CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】異常 アノマリー

2022-09-28 21:20:26 | 読書感想文とか読み物レビウー
異常 アノマリー  作:エルヴェ・ル・テリエ

なかなか難しい小説だった
SFで、ややもすると、とがりすぎてた頃の筒井康隆かというような(ラストだけじゃねぇか)
そんなことを考えながら、序盤の割と退屈と思われる展開、
そこからなんとなく想像できるきっかけ、そして、それが導いた次の展開が
とんでもない「異常」を運んできたという感じで、
中盤から、相当面白く読まされてしまった

思考実験めいた内容でもあるし、
哲学的な問いかけの小説としても読めるもので、
この設定を思いついただけで、すでに面白いなと
なかなか感動して読んだのでありました
結局、それが何かという独白めいた考え、その押しつけというのが一切なく、
その思考実験下において、この物語ではこういう感じになってましたと
淡々と事実を書いただけのようでもあるのが凄いよかった
余白というか、空想の余地がふんだんにあって
読んだ後の気持ちがよかった

核心的なところに触れてしまうとネタバレになってしまうので、
なかなかこれということが書きにくいけども、
自分がこの立場に立った時、どうなるだろうか、
自分じゃなくても、そういうものを見た時どう思うだろうかと
考えさせられるところがすごくよくて、
その世界の中で、宗教的な暴走の部分は正直よくわからないのだが、
このあたりは西欧、あるいはキリスト教的な規範めいたものがあると理解しやすいのか、
それよりは、おそらくはトランプ氏と思われる大統領が下す決断の方が、納得できるようにも思えて
非常に面白かったのでありました

難しいと思うと難しい本だけども、
深く考えずにというか、あまりとらわれずに読んで
とても楽しいと思えた

【ドラマ】プリズム

2022-09-27 21:12:22 | ドラマ映画テレビ感想
特別興味のあるテーマではないんだが、
役者がうますぎて見入ってしまったというか、
魅入られてしまった
そんな感じで、やっぱり杉咲花さんの演技が好きなんだなと
改めて思い知らされた一作だったと思うのである

男→男←女
という感じの三角関係を描いた物語
なんてしてしまうと、単純化しすぎなんだが、
まぁ、そういうジェンダーのあれこれも含めつつ、
結局のところ、好きだの嫌いだの、幸せだのなんだのというのを
個人の目線、その人の尺度というので描いていて
丁寧なつくりに、脚本がよかったと感じたのでありました
いつだったかの、人を好きになれない人の話に似ているというか、
こういうデリケートそうな問題を扱いつつも、
そこに違和感というか、変な押しつけとかそういうのがないというところが
とてもよかったと、すんなり見たのであった

植物を扱う仕事という設定にも結構惹かれるものがあったんだが、
さほどそこには意味がなくて、人間関係と価値観の問題というのに、
家族とか、そういう人のつながりの基本単位の部分で
あーだこーだしているのだけど、それがかなり自然で、
終盤の三人で本音をぶつけ合うところなんて、
確かにそういう流れで、そういう主張があろうという内容を
全身で吐露するというか、ぶつけあうという姿、
これを三人の役者がものすごい演技力でねじふせてきたというか、
とてつもない説得力で見せてくれたというのに
衝撃を受けたのでありました

正直、自分の性格上この手の問題と、痴話げんかというのは
しょーもないなと思ってしまうんだけども、
それをやりあっているこの三人の姿、やりとり、言葉づかい、息遣い
そんなものが、ものすごくリアルというか、
演技とか、物語の都合とかではなく
真剣に、本当にそうなってきたんだという感じがするほどで
いいものを見せてもらったなと感動したのでありました

森山未来のなよっとした演技というのも新鮮だったし、
なんとも、脚本のいい意味での軽さみたいなのを
役者が最大限に見せてくれた、これは演出と呼ばれるものもよかったと
つまりはそういう総合的なドラマとしてのレベルが高かったということなのか
わからんが、話はさっぱり好みじゃないのに
いいドラマ見たなと、すごく楽しんだのであったとメモっておく

【読書】三国志名臣列伝魏篇

2022-09-26 20:55:10 | 読書感想文とか読み物レビウー
三国志名臣列伝魏篇  作:宮城谷昌光

久しぶりの宮城谷先生の中国史短編集を読みました
楚漢名臣列伝も読んだけど、三国志の魏にクローズアップとは、
なかなか渋いと楽しみに読んだのであります
扱われていたのは、程昱、張遼、鍾繇、賈逵、曹真、蔣済、鄧艾なんだが、
最近のIMEは、三国志の登場人物を普通に変換できるんだなと
これを書きながら、そっちの方が衝撃的でありますところ
鄧艾とか、こんな単語よく登録したな

一口に魏といっても、曹操、曹丕、曹叡のどこの時点かというのもありつつ、
そのあたりを幅広く支えた渋いラインナップといったところ
程昱、張遼はメジャー線といってもいいけど、
曹真あたり、案外知らなくて渋いなと思った次第
書かれっぷりが、いかにも宮城谷先生が好きそうな感じで、
将というか、人物というものは、徳があってこそという根幹があって、
ここにあげられた全員が、そういう人物として描かれているのが興味深かった
正直、賈逵なんてほとんど知らなかったんだが、こういう渋い文官がいっぱいいたのが
魏のすごいところだなと、改めて思い知ったのであります
このタイプは、満寵とかが近いと思ってたんだが、あれはあれで将軍の資質が強すぎて、
いかにも文官というか、太守という仕事をまっとうする人物というのが
政治家として、自治体の主として、むしろ近しい尊敬できる人とでもいうような
いい感じの描かれたたで、大変よかったと思うのである
小学校で、各地のえらい人として習うそれみたいな、マイナーメジャーな感じがとてもよかった

とはいえ、さすが三国時代の男たちということで、
その列伝の内容、ここぞというところでの気合というか、腹の座った対応やら
己の正義を貫くところと、悲劇めいた内容なんていうのが、
共通して、いい感じで訪れるというか、
実際本当にこんな感じだったんだろうかと、わからんけども、
そうであってほしいという武将像みたいなのが読めて
大変満足だったのでした

曹真のところで出てきた、曹洪が金持ちなのに吝嗇という話が
妙に納得というか、こういう曹洪像というのが、なんか新鮮でよかった
また、この親戚のおじさんという感じで話をするという関係性もよくて、
もう大きな王朝、なんだったら、王族といっても過言でない曹家の会話なのに
世間話っぽいようにも思えるところがすごくいいなと
しみじみ読んだのである
魏伝も面白かったけど、曹一族あれこれ集めてもらったら、さらに楽しいんじゃないかと
思ったりしたのである
三国志のキャラ立ちを読むだけで楽しいという、マニア向けの楽しみ方もできてよかった
マニアというほどでもないんだが

鎌倉殿の13人  オンベレビブンビンバ

2022-09-25 21:19:02 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
視聴完了しました
今回も死人がでなかったけど、切ない話に落とし込んできたなと
その前段階をじっくり味わった感じでありました
とはいえ、殺す感じだけど、実際は殺せないとわかってしまっていると
なんとももやっとするというか、ちょっと、気持ち的に盛り上がりが弱ると
そんな感じになったのでありました
とはいえ、なんだかんだ、時政という人がいいなぁと
そういう話としての集大成として、見事だったと思うのである

三浦が暗躍でもないけど、
なんかしらんが、いい感じで小四郎に使われているのが鮮明になっているのが
ここのところずっと違和感があるわけだが、これはわざとやってて
最期になんかあるんだろうかとちょっと勘繰ってしまうところ
とはいえ、小四郎が調子乗ってるでもないが、
小四郎なりに苦労と理解して、それをなんとかしようという気持ちがあって、
そして金剛にそれをなんていうシーンを差し込んでいるんだけど
なんか、小四郎がそれ言ってもなぁというか、
時政のそういうことを言わないでやってきたということとの対比が
見事なのか、たまたまなのか(そんなわけない)、時政との器というか
人としての差というのが、残酷に提示されていて
なんとも怖い脚本だと思うのでありました

北条が揃って、のほほんとしているシーンの残酷さみたいなのもよかったわけだが、
あまりにもしつらえが見事すぎて、なんかあるんじゃないか、
いや、あの父上において、そんなことやるわけがないなとも
改めて思わされたりしつつ、それはそれとおいといて、
和田と仲良くなりすぎで、武衛問題がぶり返したりとか
なんか、妙な伏線めいたものがばらまかれているなと感じるのでありました

とりあえず、政子と小四郎をいいように描いていて、うまくいかない人というアレかと思ったけど、
ここにきて、どうやら、本人たちはそう思っていたけども、結局悪い人というか、
そういう自分では気づかないそれなんだが、時流を乗りこなした人という
最大限にひどいありさまを描こうとしているんだろうかと
だんだん、小四郎がかわいそうに見えてきたと
思ったり感じたりしたのでありました

脚本家先生が、小四郎をどうしたいかといったら、
最大限に持ち上げて落とすでもないが、フォローすればするほどひどいというのを
地でやろうと、悪辣極まりないそれなんじゃと
思うようになってきたのであった
気づくのが遅いとか言われそうだな

【読書】シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗

2022-09-21 21:02:39 | 読書感想文とか読み物レビウー
シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗  著:高殿円

ホームズの性別を入れ替えて現代化したシリーズの続編、
本歌のほうはまったく知らないので、楽しく読めた一冊でありました

相変わらず漫画のようなというか、
キャラクタの魅せ方がうまい小説だと楽しみながら、
さらさらと推理小説を堪能できた
SFめいた設定も楽しめるけども、やはり、それぞれのキャラクタへのさりげない描写がいいというか、
少女漫画的な場面や、装いが丁寧に文章化されているので、
絵を想像するとなかなか楽しいのがよいと思う、
というか、漫画として再生されてしまう感じがする

さらっとしか出てこないのが、
基本的にワトソンの一人語りで進んでしまう手前、ワトソンの過去が見え隠れするシーンが
割と陰惨なようなのに、その真実というか、核心にまったく迫れないのが面白いというか
凄い興味深いと思えてならないのであった
割と内容は、砂糖菓子のような甘さを感じる描写が多いのに、
そのコーテイングの下にだいぶ黒々としたものがあるような、
その匂わせともいうべき、漏れ伝わる内容がよいと思うのである

正直推理の内容は、よくわからんうちにというか、
解こうと思っているうちから、解決していく、あるいは、
先の展開にさっさと連れ去られるという忙しさがあって、
なんだかんだ、スリルを楽しむ、サスペンス小説として楽しいのもよかった

登場人物が、何かしら、壊れているというでもないが、
どっか常人、常と異なっているところがある
その狂気みたいなのが、愉快さで包まれているというところに
えもいわれぬ魅力があるなと、しみじみかみしめたのであった

それはそれとして、ストーンヘンジで数時間踊り続けた話は笑った
すげぇその動画がみたいわ

【映画】ブレット・トレイン

2022-09-20 21:01:16 | ドラマ映画テレビ感想
予告で見てて、面白そうだなと思いつつも、
見ることないかしらと過ごしていたんだが
原作が伊坂幸太郎のマリアビートルだと聞いて、がぜん興味がわいて見てきたのでありました

色々と説明は省いて、
ある殺し屋稼業の男が、ちょっとした休暇明けの仕事として
ブリーフケースを盗む事案を請け負ったと
そういうお話でありまして、
そのブリーフケースをめぐって、いくつかの殺し屋が鉢合わせて、
めちゃくちゃになっていくというバイオレンスアクションコメディ
そんな塩梅でありました

確かに面白かったし、ああ、そういやこんな話だったなと
原作のことを思い出しながら楽しんだのでありますが、
世間で、凄いハシャがれているニセ日本感の良さとかが、
個人的には、そこまではまらなかったけども
あんな新幹線ねーよというスタートから、
意外と真面目に、東京、品川、静岡(なぜだ)、名古屋、米原、京都と進んでいくのが面白くて
その土地土地で、特に違和感なくヤクザや、ヤクザや、ヤクザが出てくるというのが
なかなか楽しかったのである
けど、あのホームの感じとか、東海道新幹線というか、どっちかというと山陽新幹線のこだま停車駅系だよなと
失礼なことを思ったりしたのであった
というか、静岡でどうのこうのするなら、名古屋の方がよかったんじゃないかとか
ちょっと思ったり思わなかったりするんだが、
名古屋にしてしまうと、米原まで近すぎるという理由なんだろうか、
そこの整合性いるか?とか、もう、考えだしたら切りがない楽しみ方は好きなのである
新幹線の名前が「ゆかり」という謎車両なのもすごいよかった
あんな立派な豪華車両があるのに、各駅めいて停まるというのがまたよいわ

トンデモ日本っぷりは、なかなかよくできていて、
序盤の東京っぽい都市の感じと、終盤の京都っぽい都市の感じが
どこの世界線の都市なのかわからない感じながらも、
なんとなし、ああ、要素は東京っぽいし、京都っぽい、
そもそもこの二つの都市が違うということは理解されてんだなという
妙な安心感が心地よかったと思ったのでありました
なんだかんだ、楽しんでるな

殺し屋たちとのやりとりは、コミカルながらも、
いい感じでアメリカナイズされていて、唐突に指しはさまれるメキシコマフィアの抗争とかが面白くて、
あの短いイメージムービーで、だいたいのことが想像できるというか、
あのコテコテ感は好きだなぁと、そっちはかなり楽しんだのでありました
あと、重要なキーワードになる、機関車トーマス押しの部分が、
よくよく考えてみると、あれは向こうの方が本場だからより自然に見えるのかと
なんとなし、納得しながら見てしまったのである
正直、トーマスに関して知識が足らないので、原作読んだ時もさっぱりぴんとこなかったんだが
今回も、まぁ、そういうもんかと思いつつ
でも、外人が言ってんなら、説得力あるなと感じたりしたのでありました

と、まぁ、なかなか楽しく見終えたんだけども、
意味のない映画であったなという気持ちもぬぐえないところもありまして、
なんだろう、雰囲気を楽しむのはよかったけども、
特に何かこれがというものは存在しない、そういうおもちゃというか、
漫画みたいな話だなと思って見終えたのでありました

【読書】屈辱の数学史

2022-09-19 21:00:34 | 読書感想文とか読み物レビウー
屈辱の数学史  著:マット・パーカー

これは邦題がよろしくないと思ってしまった
だいぶ、タイトルから想像する内容と違っていて、
よく見たら、原題が、A comedy of MATHS errorsのようで、
数学の笑い話的な感じで、まさにこの通りといった内容でありました
そういうわけで、興味そそられず読んだら
むしろ自分が好きな感じの本だったと、楽しんだわけである
ただ、そうなると、この邦題で人をつっておいて、実際はこの内容で
数学沼ではないが、何かしらの興味をおこさせようという
計算づくのそれなのか、わからんが、ともかく本の感想を

様々な数学的失敗というか、
人類が軽視しがちな数学的なことというのをいくつか集めて、
結構悲惨というか、危険凄惨なインシデントも含みつつ
割とやりがちな、数字を丸めてしまうとか、単位を間違えてしまうとか、
コンピュータに潜む、あらゆるエラーの数々とか
そういうのを発端にした面白おかしい話なんかを並べていて、
それでいて、数学の何が大切か、どこがどういうものかわかりやすく解説と
素晴らしいことこの上ない本でありました
面白すぎるわ

nullさんという人をDBが扱えないなんてのは、
なるほどなというか、思わずにやっとしてしまう感じだけども、
ごく一般的に使われている著名計算ソフトが、
3分の1という表現実際はできていない話とか
ま、エクセルに関わらず、コンピュータというものがそういう感じにできているというところが
大変面白いと思うところでありました
オーバーフローの話は、どんな話を聞いても面白いなと思うんだが、
ファミコン時代の予期せぬバグとかも、あれ起因らしいなと聞くと
胸躍るというか、楽しい気持ちになってくるのである

あとは、よくある平均値の話で、
これでもかと、平均をとると、そんな人類が存在しないという答えにたどり着くのが
とても楽しくて、ありそうな人というのは、存在しないという
ちょっとした哲学問題みたいになってるのがたまらなく好きだと思った
標準偏差の重要性や、偏りというものの重要さというか、
存在感というのを自然と呼ばれるものに感じるわけである
そういう意味で、真のランダムが難しい話も同様なわけだが、
数学の話といいつつ、大半が、現代コンピュータのそれこれのようでもあって、
あれも数学の集大成みたいなもんなんだなと、改めて理解するのであった
いや、理解ではなく認知というのが正しいようである

そんなわけで、いにしねのインターネッツ時代のよもやま話とかもあったりして、
ネットスケープと内部時計の話とか、懐かしいと感じるものもあり
大変楽しく読み終えたのでありました
あらうゆるものを抽象化して使っているけど、案外、抽象化する必要なく
結構テケトーに動いてんじゃないかとか思ってしまう
これが、数学に与える屈辱というものであり、
その歴史を記しているから、やっぱり、邦題は正しいのか?とか
考えるのであった

鎌倉殿の13人  武士の鑑

2022-09-18 22:56:30 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
視聴完了しました
畠山の最期ということで、どんなひどい話になるかと思ったら
個人的には、先週の方が心にきたというか、
今回、畠山がとかくというよりも、時政との確執がはっきりした
そちらの描写の方が重いなと思いつつ
なかなか鎌倉の作法というものについて
考えさせられる一回だったと感じたのであります

できるだけ悲壮感を出さないためなのか、そうでもないのか、
わからんけども、今回はかなり細かいギャグを挟んできていたのもあってか、
そこまで悲壮感がでなかったと個人的に思うんだが
和田殿が、あんなに最初嫌ってたのに
今じゃ、すっかり畠山のこと好きなんだなぁと
ほっこりしながら見てしまったわけで
二人のやりとりが、ほのぼのしてていいなと思いつつも
結局のところ、終始畠山が和田のことを理解というか御していたんだなと
思い知らされる内容になっていて面白かったのでありました
腕相撲も封じられて、それでいて戦の方も完全に上手で、
いつだったかの蒲殿襲ったときに、すでにその片鱗があったわけだが
なかなか楽しくやられていてよかったのである

義時とまさかの一騎打ちに驚いたんだが、
もはや、ただのヤンキーの喧嘩みたいになってるのがどうなんだと思いつつも
鎌倉武士ってそういうもんでもあるかなと妙な納得もあり
完全に戦にならない体であるところで、
武士の誇りを守った畠山のやり切った感じというのが、
物語としてはやるせないけども、いい感じだとしみいるようでありました
まぁ、小四郎がちょっとかわいそうだと思わなくもないが
仕方ないねと思わせる何かが、小四郎にはあるな

時政のまいた種というのが、
なかなか深いというか、いちいちその通りだなと思ったわけだけども
従う三浦のあれこれを見ながら、
それでいて、今後のことをと思えばこそ
時政との対決が迫っているのが、否応なく見えてよかったのである
しかし、小四郎が三浦を扱う感じが、ちょっと度を過ぎているとまではいわんが
あれで、平六としては構わないんだろうかと
ちょっと気になってしまったんだが、まぁ、とりあえず三浦党としては
今の小四郎に肩入れしておくのが正解と、ただ、それだけの話なのかもなと
思うのでありました

りくさんも、そろそろ物語上は退場となるのかしらんが
次の悪女も着々とスタンバイしているようだし
楽しみは続くのである

【読書】1R1分34秒

2022-09-14 20:50:45 | 読書感想文とか読み物レビウー
1R1分34秒  作:町屋良平

ボクシングを題材にした小説って面白いな
ひところの潜水艦映画は面白いというのに近い感想だけども、
ボクシングの試合というものを描くにあたり、
そこまでの準備、練習と葛藤、減量という地獄といったイベントが
どれもこれも読んでいるだけで、真に迫ってくるというか
追体験してしまうような面白さがあって
自分にはとても楽しい読書体験になると、今回も満足したのでありました

デビュー戦で華々しく勝ったけども、そのあとがてんで続いていない
もうボクサーとしてということをいうのも恥ずかしいと、
そう感じてもいるような、まさにもがいている四回戦ボーイの様子を描いていくんだが
この心の持ちよう、そして途中で支えてくれるトレーナーや友達とのやりとりといったものが
すごく手触りよく、そうであってほしいように言葉をかけてくれるし、
特に何がということもないで、結局、自分がどうするかどうしたか
ただその結果としてのボクシングの成績となるみたいな
残酷とは異なる、わかりやすい結果がついてくるのが楽しいというか
読んでいて、とてもすっきりと腑に落ちてよいと思う

もしかしたら、全部、ボクサーの夢というか妄想
あるいは、減量苦による幻想ではないかと思うような感じが
きっとリアルなんだろうという、妙な手ごたえというか、読み応えを用意してくれて
主人公がへこたれ気味で、自身にいら立っているという姿がありあり伝わってきても
そんなに嫌な感じではなくて、そういうこともある、そして
そういうことがあることを主人公はわかっていて、だからこそくさくさしていると
まぁ、入れ子が繰り返されるみたいな感じが、
ボクシングと向き合うという煉獄めいたものに近づいていくようでよかった

深いそれこれとかではなく、
なんか、そういうことがありそうで、そういうものを見たかったという
願いをかなえてくれるような小説だったと思うのである
ほめ過ぎだけども、今の自分にはとても合っているリズムというか内容であり、テンポだった

【ドラマ】ももさんと7人のパパゲーノ

2022-09-13 21:09:08 | ドラマ映画テレビ感想
興味深いドラマだった
俳優さんの演技がとてもいいから、
ごく自然に見られたけども、ちょっと前にやってた「空白を満たしなさい」に次ぐ、
自身の命について考えさせられる、大変よいドラマだったと思うのである
ちょっと重たい内容なので、実際に直面している人には
見ることができないのかもと思ったりしながらだったんだが、
そうではない側だからか、なんとも、深く納得ではないけども、
引き込まれて見たのでありました

自殺に関連してしまう、大変センシティブなテーマなんだが、
シナリオがうまくコメディタッチで、かつ演出もそれにこたえて、
女優、俳優みんなが、そこまで重たくないのに、
でも迫ってくるものがあるという、かなり難しいバランスを
のらりくらり、演じてみせてくれていたようで
すごく楽しめたのでありました
こういうものを楽しめるようにお出しされるというのが素晴らしいと思った

ともあれば死にたくなるという葛藤でもない、衝動めいたそれというのは
ちょっと理解できるようにも思ったりするし、
ごく簡単なことで何かのバランスが崩れて、
それが回りとの隔絶を、すさまじいスピードで乖離させていくというのが
ああ、あるなそういうやつと思ってしまったあたりが
すごくよかったというか、実に迫るものがあったと思うのである
実際にももさんのように、突然会社辞めてみようと
なかなかみんな思ってるけど、やってないだけだよなと思ったりしながらも
雄太のように、えいやとやれてしまうというのは
ある意味羨ましいようにも思うし、それによって救われたのは、
その衝動的な行動ではなく、ももさんが居たということなんだというのが
とてもわかるようになっていたのがまたまたよかった
結局、誰かがいるというのが、一番よいことなのかもと
思わされたりするのである
ま、現在シングルですが何か?という感じでもあるんだが

いろんな死にそうな人たちが出てきて、
それぞれの価値観や、スタイルで悩みがあって、
それによって帰結するところが一緒になってしまうというのが危ないんだなと
そういう側に、自分がいつか、あるいは、すぐに立つかもしれないと思わされつつも
それでいて、その時になんとかしようと思えるような
そういう過ごし方みたいなのを見せてもらったようでもあり
そんな重たいテーマの中で、
友情とかそういうのの物語としてもうまく見せてくれていたと
快哉の出来栄えだったと思うのであった

主演二人が、ともかく上手いのがよかったと思うのである

【読書】海をあげる

2022-09-12 21:18:09 | 読書感想文とか読み物レビウー
海をあげる  著:上間陽子

沖縄を中心にした、貧困など、様々な圧力災厄の下にいる人たちへの
インタビューや、その調査の上で浮き上がったことをまとめた本
かなり重いというか、ああ、そうなんだと、
ただ頷くでもないが、読んでいくしかないといった感じで
重くないのだけども、固めの黒といった感じの内容で
悪があっての何かとは違う、そういう今どうしようもないとされている世界を
読むことができる本だったと思うのである
言葉選びが難しい

家庭内での性的虐待などに起因する
幼くしての妊娠という事態にあった人たちへのインタビューや
心のフォローなどをされているようだけども、
そういった仕事そのものの説明は一切ないまま、
ただただ、その時に出会った少女であり、少年でありといった
バックボーンにそれぞれの過程がある若者たちとの会話、
そして、考察が続く内容で、そこが事実に肉薄していくようで読み応えがあった

思想なんて、簡単に言ってしまえそうなレッテルだと、
あまり相容れない感じだと思うのだけども、
そういう表層的なところではなく、その場所、その出来事に対してどうあるべきか、
そこを起点として考えや、行動を起こしていくという姿が
この本を読むだけで伝わってきたように思う
政治や、国というものが、どこまでこういったことに立ち入るべきか、
また、立ち入らなくとも邪魔をしないでいるだろうか
そういうことも考えるきっかけとなりそうではあり、
一本調子に反体制といったわかりやすい感じではないと思えてよかった

家庭というものの崩壊というか、
国、もっと小さく、村といったような共同体が崩壊していることと
家族という単位そのものも崩壊しているということが
同時進行でこういうことを起こしているのでもあろうし、
それは望んできた道でもあろうとも考えさせられるのだが
若い、あるいは幼いそれらに、その環境は選んだものではないと思うのであるが
そこで生きるのが、その人の運命でもあるのかと
難しいことを考えてしまう

鎌倉殿の13人  苦い盃

2022-09-11 21:04:28 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
視聴完了しました
不穏極まりない一回でありましたが、
めでたく、誰も死ぬことがなく、つつがなく終わったのが
とてもよかったのではないか、騙されているのか
わからんが、畠山の苦難というか、もう、どうしようもないという
そのアリバイが作られる回であったようにも思われる
誰のって、小四郎にとってのだけどもさ

だいたい、政子と小四郎の姉弟が、どうにかしようと思ったら、
まったくその逆になるというのがこの物語のテーゼともいうべき
ルールというか、もはや、天命というやつなわけだが、
今回もそれがいかんなく発揮されてというか、
あの実依ちゃんですら、おやじ殿の暴走がやばいと
小四郎たちの方に肩入れするほどというのが、なかなかどうして、
あれはあれで、北条もややこしいんだなと思わされたところでありました

なんだかんだ、ちょろちょろ出番のある和田夫妻の関係が
実にほほえましいわけだけども、
あれを見てからの結婚話との落着のつけかた、
それを見せておいての、小四郎のところの新しい夫婦の姿というのが
あれはあれで、かわいそうな男なのだと
そういう、どうでもいいフォローにもならないそれが
さらさら挿し込まれるのが、面白いというか、
徹底的に小四郎がついてないし、それで仕方ない男と描いていて
それでいて主人公というのが凄いと
改めて思うのであった

畠山の毒が、いよいよ、小四郎と時政との対決に火をつけたようでもあり、
そういう意味で非常に重要な回であったなと思いつつ
クライマックスは承久の乱なのか、どのあたりまでか
脚本は上がったらしいけども、楽しみが、今しばらく続くのである

【読書】「次の一手」で覚える将棋 序・中盤の手筋436

2022-09-10 20:51:31 | 読書感想文とか読み物レビウー
「次の一手」で覚える将棋 序・中盤の手筋436  著:週刊将棋編

また実践的な棋書を読んだ
前回の必至を探るのも相当勉強になったけども、
実力をというか、木曾練習として、手筋問題をひたすら解くというのもまた、
大変な練習になるなと、自分にとってほどよいレベル感といい
かなり楽しんで取り組めた一冊でありました

様々な盤面から、おおよそ5手内くらいで結果の良しあしがでる問題ばかりで、
詰みとは異なる、実利のための思考をするトレーニングに大変ありがたい内容に
面白く取り組めたのでありました

問題の難易度がわかりやすいというか、
有利がおおよそはっきりと理解できるところがよくて、
大駒を捨てるタイミングとか、そこで得るべきものというのが
問題から、なるほどなと理解できる感じがして、
ここに載ってるやつ、全部覚えたら初段になれるんじゃないかと
まぁ、だいたい毎回思うようなことを感じたのでありました

しかし、5手一組とか、3手一組とかの問題も、
答えをみたらなるほどなと思うところばかりで、
なぜそれを見ないうちに気づけなかったのかと
このあたりは、結局のところ詰将棋と一緒なんだけども
不思議に思ったりしながら、ともかく慣れだなとひたすら解いていくと
問題の傾向もあるのか、なんとなし、このあたりじゃないかと
手がつくれそうなところの勘所がわかってくるというのが
強くなったような気分にさせてくれてよかった
じゃんじゃん、こういうのを解いていくのが
本当によいのかもと、何かしら思わされたのでありました

話しに聞く継ぎ歩やら、叩きの歩やら、あれこれの実践的な使い方というのが
こういうところなんだなというものがわかり、
あまつ、なんとなくこの盤面は見たことがある気がするというのが出てきて
かなり面白かったのでありました
こういうのを続けていきつつ、自分が気に入っている戦型の本とか読むと
その場面が、さらに出てきて、有利な手筋が理解できるんだろうかと
考えたりしたんだが、まぁ誰でもそこに至ると思うとまた
完全な攻略法的なものはありえないのもまた、
理解できるのでありました

とりあえず、大駒切るときに、王手をかけておいて相手の大駒をかすめ取るという手純が
なんとも気持ちよさそうだなと思ったりするんだが、
この駒をさばくときに、よくよく考えてみると自陣がしっかりしてないと
結果不利になるという、ごく当たり前のことにも気づいたりして
楽しかったのでありました
というか、そのあたりの問題、この場合は自陣に手を入れようみたいな
そういうのも問題としてほしかったかもと思ったんだが
とりあえず、攻めの手筋、攻めの作り方という点で
大変勉強になったと思ったのでありました

また借りてきて、反復練習したい感じだわ

【読書】植物たち

2022-09-07 21:02:06 | 読書感想文とか読み物レビウー
植物たち  作:朝倉かすみ

ちょっとよくわからなかった
いくつかのモチーフとした植物の紹介がさらっとあって、
そのあと、そういう短編が連なるといった感じなんだが
まぁ、そういうものかと思って読めばそこまでなんだけど、
不条理小説とも違うが、
どうも共感、共鳴が難しい内容で、
個人的には楽しみ切れなかったように思うのである

全体的に暗いというか、重いというか、
ダウナー系の内容だったということもあって、
なんとも入り込みにくく、
それでいて、独特の世界観で、男女が軸になった不可解な関係が出てくるので
なんというか、そういう世界があるのかもしれんが、どうなんだとか
思わされるのでありました
清々しさからほど遠い

健全な関係とはいえない男女の綾というか、興味のようなものを
間違った感じで発露していたり、案外そういうものかという奥手さというか
なんともまっとうとはいえない方針でとらえている人ばかりでてきたり
倫理みたいなのが、どっかねじれてる話が多くて
世間からみると異なるという世界観が、
案外普通にあるという話にも読めないこともないが、
たぶんそういうことではなく、純粋にわからないまま、ままで、そう信じているという
気持ち悪さというのがキモなんだろうと思うのであった

ちゃんと消化しきれてないので
感想がふわっとしてしまうんだが
とりあえず、いわゆる世間一般という概念から外れたところで
でも、はっきりとそれが正しいと思える人
そういうものを描いていた、それは、ある意味植物という存在と一緒とか
そういう話か、それは考えすぎというか
無理やりこじつけた感想か、わからんまま、メモをおく

【ドラマ】星新一の不思議な不思議な短編ドラマ

2022-09-06 21:06:21 | ドラマ映画テレビ感想
先日、新しい夜ドラ枠でひっそりやってた
地上波分のみでありますが
無事見ることができました
NHK星新一好きだよなーと思いつつ、
何年か前に、アニメとかも含めて、いくつかの実験的な映像手法で
同じタイトルをやっていたと思いつつも
今回は今回で楽しませてもらったのでありました

もはや鉄板ともいえる、ボッコちゃんと生活維持省が含まれていたのもよかったんだが
なんというか、全体的にちょっとウエットすぎるというか、
なんか、変に深みを与えすぎているという印象を受けたのでありました
生活維持省の方は、まだそのままといった感じに思えたけども、
変に情緒的すぎるというべきか、
上司が次のターゲットを示すシーンとか、あれ蛇足だろうと思ってみてしまったわけなんだが、
本来は、そういった複雑に示唆や謎、予兆を楽しむんじゃなく、ただシンプルに真理を衝いているといった感じこそが、
星新一のショートショートじゃねぇかしら、今回のシリーズはちょっと演出と違うかしらなどと
偉そうに感じたのでありました

特に「地球から来た男」が、なんか、あの演出だと男が狂ってたみたいな余白というか、
そういう可能性を感じてしまったんだが、
個人的には、あれは、そういう要素はなく、確定的に地球ではない場所で、
まったく同じ条件なのに異なる場所ということ、そこに異邦を感じることへの違和感
というのがよいと思ったりしてたんだが
それはそれで、俺の感じ方が違うだけなんだろうか、どうなんだ
誰か教えてくれ

と、思ったりしていたんだが、今回見た中では
「見失った表情」「ものぐさ太郎」の二編が抜群に好きで、
特に前者がいかにも星新一的で、最高に好きだと思ったのでありました
うまく笑えているか、そんな問いかけこそが
凄い星新一的だと感激していたんだけども、
これもまた、余韻を変に強調しすぎてて、オチのところがちょっとメッセージ性強すぎるとか
また贅沢をいってしまうのであった
いや、途中いきなりララランドみたいになるのもどうだと思ったけど
あれは演出的にあってるというか、そういうの好きとか思ってみてたので
もう、ただ単に趣味の世界の感想であるな
「ものぐさ太郎」の方はすごくあっさりと、投げっぱなしとすら思えるようなラストで
いい感じだとしめしめと思っていたのである

なんだかんだ、語ることが多いのはよいことで
次のシリーズが地上波に降りてくるのが楽しみでならないのだ