47:43 | 読書感想文とか読み物レビウー
この世にたやすい仕事はない  作:津村 記久子

面白かった
とある女性が、様々な仕事を転々としていく
まぁそういうお話なのでありますけども、
この様々な仕事が、なかなか面白くて
よくこんな仕事思いついたな、いや、本当にあるんだろうか
など、考えてしまうような秀逸さで
非常に楽しく読んだのであります

さくさくっと読めそうな内容なのに、
なぜだか、じっくりと読み込まされる
独特の言葉選びなんかも楽しくて、
なんとも、読み惚れたのでありました
よい読書をした気がする

題名の通りであるものの、
紹介される仕事は、なんというか、仕事の重要さ、大変さ、難しさ、
こういったものが、ほどよくというか、
そこそこ重要で、あんまり大変じゃなく、難しくもないと
まぁ、そんな仕事あったら、みんなやるんじゃないかしらと
思わなくもない内容ながらも、
いざ、主人公が挑んでいくと、その仕事の楽しみ方みたいなのが
少しずつ見出されてきて、なんかいい塩梅になってきたと思うと
なにかれ、事件というほどでもないことがあって、
転職すると、そういう繰り返しで、やがて
仕事に関するひとつのことに気付くと
まぁ、そういう物語だったわけでありますけども、
これもまた、ちょっと疲れてきた、くたびれてきたと
そんな時分に読むと、じんわり効きそうなものでありました

女性特有といってしまっていいのか、
柔らかくて、ほんわかとして楽しい文章が心地よかったのでありますが、
何よりも、台詞選びと、言葉遊びが秀逸で
どっかで使う機会がないかしらという絶妙なつっこみなんかが
じわじわ効いてくる小説でありました

せんべえの袋に載ってる、豆知識的なものを考える仕事というのが
なかなかステキな仕事だと思ったりしたのでありますが、
バスの音声広告原稿を書くだとか、ひたすら他人を監視するだとか
物語が核心に迫る前に体験していく仕事が
なかなかステキで、軽く読めてよかったと思うのでありました

【読書】ハンニバル戦争

2016-04-28 22:02:20 | 読書感想文とか読み物レビウー
ハンニバル戦争  作:佐藤 賢一

久しぶりに歴史ものを読みました
ずっと気になっていた、ハンニバル・バルカの戦記もので、
ローマ時代といっていいのか、
あれくらいの時代の戦争ものは、なんとかどうにか、
読んでみたいと渇望していたところに
この新刊でありました、いい、とてもよかった

内容は、ハンニバルの名前を冠するにも関わらず
ローマ側、いや、もっというと、スキピオを中心にというか
もう、スキピオの物語でしかなかったのであります
なかなか斬新といっていいのだろうか、
ほとんどハンニバルが出てこない、
いや、出てきて、戦ってるんだけども
まるで人物の描写がないまま、
その戦争巧者に翻弄されまくるという内容で、
まだ見ぬハンニバルの凄さを
スキピオを通して教えられるというか
学べるかのような内容でありました

物語としては、私がどっかで聞いた話に忠実な感じなので
たぶん、きわめて史実というか
伝説に沿った内容なんだろうと思うところ、
こてんぱんにやられるスキピオが、
その相手方であるハンニバルを手本にして
だんだんと、その才能を開花させていくと
まぁ、そういう筋書きなわけですけども
このこてんぱん加減が、なかなか見事というか
本当、まったく勝てないんじゃないかと
衝撃的なほど、ハンニバルが強くて
楽しく読めたのでありました

本当かどうかわかりませんが、
この本によれば、ハンニバルは政治家としても有能だった様子で、
まさに神の子といった具合で、またも
この憧れを強めるに至ったのでありますが、
敵ながら師事しているかのようなスキピオも面白く、
ローマ人の傲慢さも含めて
とても、面白い時代物を読んだと
満足の一冊だったのであります

【読書】超一流の雑談力

2016-04-27 21:41:25 | 読書感想文とか読み物レビウー
超一流の雑談力  著:安田 正

久しぶりに、こういうのを意識的に読みました
昔から他人とうまくコミュニケーションがとれないと
悩んでいるというか、困っているんだが、
直す気が無いという状況だったわけですが
そのせいでか、仕事上で大きな差支えを覚えたりして
にっちもさっちもいかない時期を数年前に過ごし、
その影響からか、一層、他人との会話が滞るようになったと
まぁ、なかなか難儀をしておる次第
これを解決するための一冊と、期待してといえばかっこいいが、
まぁ、今まで読んできたのとかわらんだろうと
あまり、大きく望まず読んだのでありました

まぁ、読み終わって、やっぱり今まで読んだのと
さほどの違いはないなという感想だったりするのであります

雑談という、一見なんでもないことから
人間関係は始められるというお話から、
とっかかりを作る方法や、テクニックなんかを
あれこれと網羅していて、なかなか楽しく読めたのであります
なるほどなぁと思ったりもするわけだけども、
相変わらず、会話の最中にそこに気付く力があったら
たぶん、こんな風になってないなどと
思ったりしてしまったりなのでありました

とはいえ、持ちネタを練習しておきましょうという話や、
以前から、思っているけどもできていなかった
自分の話をして相手に拾ってもらうやら、
話のなかから広がる手筋を見つけるやら、
どうにか意識して会話していけば
糸口が見つかるのではないかという部分が
かなり力強く語られていて
なかなか頼もしく読めたのでありました
そうなんだよ、つい忘れがちなんだが
自分のことを語らないと会話は成り立っていかないのでありますね

あとは、語り方についてのテクニックなんかもあったんだが
これはちょっと、気持ち悪いというか、
実際全部を実践しているとすると、下手なやり方では
逆効果じゃないかと、旨い人がやるからこそのという
技術ものっていたように見受けられたので
なかなか、大変であると感じるのでありました

とまれ、これを生かして誰か、知らない人と話す機会があるか
考えながら、本に没頭している矛盾であります

【読書】だし生活、はじめました。

2016-04-26 20:59:11 | 読書感想文とか読み物レビウー
だし生活、はじめました。  著:梅津 有希子

気になって読んでしまった
一人暮らしもだいぶ長くなってきたので
そろそろ、ちゃんとした食事を作れるように
そんなことも思うようになったわけで、
手に取ったのでありました
やだ、こんなに簡単なの
そんなおばはんみたいなものいいになりつつ
なんというか、簡単に凄くよろしげな食生活を予感させる
素晴らしい本だったように思うのでありました

だしをとる、こういう基本的なことを
面倒くさいからと、どうしてもやらない、
そんな人のために、本当簡単にできてしまいますよと
その方法や、効能なんかをずいずい紹介していて
読んでいるだけで、なんか、だしをとったことがあるかのような
リアルな感想を述べられるようになるという、
ある種罪作りな本でありました
まだとってないけど、もうとったように思えてしまっている
なかなか凄い本だ

かつを節の種類別解説から、簡単なだしのとり方
コーヒードリップでだしをとるだとか
そういう説明を交えつつ、
昆布だし、いりこだし、そのほかもろもろのだしについて
効能というか、美味しさを交えつつ
使い方、とりかたを網羅していて大変楽しい本でありました
水につけとくだけで昆布だしなんか
ぱぱっととれちゃうということから、
冷蔵庫に常備しましょうと
なるほどなぁと、ちょっとやってみたくて仕方ないと
そんな気分になるのでありました

惜しいというほどでもないのだけども、
だしがらをどう処理するか
そこがもっと読みたかったなと
個人的には、だしをとった後が気になると
思ったりしたのでありますが
なんとなし、本当やってみようと思わされる
いい本でありました

【読書】英雄の書

2016-04-25 21:08:49 | 読書感想文とか読み物レビウー
英雄の書  著:黒川 伊保子

大仰なタイトルに慄きながら読んだのでありますが、
新社会人向けといっても差支えがない、
さりとて、くたびれた大人が読んでも面白い、
人生の指針というか、背骨を教えてくれる本でありました

いわゆる自己啓発系なのでありますけども
英雄の風格といったらいいか、
成功する人のプリンシプル的なことを念頭においた
あれやこれやの所作というか、考え方について
いくつか挙げてくれている本であります
流石に、凄く参考になった
なんて手放しで喜ぶほど、私も若くないのですが
こういう心がけが、やっぱり足りてないなと
反省しきりになってしまうのであります
ただ、この本によれば、
いつまでもくよくよしているのはNGだそうで、
この読み方もまた、よろしくない
英雄の道は険しいと思わざるを得ないのであります

他の人と違うということに、
臆病になるなという話から、
他人を責めず自分を省みるという、
なんだろうか、最近流行りのアドラー的な考え方もふまえつつ、
風格というものを意識して、
夢ではなく、使命をもって生きようと
力強いお話で終わるのでありますけども、
なかなか、そうだと思っても
できないことが多いのは常のこと
でも、わかりやすく読みやすく
そのくせ、説教臭い感じではなく、背中を押すような
優しくて力強い筆運びに
なかなか、満足したのでありました

ま、実践するかどうかは、また別の話でありますね
いつもこんなだから、駄目なんだ
いや、この反省もだめなんだ

真田丸  表裏

2016-04-24 20:45:10 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「真田丸」
視聴完了であります
面白い回だった、いい塩梅だ
何がいいって、小一郎秀長がかなりクローズアップされていて
もう、これだけで十分である

そんなわけで、結構危うい豊臣家を写していて、
清正のイメージとかが、なかなか
新鮮に映っておりまして、ステキステキ
先週までは、キャラと役者的に、市松と逆じゃねぇかと
思ったりしていたのでありますけども、杞憂でありましたね
こういう、ちょっと憂いがある感じでいくなら
これもまた、よい清正であります
本当は、もっと切れ者の清正が見たいんだけど
今回のドラマはそれをとらんのだろう
それはそれだ

と、ばたばたする信繁を楽しむという
そんな回だったようにも思うのでありますが、
上田との温度差が非常に面白くて、
なんとも来週も楽しみになってきたのであります
このどたばた感が続くなら、
戦が始まりそうでやらないというのが
ずっと続いても、なんか満足できそうな気がせんでもない
三成のいったとおり、すでに戦でどうのこうのという
時代ではないという言い分は、なんとも
ステキなことだと思い知るわけであります

まぁ、実際は九州征伐で大変な戦になるんだけども
それはそれでありましょう
毛利とか名前が出てきたけども、仙石とか
黒官とか、あのあたりは出てこんのだろうか
出してしまうと収集つかないからやらないんだろうな
など、あれこれ考えたのでありました

結構早い段階で、利休が片付けられそうなのも
なんか気になるところでありますが
ともかくも、秀吉時代を楽しみに
見ていきたいと思わせる回でありました

【読書】君の膵臓をたべたい

2016-04-23 21:19:56 | 読書感想文とか読み物レビウー
君の膵臓をたべたい  作:住野 よる

話題作読みも、これでひと段落ではないかしら
少し前の作品ではありますが、
やたらめっぽう人気が高くて気になっていた小説であります
読んで、終わって、ああ、そうか
こういう小説だったかと
なんか、一人ごちてしまったのでありますけども
感動作といって相違ない、青春となんともいえない悲しさというか
涙を描いた作品でありました

ある人気者の女の子が、実は膵臓の病気で一年後に死ぬ
そんな事実に、クラスでも地味で仕方ない主人公が、
ふとしたことをきっかけに知ってしまう
それから、二人だけの秘密を抱いて、少ない高校生活を歩んでいく、
なんてまぁ、そういう青春小説だったわけでありますけども
主人公の少年が、なんというか、達観しすぎというか
引きこもりで、他人との交わり方に難がある感じで、
いや、そういう小説だから言っても詮の無い話なんだけど
さっぱりというか、あまりにも淡白すぎてどうかしている
そういう感じのやつはいるけども、
実際このシチュエーションになったら
話が変わってくるだろうがよ、なんて
思ったりしたのでありますけども、
そういうことも含めつつ、やきもき、もちもちしながら
話は進んだのでありました

ともあれ、彼女との恋人とか友達とか、
なんかそういうのとは違うと形容したくなる
特別な関係によって、彼もやがて成長していくと
そういう成長物語でもあったのですが
なんとも、心情が吐露される台詞と行動がステキで
終盤にいたっては、流石に涙を誘われるような
素晴らしい描写で、なんとも、ぐっときたのでありました

色々と、思うところや、感じたところがあるんだけども
それを書くとネタバレになってしまうと
いらぬ気を回しつつ、よい小説だったと
久しぶりに現代モノの、それも、青春ものを読んだなぁと
満足の一冊だったのでありました

【読書】サブマリン

2016-04-22 20:19:28 | 読書感想文とか読み物レビウー
サブマリン  作:伊坂 幸太郎

少年向けといっても差し支えがないような、
随分と柔らかく、いいお話でありました
突拍子も無い能力だとか、変に近未来的な何かだとか
そういうSFめいたものはなく、
きわめて日常的に、家庭裁判所のお仕事といえばいいのか
少年犯罪について、少し書いた
そんなイメージのお話でありました
いい物語だった

大半が台詞というか、くだらない会話で進むというところが
非常にステキであるなといつも思うのであります
なんというか、本当にそういう会話がありそうといえばいいのか、
思わず言ってしまいそうな返答だとか、つっこみだとか、
そんなのがぱたぱたと織られていくのがとても楽しい

それでいて、取り扱う内容はなかなか深くて、
少年犯罪について、その罪を犯した少年をどう扱うか
どう触れ合っていくかなんてことを見せながら、
なんというかな、説教くさくはないけども、
暑苦しくてよろしかろう未来を見せる
そんなお話でありまして
読後感は随分すっきりして、さわやかだったのであります

嘘かまことかわからない、駄話を織り交ぜつつ、
少年の心に寄り添う、なんていう柔らかい表現でなくて、
直接的に触れに行くというか、もう、
掴みかかるようなアプローチや、会話、コミュニケート方法に
こんな人、いないんだけども、居たら楽しそうだなと
小説ならではの造詣が見事なキャラクタを
堪能できたのでありました

少しだけ、哲学めいたやりとりも出てくるんだけども、
それもなんというか、やってみたけど
やっぱり違うな、このテンションじゃねぇなと
ざっくり、捨てていくかのように話が進むのが気持ちよくて
なんとも、いい気分になれたと
思うのでありましたとさ

【読書】カエルの楽園

2016-04-21 21:22:05 | 読書感想文とか読み物レビウー
カエルの楽園  作:百田 尚樹

続いての話題作であります
いつごろからか、妙な物議を醸す人になってしまい、
心のそこからがっかりしているわけですが、
それでもこの人の小説は当たり外れはあるけど面白い
そう思っていたわけでありまして
今回も、話題になってるからどんなもんかと
蓋を開けたら、個人的にははずれのほうでありました

童話風に仕立てられているものの
内容はどうにも、薄っぺらいというと、なんか違うんだが
どうも、なんとも、うまく言えない、
悪口や罵詈の類は思い浮かぶけども
それは本質に届くところではない、なんとも
もにゃもにゃする読後感であります
いや、いわんとするところは、昨今作者が言っていることと
寸分たがわぬことだし、
そもそも小説家なんだから、自説を小説で語るというのは
賞賛してしかるべきなんだろうけども
なんだろうな、どうも、いけませんね
そんな、えらく辛く見えてしまったのでありました

あるカエルが、楽園を探して方々をめぐり、
楽園と思えた場所が、だんだんと雲行き怪しくなっていくと
まぁそういう仕立ての内容でありまして
国のなりたちと、そこで侃侃諤諤語られるものが
荒唐無稽とまではいわないけども、
ちょっと一方的に偏った内容でありまして
もうちょっと掘り下げるというか、やりようがあるだろうにと
眉をひそめてしまうような一辺倒でありました

たぶん、カエルは茹で上がるまで茹でられていることに気づかない

そういう故事じゃないけど、よく言われることを
もうちょっと説明的にやった物語風の説教だったので
なかろうかと思うのでありました
登場人物に、ハンドレッドなるカエルが出てくるのでありますが
これがたぶん、著者なんだろうかしらと思ったりしながらも、
著者だと思わせている、なにか別の登場人物のようにも思えて
以前から抱えている、騒動を起こしているだけで
本心から、そう思ってないんじゃないかしらと
そんな風に読めてしまう、なんとも
残念な読後感だったのでありました

規模の小さいドナルドトランプ的なものを想像してしまうのである

【読書】天才

2016-04-20 20:56:11 | 読書感想文とか読み物レビウー
天才  作:石原 慎太郎

読書強化月間というか、話題作を乱れ読み中であります
こういう旬のものは、そのときに読んでおかないとなと
つくづく思ったりするところ
今回は、しばらく静かにしてたと思ったら
本書いていたのかと驚かされた、石原元都知事が書いた
田中角栄の小説でありました
石原慎太郎が、田中角栄の小説書くとか、
昭和も遠くなったというか、これはなんというか
凄いことだなと思い知るわけであります

ちょっと前に、ハマコーの本を読んだり、
映像の世紀で戦後の話を知ったりということもあって、
少しばかり、自分が生きていた時代なのに
記憶にない話があれこれとある、そんなところの
今思うと、憧れといってもいい
そんな時代のお話が語られておりました

田中角栄の一人称小説というスタイルで、
当時を回想しつつ、昭和政治史を語るといった
そんな具合でありました
小説か?と思わなくもないのでありますが、
吐露されるというか、紡がれていく言葉というか
出来事と人物たちが
いずれも、昭和史、戦後史のそれこれだと
圧倒されるでもないが、
まぁこれも、今知っているから思うところだなと
つくづくであります

田中角栄という天才が、どのように手腕を発揮し、
どう生きて、どう死んでいったか、
死ぬというのは、政治家として、人間としてと
二つについて語られていくわけでありまして
なかなか面白いものでありました
正直、事実はわからんので
どう捉えていいのかも悩むところでありますが
アメリカに嵌められたというのは
ひとつ、そうなのかもしれないと思わされるのであります

中国と手を組むという難事をこなしたというこの一事だけでも
凄まじい仕事ぶりだと思うわけでありますが、
高度経済成長を突き進んだ、その推進力を生んだのも
どうやら、この政治力であったようで
時代もあり、才能もあり、何かそういう下で蠢いたんだろうなと
天運天命的なものを感じたのであります

気さくさという部分といえばいいのか、
陳腐な言い回しの人間力というそれ、包容力や、器の大きさという
そんな昭和の政治家ならではの部分もしっかりかかれていて、
反官僚といっても差し支えない生き方は
やはり、ヒーローのように見えてしまうのでありました

【読書】京都ぎらい 千年の古都のいやらしさ、ぜんぶ書く

2016-04-19 21:16:28 | 読書感想文とか読み物レビウー
京都ぎらい 千年の古都のいやらしさ、ぜんぶ書く  著:井上 章一

またも話題作であります
新書で、久しぶりの大ヒットを飛ばしている本
京都にゆかりある感じで
現状生きている私には、なにやら楽しみで
たまらんという具合だったのでありますが
読み終わって、なるほどな、と
腑に落ちるというか、面白かったと
素直に思って、後腐れなく終わったと
そんな具合であります

タイトルの通りで、京都が嫌い、
何が嫌いって、京都の洛中に住んでいる人間が嫌いと
まぁそういうお話でありました
生まれと育ちが嵯峨のあたりの人らしく、
そのせいで、だいぶ洛中の人から
バカにされたという経験から
どうにも、京都が嫌いで仕方ないという
愛憎半ばな状態に陥っているようで
なんとも、ぱらぱらと読むのにうってつけでありました

ちょっと内容的には繰言めいたところもあるものの、
京都人独特の言い回しとか、その嫌味さ、高貴を鼻にかけた感じが
大変細かく、豆やかにと描かれておりまして
ことによっては、声を出して笑ったのでありました
山科を評して、東山が西に見えてしまうからヤダというのは
本当に笑った、言いそう、多分言うんだろう

まぁ、そういうわけで、
洛中の人たちが、いかに排他的に自分たちを
かこつけているかという、
知っている人からすれば当たり前のそれこれを
つらつらと書いているわけでありまして
京都の寺社のあり方やら、
南北朝についてやら、洛中でもさらに差別があるとか
そういうお話が盛りだくさんでありました
新書でちょうどよいといったらいいのか、
あんまり読みすぎるとくどいというか
僻みが伝染りそうな気がするような具合でした

土地を小馬鹿にするという話については、
まぁ京都も確かにというか、京都は酷いけども
どこの土地でも、隣町やらなんやらよりはと、
ありそうな話であるなと思ったりするところ
不思議と、京都だから話になるのであって
よその土地では、ああそうですかとしかならないのが
やっぱり京都の凄いところでないかしらと
思ったりもしたのでありましたとさ

人間に存在する根拠のない優越感というのが
どうにも好きな自分には、よい指摘本でありました
面白かった

【読書】あの日

2016-04-18 21:12:43 | 読書感想文とか読み物レビウー
あの日  著:小保方 晴子

話題作を読みました
以前に、検証というか記者さんが書いた
一連の事件を追った本を読んでいたわけで、
ようやくその反対側からの意見が読めると
ちょっと楽しみにしたのであります

読み終わって、整理してみると、
・時間が足らなかったようだ
・知らないうちに、大きな話になってしまったようだ
・はしごをはずされたようだ

と、そんな按配だったのであります
巷では、責任回避の一手だなんて聞いていましたが、
まぁ、実際どこまでが本当なのかよくわからんので、
どうともわれわれ、ただ読むだけの人に
何を断罪することもできないわけでありまして、
実際のところは、やっぱり、前回の記者さんのルポを読んだときと同様、
著者には悪意はなかったように思うし、
それでいて稚拙であり、甘かったのは間違いないなんて
かっこよく片付けてしまうのであります

本を読み終わって、実際のところ、
STAP細胞はあるのかないのか、
そのあたりがよくわからないというか、
この書き方なら、何か、それになりそうなものは
出現、いや、発現してたんじゃないかと
読めなくもなかったところであります
これもまた、どうしようもないというか、
批判は山ほどあげられるし、抗弁も鬼のようにできるだろうと
もう、水掛け論とはいわないまでも、
うまく整理できない材料になっているんだろうなと
そんなことが推し量れて、少し残念な気持ちになったところであります

とはいえ、内容のはしばしに、
これ以上迷惑をかけたくないので、黙っていた
けれど、だいぶ裏切られて悔しいのでここで晴らす
と、まぁそういう論調が多く見られまして、
後だしじゃんけんみたいな本になっている感は
いなめないところ、
それはやっぱり、社会人としていかんのじゃないか、
ちょっと言説が甘すぎるだろうかしらと
感じてしまう、おっさんなのであります

他方、この本でいいというか、なんか、
シンパシーでもないが、何か共鳴めいたものを覚えたところでは、
あらゆる事象が敵となり、かさとなって糾弾してくる恐怖、
それを無責任にあおるマスコミと、
それにあおられて罵る聴衆という図式は、
これまた、気をつけたいところというか
こんだけかわいそうな目にあったのは、確かなのだななんて
思わされたりしたのであります
片方によれば、それくらいのことをしでかしたと
そういう話なんだろうけども、なんだろうか、
情動的すぎるんじゃないかなんて思ったりしたのであります

あとは、本まで出されたこともあってか、
以前に読んだ記者さんの取材方法に対しての怨嗟も見られて、
どうも、笹井先生を追いやったのはその取材じゃないのかと
あの本とは真っ向対立することも書かれていたところが興味深い
確かに、記者さんのなんというか、真実にという、
得体の知れない力を振りかざしての行為は
一種、攻撃でもあったんじゃないかと
これは納得してしまうところでありました

最終的にはというか、理研の対応も
随分悪かったんじゃないかしらというのと、
医学ではないが、学閥めいた何かだとか、
そういう、小保方さんでは計り知れない大きなものもまた
蠢いた結果なんでないかと感じた次第

事件として、なんとなし、無責任な罵倒も許される風潮という
それがあったと個人的にも思ったところでありました
そもそも、何をもって罪というのかというあたりも、
うやむやに終わった事件というか、終わらせられたようでもあるから
やっぱり、全体的にしっくりこない事案だったのだろうと
感じてしまうのであります

長くなった

真田丸  秀吉

2016-04-17 20:43:41 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「真田丸」
視聴完了であります
がらっと明るい回かと思ったら
不穏に次ぐ不穏といった具合で
非常にステキでありました、
いい中休み回だったように思うのであります

秀吉一家の顔見世が終わり
それと同時に、不穏な未来を予告するラストが
抜群だなと思えたというか、
ひとつ、このドラマのテーマを見たようでもあって
なかなか楽しかったのでありました
あれこれつっこみどころがあるのは
もうこの際うっちゃっておいて、
最後の信繁の言葉が、なかなか深読みできて見ごたえありました

ちょっと秀次に厳しすぎるんじゃないかと
思わなくもなかったのでありますけども
まぁ、まずまずあんな具合で、
景勝の小物っぷりというか、なんだろうか
秀吉の器の大きさと、同時に怖さみたいなのが
茶々を通して伝わってくるというのもこれまた
楽しげでありました
あの小姓みたいなやつが今後どうなるのか、
あれ、大野だったりするんだろうかと思ったりしつつ
今回の秀頼の父親が楽しみでならんのであります
こりゃ、絶対、秀吉のじゃないというエピソードをつっこんできて
結局、秀吉の子供だというパターンだな
その際にすったもんだがあって
秀次がどうだかと思うと、うなるところでありました

そして、先送りがまったく状況を好転させないということについて
来週またも、真田が思い知るというところが
非常に楽しみなわけでありますが
大阪篇も楽しんでいきたいところであります

追記
ああ、書き忘れていた
利休が出てきたと喜んでいたわけでありますが
まさか、あんな人相見みたいな役どころとは残念でありましたところ
とはいえ、珠光青磁と思しき茶碗だったのはステキでありました
もてなしている感じが出てましたな
ただ、笑ってはいけない茶室みたいな雰囲気だったのが
悔やまれるところなんだけども
ヒノノニトンみたいな雰囲気かと思ってしまったじゃないか

【読書】ラーメンの語られざる歴史

2016-04-16 20:16:44 | 読書感想文とか読み物レビウー
ラーメンの語られざる歴史  著:ジョージ・ソルト

ガイジンが書いた、日本のラーメンについて
面白おかしい本だと思ったら、大間違い
物凄く緻密に構築された、
日本におけるラーメンという物体がたどった
その軌跡と、その周縁について、
歴史、経済、文化といった側面から
相当に練って解析した内容でありました
襟を正して読むべきだというほどだ
ラーメンのことなのに

そんなわけで、ラーメンがいつごろから日本で
食べ始められたのかというあたりの
市井風俗史めいた内容から始まって
ラーメンが担ってきた役割というものが喝破される
いわく、労働者にとってのエネルギー供給源だったこと、
それが、地方から上ってきた若者のソウルフードになり、
貧乏=ラーメン的な構造ができていたり、
それすらも超えてきたときに、
中華料理屋や食堂で食べるものから、
専門店で食べるものにシフトしていき、
ラーメンがやがて文化という側面を得て
ファンがつき、なにかエクストリーム化していく
近頃じゃ、クールな日本の食べ物になった
というのも、テリヤキとスシに、アメリカ人が飽きてたからだ
なんていうあたりにいたるまで
非常に面白い考察と、念入りな論考が続けられるのでありました
脱帽である、凄い、本当に学問として
一本できるんじゃないかと錯覚してしまう(錯覚ではないかもしれない)

そんなわけで、どこのラーメンがうまいとかいう次元ではなく、
日本の近現代について、ラーメンという切り口で見たというか
いや、本当に不思議と、ラーメンのことでもあり日本のことでもある、
やっぱりラーメンは日本の何か象徴めいたものなのかと
思わされてしまうほど、非常によろしくできている
大変真面目な本を読んだのでありました

読み終わってラーメン食べたくなるかと思っていたけど
まったくそういう気分にならないあたり
この本の優秀さを思うのであります
凄い、ラーメンも凄い

【読書】こんな日もあるさ

2016-04-13 19:13:03 | 読書感想文とか読み物レビウー
こんな日もあるさ  著:上原 隆

エッセーではない、随筆とも違う気がする
ノンフィクションとうたってあったので、
これはルポタージュというのか、あるいは、
ドキュメンタリと呼ぶのがよいのかもしれない
なんというか、凄く丁寧な取材の成果を見た
そういう感じでありました
面白いんだけども、重い、物凄くずっしりときた

タクシー会社に取材にいき、
様々なタクシー運転手から話を聞いていたり、
うつ病に苦しんだ人、苦しんでいる人に話しを聞いたり、
特殊な刺青を入れるという試みをするアーティストと
その客に話を聞いたりと、
ジャンルは様々なれど、市井の人といえばいいのか、
どちらかというと、下層域というか、
何かしら、困窮や、貧困、悩みや怨嗟にまみれた
読んでいて、どこか蝕まれてしまうような鬱屈や、闇なんかも見えるけど
そこで生きている、それを受け入れているような
人間そのものがえぐりだされているというのか、
なんとも、凄い読み応えだったのであります

どれもこれも、重たくて、やだなと
正直思ってしまうストーリーなんだけども、
そこで不思議と、しっかりと生きている話があると
なんとも、不思議な気分になるというか、
希望みたいなのを見たのでありました
とはいえ、半分くらいは、目を背けたくなるようなというか
なんとも、後味が悪いというか、
うああぁ、なんて声が漏れるような
どうともしようがない、
アル中の話だったり、パチンコ狂の話だったりもあって
どちらも人間だと思わされるんだが
凄い話だと、小説だとしても納得できる
内容だったように思えたのでありました

読んで欝になるではないけども、
あんまり精神衛生によくないなと
個人的に感じたとさ
ひっぱられてしまう