CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】怒涛の関西将棋

2017-08-31 20:52:07 | 読書感想文とか読み物レビウー
怒涛の関西将棋  著:谷川 浩司

谷川名人による関西将棋の歴史紹介本でありました
将棋の本なんだけども、将棋そのものはほとんど出てこない
図面すらも現れないというもので、
しかし、関西将棋界というものについて大変わかりやすく
面白い本でありました

谷川名人の視点からという話なので
関西の将棋界が中心とはいえ、
大山名人、中原名人時代というものをリアルに経験している
そのあたりの話や、その頃の雰囲気みたいなのが
古くは、坂田三吉の話から遡って語られていて
非常に勉強になったのでありました

特に、この坂田三吉という人を含めた
昭和の将棋指し、実力制名人というものの前の世代
そのあたりの歴史が解説されていて
物凄く興味深いのであります
このあたりはもう、本でも語られていた通り
ちょっとした伝説というか、一種の御伽噺のようでもあるので
読み応えというか、あらすじだけでも面白い
ドラマチックすぎる展開というか、そこここ
この生き様みたいなのが、ちょっと
そのように作られすぎているという事実なんかも触れていて
大変興味深いのでありました
売れるということはつまり、そういうことであって、
そして、当人もそのあたりをわきまえていたり
さらには、その虚像とは別に人物があるというお話でありました

この坂田三吉から、系譜でもないが
弟子筋として関西の将棋人たちは存在しているような
そういう連帯感というべきか、
東西に分かれて、独特の何かがあるという雰囲気であるとか
将棋界の政治にはぎりぎり触れないままに、
それでも、何かの違いであったり、
そういったこだわりともいうような派閥とまではいわない
土地による意地みたいなのが解説されていて
大変興味深いのでありました

若手も着々と伸びていて、弟子を育てることや
弟子がどうするかということなんかも
さらっと触れつつ、谷川名人が過ごした時代でも
大きく変わっていった、将棋に関わる人たちの関係なんかも
興味深く語られていて、大変勉強になったのでありました

こういうのを読んでいると
自分はやっぱり、将棋が好きというよりも
将棋に関わっている様々なものが好きなんだなと
思い知らされるのであります

【読書】危険な世界史 運命の女篇

2017-08-30 21:04:48 | 読書感想文とか読み物レビウー
危険な世界史 運命の女篇  著:中野 京子

思ったのとちょっと違った
そういう感じでありまして、
大半が、歴史を題材にした映画の簡単な紹介と
その論評でありました
もっと、歴史ドラマというか、歴史イベントの説明本だと
期待しすぎてしまったのであるが
それはそれとして、世界史に数多い女性の悲劇や歴史が
少しばかり触れられて楽しめたのでありました

現在、NHKでやってるヴィクトリア女王の話も
さっぱり背景がわからないので、これで補完しようと思っていましたが
残念ながら、ほとんど触れられず、なんとなく
本として話を通すために、マリーアントワネットが中心になっているものの
全体的には、歴史本というよりは映画本という様相でありまして
見たことない映画の論評だけを読んでも
うまく想像できないものだなと
ちょっと自分には不得手な本でありました

とはいえ、著者の歴史知識が広いのはステキなところで
映画のシーン説明なんかも、歴史知識を下地として
それをこう描いているという説明なんかがあるので
本編も見ていたら、一層に勉強となったかもしれないと
ちょっと思わされたのでありました

特にこれがと面白いことがあったのではないけども
歴史上で女性がどうであったかという
大上段のテーマではなく、歴史と女性とを描いていたと
そういうことだけに終始しているので
偏向した内容を押し付けられることもなく
楽しんで読める一冊だったのではないかと
思うのでありました

【読書】韋駄天夫人

2017-08-29 20:59:25 | 読書感想文とか読み物レビウー
韋駄天夫人  著:白洲 正子

初めて、随筆というものを読んだ
そう言えたのかというほど、文章を楽しめた一冊でした
つらつら、エッセーと呼ばれるものをいくつも読んできたし
いわゆる小説ではない何かを、たくさん読んできていたけども
これが随筆というやつなのかと、
なんか、そう思わされるような、不思議な魅力
これは、私が好きな時代というだけなのかもしれないけども
楽しく読み終えたのでありました

かの白洲正子が、知人や、その生き様や、思うところやを
ある種テーマを与えられて書いたのだそうだけども
筆のままに書いているというのが流麗といっていいのか、
どうも、するする過ぎているようで
でも、文字というか言葉に無駄がないように思える
なんだか、読むと面白いと思えてならない
そんな不思議と読めたのでありました
同時代人である、小林秀雄はまったく読むことができないのに
なぜ、韋駄天マダムのは読めてしまうのか
不思議だなと感じたのだけども、
これがまた、現代にも繋がるといっていいのか、
連なる、古びれないものなのかもしれないなんて
かっこよく考えたりしたのであります

白洲正子といえばというほどに、骨董と、青山次郎であると
個人的には思うのでありまして、そこについて語られているところも
これまた非常に楽しく、骨董のあり方、
また骨董に携わる人々の描写が、いずれも面白くて
美とは何か、これについての師匠が山ほどいたという環境が
はたしてよかったのか、悪かったのか
そこは、どうにも、悪かったようなんだけども
鍛えられて、一人の人間として立てたとも
思われるようになれば、面白いものだと感じ入ったりするのでありました

文庫の最後には、夫白洲次郎についても書いていて
こちらも非常に興味深いところであったのだが、
この夫婦のありようも不思議であるなと
歴史書というでもないものから、
昭和当時の風俗というか、空気みたいなのを感じられたうえに
文壇とは別の、文化仲間たちの何かが
文章から伝わるようであり、大変楽しい、このような人たちが居たんだなと
そこにいたいとか、会いたいとかとはかけ離れた
憧れといって差し支えない、触れないほうが幸せなものを
見たように思えて、楽しかったのであります

なんだか、感想文まで丁寧になってしまった
恐るべき文章力である

【映画】関ヶ原

2017-08-28 19:50:17 | ドラマ映画テレビ感想
久しぶりに映画を見てきました
昨年に近所で撮影があるのでエキストラというか
手伝い参加したりして、個人的に大変思いいれがあったので
わくわくして見てきたのでありますが
これがまた、予想以上にといっていいのか、
よく考えたら原作読んでないと気付いたんだけども
ともかく、面白い戦国ドラマでありました

司馬遼太郎原作で、関ヶ原を三成側から描いたと
そういう物語でありました
ここのところというか、これまで随分と戦国ものの物語を見ていたおかげで
非常に楽しいというか、個人的にはひとつの集大成として
この映画を見られたように感じられて、
なんだか感動ひとしおでありました(きわめて個人的な感傷である)

さておき、原作を知らないからどこまで忠実だったか
さっぱりわかりませんでしたけども、
関ヶ原時の各隊の動きというか、その裏側なんかが
かなりのダイジェストなのに、凄くわかりやすくて
なんというか見ているだけでわくわくする
本当、久しぶりに楽しんだ映画でありました
合戦シーンは最後のほうだけなのだけども
そこまでの謀略というほどでもないが、三成と家康とのやりとりや
策謀なんかが、司馬語りのナレーションとともに進んでいって
これもまた、見る小説みたいな感じで
個人的にツボでありました、面白かったな、こういう按配で
ほかにも見てみたい、国盗り物語とか

ちょっと早足なので、前提に関ヶ原のことを知ってないと
難解というでもないけど、人間関係がややこしくも見えるなと
感じたりしたのでありますが、
大河ドラマで鍛えられていると、この数年の分を
一気に復習できるようで楽しく見終えられるのであります

豊臣内における、尾張派閥と近江派閥という
そんな見せ方なのが、個人的には新鮮でありまして
あったのかもしれないし、どうだったのかなと
ちょっと考えさせられたのであります
また、最近は持ち上げられっぱなしの大政所さまが
割と悪いというか、まぁ立場上仕方ないけども
家康側つまり、敵側で描かれているのも
なかなか新鮮に写って面白かったのであります
何よりも、秀吉役の滝藤さんの名古屋弁がよくて、
さほどに登場しないのに、短時間で年食った演技に変えないといけないし
それでいて迫力をと難解なところを見事に演じられていたように見えて
感心しきりでありました

見所は様々にあったようにも思うのですが
やっぱり合戦シーンの作りこみというか、
久しぶりに軍勢というか、軍馬入り乱れる合戦風景を大画面で見られて
感激だったのでありました、あれだけで見る価値があったと
個人的には満足なのである
相当の馬のスピードでぶつかったりしてたし、
槍の扱いも上から叩いていたしと、なかなか面白くて
見逃せないという感触でありました

また、馬上殺陣を遺憾なく主役の岡田さんが演じていて
というか、嬉々としてやってるようにしか見えなくて
流鏑馬めいたシーンとか楽しそうだなぁすげぇなぁと
あっけに採られてしまったのであります

あとは、左近役だった平岳大さんがお父さんそっくりになってしまって
なんというかな、血は争えないものなんだなと
演技の感じは違うのだけども、姿に面影を見つつ
見事な迫力で楽しかったのでありました、素晴らしい

兜や旗を見てるだけでどの武将がどう動いていてと
やっぱりこのあたりが一番面白いところだったのでありますけども
個人的に、わざわざ関ヶ原を歩いてまわった甲斐もあって
見ているシーンが、どこだったのかとかそのあたりが
ありあり浮かぶようでもあり、なんとも楽しくて仕方なかったのでありました
南宮山あたりの撮影風景も見たことあるところだとか
なんか、いつもと違うテンションで見てしまったんだが
ともかく、全体的に楽しめた
非常によい映画だったと思うのであります

おんな城主 直虎  隠し港の龍雲丸

2017-08-27 20:45:28 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」
視聴完了であります
井伊苦難の状況が続いていきますな
いよいよという感じで、龍雲丸まで片付けられてしまい
孤独が深まるようで、なかなかどうして…

序盤で、ちょっとした記憶障害みたいになっているところが
妙にリアルというか、妙なリアルがあったように思えて
なかなかそら恐ろしい感じでありました
夏の終わりだからこそなのか、ちょっとした怪談に
見えなくもないのは恐ろしい

なんとなし、記憶障害の介護っぽいやりとりが、
なんか、違うドラマ見ている感じでありましたけども
その内容も破綻して、さらに追い討ちをかけるように
気賀が落ちるというのがなかなか
本当に可哀想で仕方ないとも思えるところであります
先日読んだ本で、君主の重圧から壊れたという人というか
王を何人か知ったので、なんというか
そういう感じになりそうだよなと哀れを覚えたのでありました

と、まぁ、それはそれとしつつ
酒井が悪いという形で、徳川の非道が正当化でもないが
うまいこと消化されてしまったようで、
この頃、ああなってはいても、案外今川に求心力があったんだなと
改めて思い知るところであります
なんか、あっという間に瓦解しそうな気がしてたんだが
人間そんな簡単に裏切ったりというゲームみたいなことには
ならないもんだよなと、改めて思い知るのであります
なんだかんだ、しがらみみたいなのでそうなっていたのか
存外、本当に統治がうまいこといっていたのか
そのあたりはわからんのでありますし
解るように描いた場合、寝返っている井伊の酷さというか
ある種の裏切りが見えてしまい
なんとも思わされてしまうところであります

この扱いのあと、どうやって徳川に取り入っていくのか
そのあたりが結構楽しみなのでありますけども
今しばらくは、こういった内容の後片付けをしていくようで
今後の武田との争いも含めて楽しみなのでありました
もう終わりがそろそろ見えてくる時期でもありますね

【読書】エリートの転身

2017-08-26 18:50:45 | 読書感想文とか読み物レビウー
エリートの転身  作:高杉 良

サラリーマン生活を描いた短編集でありました
時代がかっているとは言わないのでありますが、
今読むと、なるほど、当時はそうであったのかなと
そう思わされるような、
昨今当世の経済小説というようなジャンルの小説とは
色が違うように感じるほどの内容でありました

私が古いと思って読んだせいかなとも思ったりしたんだが、
なんといったらいいか、経済、社会といったものよりも
組織の、それも古くからいわれる贔屓、そうではない
処世、そうでもないといった内容ながら、
なんというか、古くに聞いたサラリーマン悲哀的な小話で
面白いといえば面白かったけども、
あまり身になる内容ではなかったかもと
感じたのでありました

成功したエリートの話も、失敗したエリートの話も
どちらも、なんといったらいいか、
非常にあっさりと、そして、台詞がさらりとすり抜けて
あっという間に決着するという按配だったので
なかなかどうして考えさせられるところでありますが、
いずれも、会社に反旗をと思い、そして
会社の上層部に不満をという構図は
やはり、今でもあるそれなんだけども、
なぜだろうか、時代を感じるというのが
杉良の不思議であったと思うのでありました

しかし、人間の恐ろしさというか、
組織の上層に入る人間には、何かそういうところが
やはりあってしかるべきなのかとも思ったり
社会人が過ぎてきた自身において、この内容を
笑えるでもなし、感動するでもなし
なんとも考えさせられるというか、小説は
時期、自身の状況によって感想が変わるものなんだろうと
思わざるをえない、そんなことを思ったのでありました

小説の感想といえるのかこの文章わ

【読書】盤上の人生 盤外の勝負

2017-08-25 20:51:14 | 読書感想文とか読み物レビウー
盤上の人生 盤外の勝負  著:河口 俊彦

様々な棋士を論評した本であります
その棋士にまつわる一局も紹介していて
将棋本としても凄い面白いのですが、
私のように最近将棋に興味をもった人間においては、
大山時代から少し下がって、中原、米長時代から、
谷川の登場、そして羽生世代の台頭とこのあたりのことを
人物評とともにダイナミックに書いていて
将棋の歴史というか変遷を見るうえでも
非常によい本でありました、面白くて止まらない

大きくは、中原誠という棋界の英雄たる人物評に割かれて、
実際、この中原時代というのが長く、そして凄まじかったと
そういうことから始まっていくのでありました
大山康晴という、とんでもない化け物も居たそうなんだが
そちらは、前作で書かれてしまったそうで
今回さほどに出てこないのが残念ながら、
この中原という名人の所作、なりたち、将棋それぞれが
印象的で強いという評価をもって語られるのでありました

時代感という贔屓目があるのかもと
思ってしまいがちではあるものの、
話を読むにつけ、現在の将棋とはちょっと違うといったらいいか、
研究がどうしたというよりも、ちょっとした喧嘩という風情、
勝負ごと、と、今でもそうなんだが、
より泥臭いというか、闘争の様相が強そうな側面、
いわゆる盤外戦術めいたそれこれだとかが
ちょろちょろと読めて興味深いのでありました
もっとも、中原名人はそんなことはしないというか、
もっとほかに酷い人がいっぱい居たようで、
そこから考えると紳士であり、やはり、名人であったという感じでありました

この中原と並ぶのが、米長永世棋聖でありました
個人的に、米長会長というイメージがあって、
破天荒だったけども非常に魅力的な人だった、
そして、老いて、カムバックで名人になったと
そういう運命的な人生を歩んだ人だと思っていたのであります

この米長永世棋聖と、昨今大人気のひふみんにもそれぞれ文章が割かれて
二人が名人を取れたのは、ある種、将棋の神様の思し召しではないかと
そんな風になっているのが印象深いところであります
強いのは強かった、間違いなくそうだったんだろうけども、
名人とはまた別のものであったような、そういう雰囲気でありまして
おそらく、そうだったのでありましょう
その時代を生きていないとわからない印象というか
風情というのがあるんだろうなと思わされるのである

そして、この二人については、
なかなか暗いでもないが、強く反発を得るような部分もあった様子で、
米長会長における棋界への政治活動の良し悪しやら、
加藤先生の過去の抹消といった事件など
なんか、あれこれありそうなところが、少しだけ触れられていて
興味深いところであります
これもまた、今現在では、割と知られた話なのかもと思いますが、
やがて、これを本当に知る人たちは消えていくんだろうなと
不思議な思いで読む内容なのであります

あとは、羽生先生が、協会のために骨を折ったのに
手ひどいことになったという話が衝撃で、
それ以後、羽生先生が政治的な立場に関わらないようになったというのが
現在の状況を思うに、なかなか考えさせられるところであります
また、当時から、会長には康光さんがという話が出ていたというのも
慧眼というか、その通りになっているんだなと
今を思うほどに、なかなか感慨深いと思えるのでありました

様々な棋士の人生、将棋の歴史に触れられる一冊として
貴重な読書だったと、満足してメモっておくのであります

【読書】王国

2017-08-24 21:03:41 | 読書感想文とか読み物レビウー
王国  作:中村 文則

以前に読んだ、掏摸の姉妹本と呼べばいいのか、
施設で育った女が奇妙な陰の世界で生きていくと
そんなお話でありました
前作と同じように、薄暗いというか、一生懸命に精一杯を使って
それでも、踊らされているという状況に変わりないという
虚しさと、それを笑うものを描いた物語で
なんというかな、読み終えて面白かったと思いつつも
ひどく疲れたと感じる作品でありました

娼婦のようなことをしつつ、ターゲットの弱みを作る
そういう仕事をしている女が主人公で、
実際こんなことあるんだろうなと思いつつも、
こういったものに狙われる立場の人たちというのは、
また、そういうものになれているから
こんな簡単にいかないんだろうかなとも思わされたりする
もっとも、この美人局めいた仕事が成功するのは
割と、そこまで頭が廻っていない様子の男ばかりなので
需要というか、本当にこういう仕事は
成り立つのかもと、妙なリアルを覚えるわけであります

そんなことを続けていて、いよいよ危ない橋を渡ることになってみたら、
その橋というか、そもそもこうなることすらも、
その男に仕掛けられていたかのような、不気味な状況になっていき、
その中で自分がどうするのが最善か、少ない手を精一杯に使っていき
ぎりぎりでの生存を勝ち取っていくかのような
危ないやりとりがいくつも続き、
しかして、それすらももしくわと
まぁそんなお話であったわけで、特に意味があるとも思えない
雰囲気の台詞でありそうな「生きているということを楽しむ」という意味を
まざまざ、物語として説得させられたように思えたのでありました
面白いし、妙な興奮を覚えるんだが
なんといったらいいか、疲れるというか、疲弊する感じである

非常に面白いんだけども、清清しさや
心地よさみたいなのは遠い存在の小説でありまして、
うなるように楽しめたのだが、少し疲れたと感じるのである
世の中こんなんだったらやだなぁ

【読書】踊り子と将棋指し

2017-08-23 21:34:36 | 読書感想文とか読み物レビウー
踊り子と将棋指し  作:坂上 琴

不思議というでもないけども、
なんとも形容しがたい感情を抱かせた小説でありました
アルコール依存症のため、記憶にすら障害が出ている男が
公園で死にかけていたところ、
ストリッパーのお姉さんに拾われて、
なぜだか一緒に暮らすというか、過ごしていくと
まぁそういうお話だったのでありますけども
題名の通り、男は将棋指しで、その威厳でもないが
何かを取り戻していくという感じで
物語が終わるといったものだが、
何を描いたというと、なかなか難しい、
将棋指しということよりも、
ストリッパーのお姉さんの生き様というか、
生きる姿と、アルコール依存症のうすら寒い恐怖みたいなのが
とつとつ、描かれていたのでありました

すらすらと読み終えられて、よどみなく面白かったといえるんだが
なんといったらいいか、どういう感想を持ったかと問われると
なかなか言葉にしづらい内容でありました

アルコール依存症を施設ではなく、環境というべきか、
人とのつながり、特にこのストリッパーとの絆から脱していくというのが
話の骨子だったと思われるのでありますが、
アルコール依存がどうしたというよりも
人間が社会と、つながりを形成していく、その気持ちに正直に生きていくといったらいいか、
社会というものを意識して、アルコールから離れていくというのが
なかなかステキなところだったんだろうと思うわけなんだが、
説教臭いわけでもなく、とても煌びやかなドラマがあるわけでもない
割と淡々として、不思議な読み心地ながら
面白かったといえる小説だったと思うのでありました

感想が書きづらいけども、よい小説だったと感じたのであります

【読書】台湾人生

2017-08-22 21:25:30 | 読書感想文とか読み物レビウー
台湾人生  著:酒井 充子

小説というよりは、ルポ、ドキュメンタリーといった感じの本でした
日本統治下の台湾で人生を過ごした人たちの声、
それを集めたといったらいいのか、
想いを募った内容であります
なぜ日本は、私たちを捨てたのかと、重く哀しい声が並び、
当時の思い出を語りつつ、日本への思い、
苦しかったけども、よかったように思うこと、
誰よりも日本人としての精神を培っていたこと、
国に捨てられるということが
どんなことを招いたのか、どう人生を歩んだかと
そういったことが、当人たちの声で綴られているのでありました

やや一方的にすぎるのではないかと
ちょっと想ってしまいましたが、
ここで集められている声自体は、
日本への感謝と、彼らを忘れないでほしいという言葉であり、
たくさんの人の人生を狂わせたといってもよい、
戦争がなのか、国家がなのか、
そのあたりは、判然としないのだけども
確かに、そこに生きて、翻弄されたかのように、
様々な困難に当たった人たちがいて、
その人たちは、そう想っていたと
この重たさが、かなり身につまされるようでありました

この本の成立も2010年ということで
おそらくは、ここに描かれていた日本語世代と呼ばれる人たちは
いよいよ、鬼籍に入られているのではないかと思えば
哀しいことこのうえないのであります
日本が台湾をどうするのか、
このことを突きつけるでもないが、
人とのつながりとして、台湾人が日本人とともにありたいと
そう思っていた、そういう人たちが居たということを
記していたと思うのであります

台湾人がそう思うように
日本が50年近い統治の間に、仕向けていた
その結果でもあると思えるのであるが、
なんといったらいいのだろうか
読み終えて、ただただ物悲しいのでありました
過ぎたことだから、笑って語れることなんだろうかとも思ったり
今を生きている身分では、
感じ取ることができないものが、この言葉に
詰まっているように思えてならないのでありました

NHKスペシャル 731部隊の真実~エリート医学者と人体実験~

2017-08-21 20:50:19 | ドラマ映画テレビ感想
この夏のNHK戦争特集シリーズは、
どれもこれも重たい内容でどっぷりでありました
実家帰って、年老いた両親と見るものではない
せっかく帰省したのに、鬱々とした気分になってしまうじゃないか
そう思うような、凄まじさがありました
とりわけ、731部隊の話と、インパールの話は
重たすぎて倒れこみそうなほどでありました
あまり、つらつら書き連ねるほどのこともなかったのですが
この731部隊の話については、
ちょっとだけ、思ったことをメモしておこうと思うのであります

まずは、ロシアの資料から生音声が出たところに衝撃を覚えた
このあたりは検証がどうなのか、よくわからないので
鵜呑みにしていいのかわかりませんが、
証言があるというのは強い恐怖でありました
とはいえ、実際やってただろうなとうすうすはみんな思っていただろうことなので
いまさらという感じではありましたが、
その内容が、生々しく語られているのが衝撃でありました

随分前に、黒い太陽という映画を見まして
731部隊というのが、どれほど悪辣だったかと
それを目の当たりにしたわけでありますけども、
あの映画内で、中国人の捕虜の手を凍傷にして骨だけにするという
意味のわからないことをしていたんだが、
これは流石に、エキセントリックに描きすぎじゃないか
などと思ってたら、証言が出てきて
実際やっていたとわ…

こうなってくると、この番組の盲点でもないが、
いや、実際、こういう酷いことをしていたと
そこを伝える番組だろうから、叶わなくても仕方なかったんだが
その実験の意味はなんだったのか、そっちが凄い興味深いのでありました
それを伝えてしまうと、この非人道的行為が
ある種の正当性というか、許されないことに何かの価値みたいなのが
見出されてしまうだろうから、決して報道されないんだろうが
気になって仕方ないのであります
これはこれで、別にどっかでやってくれないかな

番組趣旨としては、あのような行為が
軍の命令であったり、医学のエキスパートであったりと
そういう高級なにがしによってなされていたと
そのあたりで描写を終えていまして、
なんというかな、そりゃそうだろうと思いつつも
ああいったことは、現代にもやはり起きかねないのだろうなと
ありていの感想を抱くに至ったわけであります
いつだって、高級なにがしと、そうでない人たちの間に
暗くて深い川が流れているのであろう

なんて、つまらないことも考えてしまったんだが
ともかく、戦争という人間の行いについて
考えさせられる番組でありました
インパールの状況も、既視感があったけど
こっちのほうが重い、そして考えなくてはならないことだと思うのである

おんな城主 直虎  嫌われ政次の一生

2017-08-20 20:45:10 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」
視聴完了しました
くそぅ、いいドラマだった…
期待通りというか、約束どおりに泣かされた次第であります
あんなの卑怯じゃないか、なんたることかと
シナリオ消化の見事さに脱帽でありました

正直なところ、井伊のそれこれなんてまったく知らないので
史実というか、だいたい井伊における小野の扱いは、
悪辣極まりない敵という感じだったそうなんだが
今回のこれで、大きく逆をいきつつ
史実の通り、敵で終わったという見せ方が
なかなかどうして見事でありました
これが、新しい大河といったらいいのか、
今の時勢に即した描き方というやつなんだろうなと
感慨ひとしおなのであります、悪い奴は悪くと
それもひとつあるだろうけども、
今は、そういうのではない、こんな物語が受け入れられるのだなと
なんとも、感動したのでありました

今回については、何がどうしたとか言う必要もなく
ただただ、政次の演技が素晴らしかったのと
本当、最後の10分くらい、磔から仕舞いまでが
台詞と表情と、見事で見事で、
マンガなら、モノローグで、そうではない何かが描かれたりしたのだろうかなと
妄想したくなってしまうような、本当にもう
完全にやられた感じなのであります
やりすぎというか、泣かせにきたという演出に
嫌がるきらいもありそうだが、これはもう、
よかろうというか、これでこそだろうと
日ごろ、特段に泣かせてくるドラマが嫌いな身分としても
ただただ、納得というか、泣いたというお話でありました

まぁ、政次を褒めるほかない
そういう感じでありましたが、
直虎も見事な立ち回りで、いい塩梅だったなぁと
久しぶりにドラマで感激したと
興奮のままメモっておくのでありました
来週の再放送まで見てしまいそうじゃないか、素晴らしい

【読書】わたしの台南: 「ほんとうの台湾」に出会う旅

2017-08-19 21:23:54 | 読書感想文とか読み物レビウー
わたしの台南: 「ほんとうの台湾」に出会う旅  著:一青 妙

以前にも似た題材の本を読みましたが
それよりも、がっつりといっていいのか、
ガイドブックとして、エッセーとして、どっしり腰の据わった一冊でした
台南の魅力を余すことなくといえばいいか、
著者の思いその丈を凝縮したようで、
非常に読み応えがあったと思う内容でした

台南の歴史や、そこで出会う様々なことを紹介しつつ、
なぜ台南に惹かれるのかという話と、
小吃の街ならではの、グルメガイドがてんこ盛りになっていまして
安平と台南中心街をメインにして、
事細かな説明と解説があって、台南の旅行前に読んでおくと
素晴らしいのではないかと思うほどでありました
微に入り細に入りというか、おおよそ歩いて廻れる距離内の
名物紹介が素晴らしいと感じたのであります
次行くときは、ここに紹介された店に行こうと思わされる
そういった魅力にあふれていたと
読み終わって感じたのでありました

読み物として好きだなと思ったところが、
一方的礼賛ではなく、嫌いなものははっきりと嫌いと書いている部分だと
勝手に感じたのでありますが、食べ物の好き嫌いがあるのか
名物である、サバヒー粥がどうしても馴染めないあたり
それでも、いく先々で出てくる、台南おもてなしにつき物のそれを
なんとかして食べて、味の解説をしつつも、やっぱり馴染めないと
がっかりで〆るなんてのが、斬新に思えて面白かったのであります
そのせいか、好きだといっている食べ物が
なんだかとてもおいしそうに見えてくるので、なかなかどうして
単なる好みの問題とも思えるけど、
説得力のようなものを感じたのでありました

人との出会いも楽しく書かれていて、
著者自身のルーツが台湾にあることから、
話題が祖先のことになったりと、このあたりも
なかなか興味深い内容でありました、鄭成功一家と関わりが
あったのかなかったのか、夢のような話を追いつつ
現代を生きているというか、その地続きで今があって
のほほんとしている台南という雰囲気が
物凄く伝わってきてステキなのでありました

案外簡単にバイクを借りて一周できてしまうというのが
割と衝撃的だったのでありますが、
ゆるく楽しめる街として、昨今活気付いているというお話も含めて
台南の魅力を文章で浴びることができる一冊でありました
ゆかりある日本人の偉人紹介も面白かったし
本当に、旅前に情報を仕入れる一冊として
素晴らしいのでないかと感じるのである

【読書】青森ドロップキッカーズ

2017-08-18 21:58:01 | 読書感想文とか読み物レビウー
青森ドロップキッカーズ  作:森沢 明夫

青春小説でありました
カーリングを主題にした、ハートフルといっていいのか、
スポ根とは違う、でも清清しい生活というか
世界を描いた作品でありました
読後感もよかったし、なかなかステキであります
ちょっと優等生すぎるというか、毒や何かがなさすぎて
薄味のようにも思うのでありますが
これくらいがまた、ぐっとくるな

二組のカーラー(カーリングする人)を主軸にして、
それぞれの立場での葛藤と、生きている姿を描きつつ、
カーリングを通して、そこと向き合っていくというか
片方はカーリングで悩んでいて、
片方は実生活で悩んでいてと
なかなかどうして、考えさせられるところなんだけども
カーリングに情熱をぶつけることで
なんか人生が前向きになっていくというか
いやー、こういう気持ちになれるものを
人間見つけておくべきですなー
などと、思ってしまったりしたのである
自分の心の持ちようによって、感想が随分変わりそうではあるなと
思ったり感じたりしたのでありました
今の私には、大変ありがたいというか、心地よい小説でありました

カーリングをなんとなくやっていて、
そこでトッププロを目指す人とチームを組んでと
そういう話もあったわけで、そっちはちょっと駆け足すぎてというか
チーム醸成のよろしさが伝わる前に、物語が過ぎてしまうのが
残念ではあったものの、そういう経験というか、
生きているうちにそんな体験があるというのが
羨ましいというではないが、いいことなんだろうなと
憧れめいたことを感じたのでありました
まぁ、そういう風に本当に思ってんなら
そうせよと、小言が聞こえてきそうなんだが
自分自身が悦にはいるんだからいいんじゃないか

と、何を言っているかわからない感想になってしまったが
ともあれ、楽しく読めて、いい気分になったので
満足してメモっておくのであります
表紙の笑顔がまた、物語とあいまって、一等であります
こういう優しさに弱いなぁなどと、思うのであります

【読書】ハング

2017-08-17 19:59:28 | 読書感想文とか読み物レビウー
ハング  作:誉田 哲也

かなり殺伐とした刑事もの小説でありました
仲が良かった捜査一課のチームが、不可解な理由で解散させられ、
その裏に、どうにも秘密があるようなと
それを調べつつ、それにより、より大きな事件に巻き込まれと
そんな塩梅でありまして
最終的にも、解決したといえるのか、
どうも、すっきりしたとは言い難いような気分ながら
濃厚に物語を堪能できる小説でありました

本当にこんな陰謀があるのだろうかと
思わされるような内容ながら、
吊るし屋と呼ばれる殺し屋と、その手口の謎を解明しつつ
さらに、それを使役するという組織や人物、
それこれがかかわる政治家なんかが
跋扈していて、なかなかいやな雰囲気が
ステキなのでありました
悪いやつが、まぁなかなか胸糞悪い悪さで素晴らしい

全体的に悲しいといっていいのか、
なんともフラストレーションがたまる展開なんだけども、
そういう強い意志というか、黒い何かを覚えさせて
それが動機といっていいのか、解明への原動力となり
また暴走といえるほどの組織からの逸脱につながっていくというのが
心情的にしっくりきて楽しかったのでありました

ものすごく大きな意志によって引き起こされた内容でも、
そこにかかわるのは人間で、さらにいえば、
その実行犯ともいうべきものたちは、
そんな大きなものでもないといったところが
生々しいというか、人間の悪というか
抽象的になりがちなことをくっきりとさせるようで
自己嫌悪や、自己中心的物言いや、己可愛さやらと
なかなか、考えるというか、感じるものがあったのでありました

結局、何がどうなのか、
自分はこの事件に対してどうなのかと
問い詰めるでもないが、考えさせられていくのが
重く辛いものであったと感じたのでありました

続きがあるんだろうけども、
この話だけで、十二分に面白く堪能できたと
思ったりしたのでありましたとさ