CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】M資金 欲望の地下資産

2022-10-31 20:58:36 | 読書感想文とか読み物レビウー
M資金 欲望の地下資産  著:藤原良

非常に面白い本だった
M資金という詐欺の常套句とまではいわないが、
古くから伝わるそれこれが、近年でもまだ通用しているという話がまとめられていて
ものすごくためになるというか、面白いもん見たという気分になれた
無粋というでもないが、裏とりしようと思わないんだが、
ある程度仮名にしてあるので、そこを確かめるということもできそうなんだけど
ただ、このM資金という伝説が、どうして通用してしまうのか
その構造みたいなのを解説しているという点が面白かったので
事実というか、実際の起こった方はなるほどなという程度で満足してしまったのである

この詐欺を扱う集団がおおよそ3つほどに体系分類できるようで、
それぞれの成り立ちも面白いんだが、構造をついた詐欺を働いているというところが
きわめて興味深い内容だった
M資金というものが、ある種ロマンめいている、徳川埋蔵金とかと同じ感じで、
それを金も地位もある人間が、ロマンとして信じてしまうというところに
つけこんでいく詐欺であったり、そのための念書とかが、
次の詐欺に使われている、いわゆる、あの人もこういう念書を書いてんですよと使われて
その信ぴょう性が上がってしまうとか、
考えるとすごいことだなと手口の鮮やかさというか、周到な感じに舌を巻くのでありました

また、サギとして、結局M資金がどうしたというところで、
つなぎをするための資金を得るというだけではなくて、
結局、信用棄損を狙って、その口止め料としてアガリを狙うとか
本質がどこにあるか、そこに至るまでの話とかが
かなり面白くて読み入ってしまった
割と単純化して、事件概要の解説としてしまっているので
これは、小説とかのネタにしたら、そりゃ面白いわなと思わされる展開ばかりであった

この本では、そういう手口とか、関わるグループについて詳細に記すことで
M資金詐欺と呼ばれるものへの注意喚起としているそうなんだが、
その割に、読み物として面白くなるようにと狙ったような、
最終的に、「本当にM資金はあるんじゃないか」という事件というか、
出来事があったというところで終わるというのが、また心憎いというか、
この本、啓発本が目的じゃないじゃんとか思ってしまう感じなんだが
ともあれ、面白いと思ってしまったのである

これだけで詐欺の教唆にはならないんだろうけども、
M資金というロマンに取りつかれてしまい、
詐欺だと思っていなくても、そういうことに加担してしまう可能性があったり、
骨董屋経由で、骨董道と似たロマンの売り買いと同軸で進められたりのあたりが
最高に面白かったと思うのであった

というか、こういう本を読んで面白かったとか
わめいている俺もまた、加担してしまっているんだろうか
M資金は多分撲滅しないんだろうなと
トイレの花子さん的なものとして、ある種、古典的な怪異のように思いつつ
楽しみ読み終えたのでありました

鎌倉殿の13人  義盛、お前に罪はない

2022-10-30 21:06:13 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
視聴完了しました
和田合戦を描いたわけだが、コミカルな部分もあるしと、
まとまったよい一回だったなと、
最近、誰が死のうと心動かない感じになってきて視聴してしまっていると
衝撃を受けながら見たんだが、ともかく、よい回だったのであります

メインの和田あれこれもよかったところではあるんだけども、
今作では巴の使い方が尋常なく好待遇で、
このドラマにおいて、巴御前と北条政子の二人だけが
何か異なる寵愛を受けているような感じで、
なんとも、やるせない気持ちにさせられるのでありました
巴がずっとかわいい感じで描かれるというか、
ここまで引っ張って出てくるとは、まったく想像してなかった
最初から予定通りだったのか、役者さんがよかったからそのままきたのか
そのあたりはさっぱりわからんけども、
出陣を断られたときの、泣き笑いみたいな表情が実によかったなと
あれだけで見た甲斐があったとか思わされたのであります

あと、謎の好待遇というか、突然ドラマが違う時空に飛び立ったようになってた
大江殿の単独行が面白すぎたんだが、なんで急に殺陣が必殺仕事人風になったのか、
さっぱり理解できないとういか、そもそも、
あのシーン必要だったか?と思うような感じだったわけで、
あの感じは、北条からすると兄が死んだシーンと重なるそれだったと思うんだが、
そういう前振りというか、なんか、かなと思ったのに、
よく考えたら、その瞬間にいた北条の人が小四郎しかいなくて、
その小四郎がそれどころではないとか、なんとも
なんのためのシーンだったかさっぱりわからんのだが、
大江がかっこよかったから、すべてよしみたいな感じで満足でありました
時代劇殺陣というか、いい感じでコテコテ感があって
ある種コントっぽかったけど、かっこよかったなぁと眼福眼福

起請文吐くくだりとかは、NHKに投書がいきそうだなと
時間帯から考えてしまったんだが、まぁ面白かったし
さばさばと和田殺しをくみ上げていく、小四郎と指示に従う平六がよろしくなくて
実に素晴らしかったと思うのでありました
殺陣といえば、平六もさらっと居眠りっぽい動きになってたのが、
セルフオマージュ的なものだったのかわからんが、
かっこいいのに、あんまりかっこよく撮ってもらえないのがかわいそうだなと
思ったりしたのである
こう考えると、殺陣ってのは、カメラワークと演出も重要なんだなと思い知るのであった

と、まぁ、何見てた感想なのかわからん感じだけど
さほど、情動を揺さぶられることもなく、楽しく見終えたと
そんな感じなのである

【読書】自閉症のぼくは書くことで息をする

2022-10-26 21:05:30 | 読書感想文とか読み物レビウー
自閉症のぼくは書くことで息をする  著:ダーラ・マカナルティ

自閉症への理解が乏しいので、驚いたというか感心してしまったんだが
タイトルの通り、書くことで世間とつながること、生きることができると思わせられる
とても面白い読み物だった
ブログからの書き起こしなのか、日記形式で、14歳の少年でもある著者の日常と
思うところ、自閉症だから起こることなんかがつづられているんだが、
一番は大好きな自然への敬愛についてで、
鳥や昆虫、植生なんかへの感動が正直な言葉で語られていて
本当に好きなんだと思わされるのである

周囲との接触がうまくいかない部分は理解していて、
それはそれとして、自分が思っていることを文章では
こんなにスムースに伝えられるんだなと感心してしまうくらいだったんだが、
自然への愛着というか、愛情の強さが明確な意思として記されていて
非常に興味深いと思えたのでありました

よくある、何かに夢中になってしまいがちという部分が、
本人の中でどう処理というか、認識されているのか
文章で読んでいると、何かを見つけて、気づいたら数時間経っていたみたいな記述があって
本当にじっとそれを見ているということに全力になってんだなと気づかされたりして
社会性としてはどうかと思うが、その情熱というか、
鋭い視点が新たな発見や、興味への掘削を後押ししているんだと
改めて思い知るようで感心したのであった

本人語りなので、いまいちすごさがよくわかってないんだが、
かなり著名な学者なんかともやりとりをしているようで、
そういう専門分野においては、もはや天才といっても過言ではない様子で、
こういうところは、わかりやすくいうと、さかなクンみたいなもんなんだろうかと思うんだが
実際はどうなのか、ちょっとこの本だけではわからないのが残念である
もっと、本格的に好きな対象物について
がりがりと語りつくしてほしいというか、そういうものを読みたかったとも思うんだが、
多分、そういうのに意味を見出せないというか、
自分が知っていることをひけらかすとか、そういう人ではないんだろうなと思うのである
でも、こういう人が、これこれのここが良いという話を書いてくれると
その先鋭さというか、先端みたいなのに触れられて楽しいと思うんだが
また、そういう本でも出してくれんだろうかと
大学生となって、さらに研究者として大成しそうな少年の生きざまを見る本でありました

【ドラマ】オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ シーズン2

2022-10-25 21:20:18 | ドラマ映画テレビ感想
なんで?と思ってしまったんだが、
まさかのシーズン2が放映された、
それもほとんど新録だったんじゃないか
そうじゃなくて、前撮った残りのやつもうちょっと使ったら、
もっとわかりやすくなったんじゃないんだろうか
色々、つっこみどころしかない感じで
大変なドラマ、そもそもドラマだったか?という雰囲気で
3回やり切ったというか、放映した
NHKが投げやりになったのか、真面目だったのか、
正気を疑う内容ながら見たのでありましたとさ

結局、シーズン1という話だったけど、
まぁ積み切れなかったが、とりあえず形はできていたと思えた前回から、
その続きっぽくちゃんと物語を進めるかと思ったら、
なんかよりとっ散らかって、さらに出演者増えてるし
またも豪華だしと、松田兄弟をドラマで共演させるとかとんでもねぇなと
そこに一番衝撃を受けたのでありました、
ネットで騒がれていたけども、そこまでするなら、
瑛太にも、弟つけてだして、豪華兄弟共演させたらよかったのにとか
もう珍しいものを見たいだけになってる感じながらすごかったと思うのである

シーズン1で撮っていたであろうシーンが使われていたかもわからんのだが、
前回見ていたのと筋書きが違ったと驚いた部分が
最終的に演劇方式で終わるという無茶苦茶感は、存外嫌いじゃなかったというか
シーズン2は、あの演劇だけでよかったなと思ったりしたのでありました
このドラマで知ったという、アンテナの低さがひどい私なんだが、
この演劇シーンで仲野太賀という役者を認識して、
とんでもなく演劇演技するなと、ひどい筋立てなのに絵を作るというか、
なんか、そういう笑いと動きを催すものを見せてくれたという点で
MVPだったと思うのでありました
あの一人芝居すげぇわ、しょーもないコントの筋書きをあれだけ熱演したら
笑いに代わるんだと教えてくれたようであった
あくまで、演劇風でやってるよという体で全力という、力の入れどころがどこか
さっぱりわからん演技がクセになりそうですごいよかったわ

あとは、黒木華の京都弁喋る刑事役が、コントキャラとしては完璧に仕上がっていて
あんな口角のあげ方できちゃうんだと、漫画みたいなそれを完璧にこなして、
すごい可愛い感じに仕上げていたのにも脱帽というか見入ってしまったのでありました
あれがまた、くっきーとうまくかみ合う感じだったのがよかった
演技上手い人のそれを見たというか、楽しんでそうでよかったなと思うのである

楽しんでるといやぁ、松たか子も相当楽しそうにやってたから
このドラマ、そういう主戦級の人がちょい役を全力でしょーもなくやることが許されるという
あんまりなドラマだから、出る方に人気あったのかもしれないと
演じる側の気持ちになったりしていたのであったとさ

カムカムのご褒美だったのかわからんが
オダギリジョー主幹の乱痴気騒ぎを楽しめた
本当に、それだけの映像作品だったと思うのである

【読書】東京四次元紀行

2022-10-24 21:22:27 | 読書感想文とか読み物レビウー
東京四次元紀行  作:小田嶋隆

東京23区を舞台にした短編小説集
作者自身が語っている通り、エッセーやコラムが主戦場の人が書いた素人小説という感じだそうで、
軽やかで面白いシーンがでてくる、なかなかいい感じの読み物だと思ったのであるが
確かに、言われてみると小説と呼ぶにはちょっと軽いというか、
少しドラマチックな日記みたいな感じで楽しかったと思うのである

登場人物が、いくつかクロスオーバーしていたり、
過去と現在をいったりきたりしたりと、せわしない感じなんだが、
この収束というか、集まりが、東京に生きている人たちそのもので、
そういう雑多が集まって東京だといわれると
なんか腑に落ちるような感じでよかった
土地勘がないので、舞台となっている土地で、そこならではなのかもしれない物語が、
もうひとつピンとこなかったわけだけども、
人との付き合い方とか、やりとりなんかは、
そこらに落ちていそうなそればかりで、身近な感じがしてとてもよかった

主題として何か大きなテーマがあるわけでもないので、
ちょっと怪談とまではいわないまでも、考えてみると怖い話だとか、
少々センチメントな話なんかもあって、
あれこれと楽しめるごたまぜ感が面白くて、
なんだかんだ、男女の話なんかが、結局のところ面白いというか、
そういう人いるよねという感じ、そしてそういう人の顛末というのが
まさに噂話で聞いたやつみたいな展開で
安心して読めるというか、期待通りの内容だったりして
飽きがなかった
ADHDという言葉がなかったころにそういう人との付き合いがあった話が印象的で、
そこにあった友情のような何かが、とてもいいものに思えて、一等好きな一遍だった
オチが悲しいのが残念なんだがなぁ

ショートショートとも違うんだが、
軽く読めるエピソード集といったらいいのか、
ともかく、気持ちよく読めた一冊だった

あとがきにもあったが、とかく書くのが楽しいという、
伝えるためではなくて、自分が楽しいから書くといった感じから紡がれているから、
小説全体が楽し気にみえて、とてもよかったと思う
それがまた、偉そうな言い分なら、素人くさい感じがしてすごくいいと
思うのでありましたとさ

鎌倉殿の13人  罠と罠

2022-10-23 20:55:20 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」視聴完了しました
和田合戦前半戦という感じで、
なんか誰の思惑でこれが動いたのか、
さっぱりわからんというか、政治って案外そういうものなんだなと
何かが起きるときのきっかけは、なんでもよいというか、
なんかあれば、何かしら起きるという
政治の面白さみたいなのを見たようにも思うのである

とはいえ、朝廷の思惑と、泉という謎の人物はさておき、
それを発端にして、鎌倉内部で粛清が始まるというのは
ある意味面白いというか、これって、チンギスハーンが生まれた時と
まったく同じことじゃないかとも思ったりしてしまう
蟲毒が行き過ぎて朝廷すらも食われてしまう
まんまじゃないかと思ったりするんだが、その元が攻めてくるというのもまた
面白い話だと感じるのである

三浦の郎党が唐突にいっぱい出てきたのに笑ったんだが、
あんなに子供いっぱいいたんだと、その生みの母の方はどこいったんだと
ちょっと考えてしまうんだが、それはもう些末な話なんだろう
巴の子がいるわけではなさそうなので、
来週どういう感じになるか楽しみだが、
巴がこんなにクローズアップされるキャラになるとは思わなかったのが衝撃的なところで、
義村に詰め寄るところとか、いかにもよかったし
来週の久しぶりの武者ぶりもよさそうで
楽しみが増えるのである
まぁ、死ぬんだろうけどな、いや、死ぬのかな、どうなんだ

御家人という存在が、この物語において
実はあんまりちゃんと出てきてないということに
今更気づかされたわけだけども、
有力御家人が減っていくほど、登場人物の密度が減って
そんなにすごい集団なのか、むしろわからなくなってしまうもんだなと思いつつ
すっかり小四郎派閥になってる鎌倉中枢を見ていると
なんとなく、嫌なものを見たような気分になってしまうのであった

とはいえ、転がりだした話は止まるはずもなく
そして、三浦の思惑通りだったのか、
誰にとっての、罠の罠だったのか、さっぱりわからんまんま
ひょっとすると、誰も思い描いていなかったのに
最終的には小四郎が得した形になったと
そういうことなのかわからんけども
来週を楽しみに待つのである

結構戦風景撮ってる、よい大河だなと今更ながらに思ったのである

【読書】信仰

2022-10-22 20:55:33 | 読書感想文とか読み物レビウー
信仰  作:村田沙耶香

短編集というより、もはやショートショートだった
SFめいた感じもさておきながら、不思議な世界観を当然に語り、
その物語が紡がれているというのが楽しいところで、
表題作は特によい一遍だったと思うのである

信仰という、今のご時世なかなか尖った内容というか、
変な勘繰りにあいそうなそれだけど、全然関係なく(発行日からして当たり前なんだが)
それでいて、カルトというものの端的な部分がすごく濃密というか、
短く簡潔にまとめられていて、偽物を見ているのに本物みたいというか、
このコテコテと作りこまれたものを見せられているのに
なんか自然ぽい、演劇みてるような感じがすごくよい一遍だった
最終的に信仰とはなんぞやとか、そんなお話になるはずもなく、
ある種の酩酊というか、不理解みたいなのがとても楽しく描かれていて
こういう世界だよなと思わされる感じが
すごく好きだと思えた

短編それぞれは連作ではないので、
関連がありそうでない感じなんだが、
どうやら、色々なテーマのもとに書いたものもあったりして
この作者が書く多様性とはこうなのかと、
なるほどと考えさせられるというか、大喜利とも異なるんだが
多様性というものをこの作者らしい視点で描いていたと
はっきり理解できて、とても楽しかったのでありました
均一とカルチャーショックという対峙ともいうべきそれは
とても楽しい、多様性とかうんぬんとかいうきれいごともあるが、
この荒唐無稽感の中で、切り取られた風景が、
今現在、この世界のそこらに転がってそうな話だというグロテスクさというか、
いやー、他人とは理解しあえないなぁというのが
ものすごくはっきり描かれていて、
それでいておとぎ話のように、ほのぼのした雰囲気に無理やりしているところが
とてもよかったと思うのである
不条理と違うんだが、こういう、わざとらしさを隠さない感じ、すごく好きだわ

代表作のコンビニ人間をいい加減読まないといけないなと
気持ちを新たにさせられた感じである
生命式はあんまりだったんだが、今回のこれは、かなり好きな小説だった

【読書】人は2000連休を与えられるとどうなるのか

2022-10-19 20:55:26 | 読書感想文とか読み物レビウー
人は2000連休を与えられるとどうなるのか  著:上田啓太

タイトル詐欺とまではいわないけども、
思ったのとだいぶ違う本だった
個人的には、聖書男みたいなドキュメンタリを期待したんだが、
いや、ドキュメンタリではあるんだけども、どちらかというとというか
もう、ただの哲学書といった感じで、それはそれで興味深かったけども
なんか連休のおかげなのかわからんなという感じになったのである

読んでいる最中に、素人の哲学論議っぽいなぁと
なんか鼻白んでしまっていたんだが、
実際のところ、暇に任せて相当に本を読みこんでいたと見えて
終盤にちらっと出てきた蔵書を見る限り、割と哲学書をあれこれ読んでんじゃないか、
その割に、この素人臭さを保っているというのは、むしろすごいと
ヴィトゲンシュタインっぽいパラグラフとか、
観念世界の日本語なのに、何書いてあるかわからないそれに陥らず
ただただ、客観的に自分を観察し続けたというところに徹底して、
限りなく平易な、想像というより、想定しやすい言葉で書いてあるのが驚きだった
これは、なかなかできるもんじゃないなと驚いたのであります

とはいえ、連休をとって何かあったかというと、
自分を見つめるのにずいぶん時間を使っていたんだなと
ただそれだけが分かったという感じで、
目的がない他人の人生というのは、暇つぶしを見せられているだけなので
なんとも、読み応えというものがないな、
それよりも、同居人であった、杉松の方が気になって仕方ないというか、
杉松はどういう気持ちでこの男を住まわせていたんだろうと
そっちの方が気になって仕方なかったんだが、
そういう俗世的なことに気を取られていると
この本の示す哲学的何かに近寄ることはできないんだろうかと思ったりしたのである

とはいえ、自分がどうしているか、客観的に見てもらうために
メールを送り続けるという行為もどうかと思うが、
自分が、何で自慰を行っていたかとか、それはもう、プレイなんじゃないかという感じのこともあって、
どういう関係だったんだろうかと、そっちがともかく気になって仕方なかったのである
あと、猫との戯れがよかった

そんなわけで、連休を取っていたからなんだといえば、特に何もしていないままだったようだが、
どうも地頭のよい人のようだから、特に食うに困らないというところもあるんだろうなと
なんか、高等遊民の劣化版といったらいいか、どうにも、
腹立つものを見せられたというか、読まされただけではないかと思ったりもしたのである

【ドラマ】アストリッドとラファエル

2022-10-18 20:55:16 | ドラマ映画テレビ感想
NHK海外ドラマ枠でありました
無茶苦茶面白かった
いや、面白いというのもあるんだが、ヒロインのアストリッドがすげぇ可愛かった
ただただ、おっさんの心をわしづかみされた感じだけども、
それだけで十分だと思うくらい、実によいドラマだった
続きを年明けにやってくれるそうなので
今からそれが待ち遠しくて仕方ないのである

いわゆるミステリで、大まかなジャンルは刑事モノになるのだろうけど、
そういった、刑事事件の書類整理係でありながら、
重度のADHDであるアストリッドが、その明晰な論理力で、
事件を解決するというお話なわけなんだが、
このADHDっぷりが凄いよいというか、
実際仕事とかでかかわったことあるけど、ああ、こんな感じだわというところと
ドラマならではのコミカルさというのが、
こういった人を馬鹿にするわけではなくて、違いとして描いて、
その戸惑いが面白いというところにつながるという丁寧な作りが
すごくよかったと思うのである

刑事ドラマとして、事件の解決も面白いんだが
そこに加えて、アストリッドの成長が描かれているのがドラマとして秀逸で
その成長を促す、無二の親友となるラファエルで、
このラファエルのいい意味で豪放磊落な感じが、
神経質なアストリッドと、まったくかみ合ってなかったのに
ラファエルもまた成長して、アストリッドとの関係が構築されていく
その中で、自身も変化して息子との関係がよりよくなるとか
いやー、いいことだらけの話だから、
見ていてとても気持ちがよかったというのが正直なところである

ちゃんと衝突もあるし、仲たがいでもないけど不穏な事態もでてくるんだが
その解決によって、より絆が深まっていくといった感じがすごくよくて
いわゆる感謝や、祝福を意味するKISSを実際に見舞うというあたりでの
アストリッドの戸惑いっぷりとかが、最高に可愛くてよかったのである
この二人の組み合わせだから、微笑ましく見られるというのが
また、とてもいいバディものである
アストリッドが、鑑識見習いみたいな人に言い寄られるくだりが凄い面白かったんだが、
それを徹底的に論破というか粉砕しておいて、
丁寧に説明しておきました、フフン?みたいな感じの顔して
満足げにラファエルに報告するあたりは、最高に笑った

結局のところ、アストリッドのリアクションを愛でているだけでいい
そういうドラマだったと言い切ってしまいそうなところなのだけども、
すごく整然として、産みの母との邂逅が、不穏なのかと思ったら
とても「らしい」感じで終わって、拍子抜けのような、これが正解という満足のような
ともかくよかったと思うのである
ああいうことに感情を揺らすという概念がない、そういった風が新鮮で好きすぎる
すごく神経質で、そこにこだわってしまうところ、
それによって発生してしまう彼女ならではの戸惑いとかの演技が抜群で、
その狼狽というのがとても愛らしいというか、
もう、やっぱり、ただただ、アストリッドが可愛いというドラマだったのである
死んだはずの友人の兄貴が出てきたときの驚き顔とか、
人間らしい感じが急に出てくるのがとてもよかった
あと、色々ありすぎてフリーズしてしまうところとか好きなんだな
なんか、嗜虐性の性癖な気がしてきた、気を付けよう(なんだかな)

声をあてていた貫地谷さんがとてもうまかったというのも
ドラマをよいものとしてくれた一つだと思うんだが、
あの声じゃないと、もうアストリッド見られないと思うくらい、実によくはまっていたと
あんまり他の洋画で思ったことないけど、強く響いたのでありました

声優といえば、スポットの役だったけど、
お亡くなりになられた清川元夢さんの声が聞けたのもよかった
ともあれ、とてもはまってしまったので、速く続きをと待つばかりなのでありました

【読書】ハヤブサ消防団

2022-10-17 21:26:08 | 読書感想文とか読み物レビウー
ハヤブサ消防団  作:池井戸潤

田舎を舞台にした推理小説でした
著作をたくさん読んでるわけではないので、今回のように金融関係の話がまったく絡まない作品は
驚いてしまったんだが、他にもあるんだろうか
割とスタンダードなミステリで、作家が田舎に引っ越したことで、
ひょんなことから事件に巻き込まれるという
ある意味古典的な出だしながらも、現代劇として面白くて、
妙な風習とも異なる、エッセンスは横溝的世界観のような気がするんだが、
全然そんな風じゃなくて、ごくありふれた、現代日本の田舎の事件といった感じが
なかなか面白かったのでありました

物語の中核を担うというか、犯人と思しきそれらについてが、
なかなか面白いというか、そういうことありそうだよなと
現代の田舎の闇でもないが、ありそうな感じが面白いと思ったわけだが、
タイトルの消防団についての詳細さの方がかなり面白くて、
自分の田舎にはない組織だけに、なるほどなと考えさせられるというか
知識として、楽しめたのでありました
大なり小なり、消防団という組織はこういう感じなんだろうか
他にそういう組織のある田舎に住んでいる人の感想が聞きたいわ

先生が、岐阜のどのあたりの出身なのかわからないんだが、
出てくる言語がおそらくは岐阜のどこかの訛りで、その表記がいかにも中部的というべきか、
東海地方の民にはなじみの深い感じなので、イントネーションまでおそらく完璧にトレースして読めたと
楽しんでしまったわけだが、文字起こしにすると、案外関西弁ぽいつづりというか、
言葉の形があるんだなと、まったくイントネーション違うのにとしょーもないことに驚いたりして読んだのでありました
ともあれ、物語はU県S郡という謎の土地なので、違うかもしらん
だけど、「だもんで」とか、なかなか他のところで使わないだろうて

内容は結構スリリングだし、なにより、ちょっとさすがに火事多すぎだろうと
おそらく村の規模に比して、全国ニュースになってもおかしくなさそうな頻度でのことなんだが
それはそれとして、犯人とそのバックボーン、そして、村の過去なんかがうまく合わさって
最終的に怪しい人物が二人に絞られたと思いきやみたいな、どんでん返しも楽しめたので
非常によかったのでありました
というか、終盤は、ひっくり返りすぎて、結局どういう話だったっけとか
わからんようになっていたんだが、まぁ、面白かったからいいか
とりあえず解決したようだしと読み終えて思うのであった(ひどい読み方だ)

面白い内容だったけども、これだけ人間関係が親密だと
やっぱり田舎は暮らしづらいよなぁと、改めて思い知るのでありました
そういうところへの移住とか、ちょっと考えることもあるが
自治体を形成する一員になるという自覚が希薄だと
えらい面食らうことになるなと思うのであったとさ

そういう人間はやはり、都会に住むしかないのであるな
一人で生きるというぜいたく税が、都会の喧騒という税金なのだとか
いらぬことを考えたのであった

鎌倉殿の13人  穏やかな一日

2022-10-16 21:12:55 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
視聴完了しました
よもやよもやというか、ああそういう落としどころできたかと
3代目鎌倉殿の件を見守ったのでありました
センシティブなのは、昨今の情勢のせいだけども、
三谷さんは、こういう恋情の描き方を結構使うよなぁと
感心ではないんだが、受け入れて観たのであります

とりあえず、いきなり長澤まさみがでてきて、
どう見ても「きりちゃん」じゃないかといういで立ちだったのは、
今後の何か伏線というか、なんなのか
わからんけども、困惑しながら一日で何年か分の話を
さらっとやってしまって、一気に和田合戦へともっていく段取りが整ったわけで、
小四郎がいきなり嫌な奴になったなぁと
暖かく見守る感じでありました

和田の方が御家人に人気があるという話も納得できるというか、
とてもわかりやすくそうなるように物語が動いていて、
基本的に北条の人ばっかりでてきて、みんな感じ悪い
いや、政子だけそうじゃないんだけども
だいぶ悪いやつが多いという描き方が見事で、
なんだかんだ、時政と同じなんだなと思わせるところがまたよかった

そしてキーマンであろう、善哉がいきなり物騒な坊主姿になったのが
なかなかいい感じのヒキであったわけだが、
比企のばあさんじゃなくて、占い師の方がもう一遍でてくるようになるようで
そっちも大変楽しみなのでありました

三浦にも毒がというわけではないが、
あの三浦が小四郎に対して怒りを覚えるというシーンは
結構衝撃的で、黒幕説というか、こっから急激に三浦の裏の存在感が増すのであろうと
お披露目であったようで、まぁ楽しくて仕方ない

しれっとでてきた、出来の悪そうな北条の息子も
今後悪い予感しかさせないのがすばらしく
なんというか、主人公というか、正義に近しいものに金剛がなっていくんだろうなと
楽しみな最終盤が見えてきた回でありました
いうても、あと10回くらいあるのかないのか、忙しいことでありますな

【読書】N/A

2022-10-12 20:55:19 | 読書感想文とか読み物レビウー
N/A  作:年森瑛

面白かったからいいんだけども、
タイトルと表紙から想像した内容とまったく違ってた
ネタバレでもないんだが、表紙のキャラクタが理系男性というか、博士的なそれで(白衣に見えたわけだ)
タイトルからして、エクセルのエラー表示だからそういう感じかなと思ってたんだが、
真逆といってもいいほど違う世界の話で驚いてしまった

LGBT系の物語でもあるんだろうけど、
そこよりも、以前といったらいいのか、もうちょっと深いところといったらいいのか
そういう要素を持ちつつも、それ以前、大人になる前の不安定さというのを描いているという、
至極ありふれた題材のようでもあって、とてもよかったと思うのであった
なんだかんだ、こういう青少年の話が好きなんだと
喪った青春を再度体験するような、でも、実際の内容はそういうのと
だいぶかけ離れているんだけども、
些細なというか、日常描写のリアルさともいうべき、
その世代の、その時だからの空気みたいなのが
すごくうまく描かれているように読めて、凄い好きな小説だと思ったのである

白眉というか、そうかと思わされたのは、
まだ自分が定義されていない思春期真っただ中というか、子供と呼ばれる状態において、
LGBTというあてはめが発生したり、そうかどうかもわからないという
あやふやな状態というのは、そういう言葉や、枠組みがなかったときからある話だし、
まさにそれを書いていてよかったのであります
本当かどうかわからんが、「〇〇み」だとか、「死んでほしいんだが?」とか、
セリフの軽さというか、この感じというのがよかったなと
この部分だけ、特に意味もないのに何回も読み返してしまった
こういうの含めて、特有の空気感が、実にうまく醸成されていて、
だからこその本題ともいうべきところが
いやー、よかったと、何がととらえられていないのに楽しみきった感じなのであった

かなり好きな小説だった

【ドラマ】あなたのブツが、ここに

2022-10-11 21:18:47 | ドラマ映画テレビ感想
通称「あなブツ」と愛されていたと後から知ったんだが、
かなり楽しめたよるドラでありました
NHKの夜の15分もようやくはまってきたというか、
いい感じだと追いかけてきたシリーズでありました

出てる俳優さんについては、正直なところキムラ緑子さんとしずちゃんくらいしか知らないと
自分の知識のなさに驚いてしまったんだが、みんなすごい上手くて、
ぐいぐい魅入られてしまったのである
特に主演の仁村紗和さんが抜群に存在感があるというか、
ああいう大阪のお姉ちゃんいそうだよなという、20歳だと嘘ぶっこくあたりの演技とか
最高におもろいやんけと、わしづかみにされたのでありました
今調べたら、子役の子と一緒におちょやん出てたり、
青天を衝けで栄一が懸想した女中の役だったりとか言われて初めて気づくくらいなので
自分の眼が信じられないところであった、どうでもよい

名演というところでは、子役の子もべらぼうにうまくて、
この感動は、前の夜ドラのカナカナに通ずるものがあるなと
今後大成してほしいというか、いい感じで女優さんなりなってほしいと思うのでありました
自然な立ち居振る舞いが素晴らしかったと思うのである

そして、何よりも、やっぱりお母ちゃんのキムラさんが一等抜けていて、
それを受けての、あの娘、その孫という感じが完璧に演じられていたのが
本当素晴らしくよかったと思うのである
大阪舞台だから当然のように、芸人さんが演者で出てきて
いわゆる喜劇芝居というか、コントっぽい感じで出てくるけど
それを受け止めて、ドラマっぽく上げているのは、間違いなくキムラさんの腕だなと
舌を巻いたというか、うますぎるわと感激して見ていたのでありました
さりげないセリフとか、アドリブなのか、本当なのか
それすらもわからないような自然さ、流れを邪魔しない絶妙な滑稽さが素晴らしいと
個人的に一番好きな朝ドラ「ごちそうさん」の時の再来かというくらい、
あれとは別のお母ちゃん像(あれは姉だ)が素晴らしくてよかったのでありました

そんな三人の演技を見ているだけでも楽しかったんだが、
物語もコロナ下の日常という感じで、それぞれの人生、人間ドラマが凝縮されてて
いい塩梅で、一週ずつで綺麗に話が進んでいくのもよく
大変よかったと思うのでありました

あとは、時間指定にうるさい顧客のおばはんが何気に好きで
基本文句言う嫌な役なのに、毎回同じテンションで、一方的にしゃべってて
それがなんかクセになる感じがよかった
「今何時や?いつ来るいうた?今午前か?ちゃうな?ちゃうか」みたいな
あの感じ、すげぇ好きだったな
よいドラマだったと満足なのである

【読書】両手にトカレフ

2022-10-10 21:10:37 | 読書感想文とか読み物レビウー
両手にトカレフ  作:ブレイディみかこ

小説なんだけど、この本の中のセリフを借りると「リアル」があるように、
そう思える世界が描かれていた
イギリスにおける下層社会、シングルマザーの子供の物語といえるんだが、
童話的なものではなく、事実そのように悲惨と思える中で生きて、
悪事を働くとか、そういったことではなく、
ただ生きていくのがつらい境遇にあるという姿が、
刺してくるように続く
イギリスだと、読んでいて思うし、そんな情景なんだけども
不思議といえば、欺瞞をはらむようだけど、
当然狙ったように、こういう世界はそばにあるんだろうと
思わされる内容がよかった

もう一人の主人公といっても差し支えない、明治大正を生きたという金子文子さんという方の生きざまと
時代と国を超えてある、貧困というカテゴライズとも異なる、下層という
社会ヒエラルキーの生み出したそれが描かれていて、
どこか寄せられるような、物語にある、主人公の紡ぐラップに「リアル」があるというそれに
近いものを味わう小説でありました
まぁ、こういう高所からの物言いのような書き方も、
なんというか、ダサいというか、違うんだろうなとも思ってしまうんだが
この気持ちというか、感覚は、ひょっとすると、
インテリによる革命思想の芽生えに近いもんがあるのかもと
色々、ごたごた考えてしまった

そういう政治思想的なことを考えさせられてしまうんだが、
物語としては、そこではなく、そういう境遇の人がいて、それが生きて、
そして希望を見たという、ただただその純粋なものを読むのが
ステキよなと思ったりしたのでありました
どうのこうのと、そうではない身分で語るものは違うなと
戒めるではないが、これを語るべき言葉を持たないのだろうと
萎縮するではないが、なんとも、
居心地悪いので、ただただ、感動したという言葉だけで
感想を終えたいと思う
希望がある、よい小説だと思った

【読書】431秒後の殺人 京都辻占探偵六角

2022-10-05 21:04:49 | 読書感想文とか読み物レビウー
431秒後の殺人 京都辻占探偵六角  作:床品美帆

京都を舞台にした殺人事件を探偵が解くという
オーソドックスな推理小説でした
会話がテンポよく進むんだが、
文だけ読んでいると、探偵のセリフがコテコテ感が強くて、
表紙のイケメン風のそれと結びつかなかったんだけども、
そうか、しゅっとした感じの男だったのかと
そっちの方に気を取られてしまった、
なんとなし、京都のおっちゃんというでもないが、
偏屈でさして風采の上がらない感じっぽい、そんなしゃべり方よなと
失礼な印象を抱いてしまったんだが、
そういう人が、ずばっと推理で解決する方が
なんとなしよさげよなとも思ったりしたんだが、
イラストの人と作者の解釈違いなだけかもしれんとか思ったりしたのであった

余談が長くなったわけだけども、なかなか面白いというか
結構凝ったトリックがあれこれ出てきて、
それ成立するんだろうかと思ったりもするんだが、
仕掛けが面白いので読まされたという感じだった
表題作の時間経過について、偶然要素が強そうだけど
案外その方が自然ぽいというのはいいなと感じたりしつつ
個人的には錯視的なトリックというか、思い込みを使った
謎の屏風の話が面白かったんだが、
割と出てくる犯人なり、被害者なりがひどい人物が多いので
動機とか、情緒の部分はトリックより単純で
その対比がよかったと思ったりするのでありました

口先だけで詐欺師めいた男の末路なんかも、
物語の成立がよくて、別にこの探偵じゃなくてもやがてバレていたであろうとしつつも、
それはそれとして、犯人の目的というか、ある種の達成があるという
救いが掛け違いみたいになっているのは物語として好きだなと
楽しんだのでありました
京都っぽいモチーフだけども、それが近代的というか、
そこらの町でも成立しそうなのに
リアルな京都の町というところに面白味があったと
なんとなく、現場ではないが、その界隈を知っているせいかひいき目に見てしまったけど
楽しく読み終えたのでありました