CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ドミノin上海

2020-08-31 20:43:51 | 読書感想文とか読み物レビウー
ドミノin上海  作:恩田陸

わちゃわちゃの小説でした
いくつもの事象がドミノのように、倒れていくというか、
繋がっていくので、あっちこっちに飛び火していくのが
非常に楽しい、それでいて、読み手が迷子にならないのが
凄くよくできてると感心してしまった

一部、ほぼ関係ないと思われる人も出てきていたのが、
少々残念だと感じたのだけども、どうも続き物だったから、
そのサービス的に登場していたとわかって、
ちょっと前作を読んでいないことを後悔したのでありますが
とはいえ、ぐるぐると続く、コメディをただただ、
流されるように楽しめるのがよいところ
大笑いするといった感じではないし、
なんか、得るものとか、高尚なものなど一切存在しないで、
連綿と続く、狂騒というか、喜劇というか、
ごちゃまぜになったものを眺めていく物語でありました

様々な事故が重なって、いいのか悪いのか、
よくわからなくなってしまうのだけども、
窃盗団が暗躍していた、「蝙蝠」という印章が結構いい感じで、
この入れ違いというか、すれ違いトリックみたいなのが
なかなか楽しかったのでありました
三つのカップの中にボールを隠してシャッフルする手品みたいな印象だった
結局、どれがホンモノで、どうなっていたのか
さっぱりわからなかったようにも思うが
楽しいからよしとしよう

悪童パンダの生き様も面白かったんだが、
そのあたりも含めて、少々強引な大団円にもっていくあたりが楽しく
わーっと始まって、どどーっとすぎて、
さっぱり終わった
みたいな感想を抱いてしまう、あまりあれこれと難しく考える必要のない
ステキな物語だったと思うのであります
こってり読んだ、疲れた

麒麟がくる  京よりの使者

2020-08-30 20:47:23 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」視聴完了であります
長かった休止期間を経て、無事放送再開でありました
ちょうど区切りであったようで、
このあたりは休止前に撮っていたのか、
はたまた、その後に撮った分だったのかわかりませんが、
なんとなく、顔をできるだけ合わさない演技というのが多かったというか
妙な顔アップを後ろから見守るの図が多かったように感じたのだけども
それは、穿った見方をしただけなのかしらね

物語としては、劇的だった桶狭間から4年、
相変わらず貧乏暮らしのままの光秀が
唐突に京都に呼ばれてといった具合で、
よくよく考えてみると、一浪人崩れによすがを求めるというか、
なんとも、落ちた将軍感がすぎるなと
感じたりしたのであります
こうでないと物語の都合がつかないから仕方ないけども、
でも、確かに、いくつか因縁をふくめていたし、
うらぶれた将軍に、いい影響を与えそうな思い出はいっぱいあったなと
もしかしたら、一縷というか、しゃーなしでやるという判断は
あるかもなぁとか、あれこれ考えたのであります

さらっと、朝倉の殿様がくわせもの感を出してて、
怖いなぁと思わされつつ、松永、近衛、そして義昭と
次の主役級の人たちの動きも見せつつ
楽しみを散らした回でありました
太夫が思った以上に、あれこれ関係してきててなかなか楽しみなんだが
ひょっとして、松永と一緒に死ぬとかいう展開で、
お駒ちゃんがその跡取りになったりするんじゃなかろうか

ともあれ、次のお使いミッションを携えて
光秀とともに、物語が転がっていくのが楽しみなのであります
もう、休止しませんように

【読書】やる気が上がる8つのスイッチ コロンビア大学のモチベーションの科学

2020-08-27 21:29:41 | 読書感想文とか読み物レビウー
やる気が上がる8つのスイッチ コロンビア大学のモチベーションの科学  
著:ハイディ・グラント・ハルバーソン

久しぶりにこの手の本を読みました
やる気がないなぁと、自身思うところがありまして、
ひょっとしたら、切欠がつかめるかもなんて、
青臭いことを思いつつ読んだのでありましたが
タイトルと若干異なる本だったように思うところ
モチベーションについての本なんだが、
8パターンのキャラクタに対して、どういうアプローチが
やる気を出すことにつなげるか
そういうことをいくつかの指標にわけて説明した本でありました

もっとも衝撃的だったのは、
やる気がないというか、やらないというキャラクタの
いくつかが自分にがっつり当てはまるんじゃないかと
まるで、俺のことだと思えるくらいに描かれていて
こんなにやる気ない上に、社会の害悪ですらあるような立場だったのかと
もう、そこだけで驚愕でありました

日本語訳が若干おかしいと思うんだが、
中二病、臆病者、この二つのキャラクタが
あまりにも自分に当てはまりすぎて、怖くなるほどでありました
そんな類型化した人物でもあったのか私は、
そして、そんなにやる気ないのか
傍目から解説されると、凄い迷惑な人だと、妙な反省すら覚えるほどでありました

承認欲求の扱い方にも近いところがあると思われるが、
何かをするのに、その成果を獲得したいのか、過程で成長したいのか、
この分岐点が極めて大きいのだそうで、
読むほどに、確かにその通りだ、ぜひ、成長するというところに
着眼点を置いて生きてみたいと
思ったりするほどなんだが、まぁ、そんな簡単にできるようなら
人間みんな、立派になっているだろうと思わされるところ

あんまり、何かを得るということに執着がないと思っていたんだが、
様々なカテゴリや、分類によって、あれこれ説明されていくと
自分がいかに、何かをしたいと思っていなくて、
何かをしたくないと思っているかが露骨にわかってきて
まぁ、なんとも、嫌な気分になったのでありました
仕方ないけどもねぇ

反省をそこそこにしつつ、
とりあえず、成長する自分を思い描くことで、
常に何かに接するとき、いつもと違う、成長する姿に向っていこうと
心がけたいと思うようになったのでありました
そうでなくては、生きているのが、どうも
すまないことになっているようで、怖いのであった

ミニストップのハロハロ

2020-08-26 20:52:12 | 食べ物飲み物
ミニストップというコンビニがありまして、
そこで、夏になると販売される名物スイーツがございます
名前をハロハロ、カキ氷とソフトクリームとなんか甘くて冷たいものを混ぜた
パフェみたいな食べ物でありました

と、昔語りっぽく滑り出してみるわけですが
かれこれ20年ほど前だろうか、大学生の頃初めて食べたのでありますが
未だ、このシリーズが連綿と続いているんだそうで
先日、懐かしくなって、それこそ大学の農場側で食べたのであります
いやー美味しい、けどこんな味だったかしらね
もう覚えてないけど、語感と冷たかったことだけ懐かしんだのでありました

と、そんな昔話がてら、ハロハロをちょっと調べたら、
もともとフィリピンの食べ物なんだとか、ハロハロとはあれこれみたいな意味らしいとか、
ミニストップでの発売は1995年だったとか、
あれこれわかって興味深い、
どうでもいいが、私が食べたのは、多分、1998年の白ぶどうだと思う
大学のツレが新発売だと吼えていたのを思い出す

価格がその頃幾らだったのかわからないのだが、
先日食べたところ、スタンダートのラムネ味が300円以下で食べられて、
それでいてこの美味さは、かなりお得なのではないか?と
あんまりスイーツとか食べつけないので驚愕していたんだが、
凄い気に入ってしまって、近所にミニストップがないため、
三重県まで、わざわざ食いに行ったりしてしまっているのであった

ソフトクリームといえば、スガキヤの100円のそれを思い出すわけでありまして、
でも、あれよりもうちょっとクリームが濃厚で美味い、
そして、まず、柔らかいゼリー層があって冷たさが少し和らぎつつ、
味と食感が変わって美味い、
さらに深く進むとカキ氷が出てきて、ぐっと冷えて、でも、
荒い氷の歯ざわりがまた変わって三度美味い

すげぇ、物凄く美味い(主観)

と、そんな分析しながら食ったというわけじゃないが、
こういうものを食べなれないおじさんからすると、
凄いおいしい食べ物だと思えてならないのでありました

もともとアルコールが強いわけでもないので、
お酒より甘いものという気持ちはあったものの、
男子が、甘いものを食べるなんぞと敬遠していたわけでありますが
40すぎて、特に色々と気にならなくなってきたところ
ドはまりしたというお話でありました

ハロハロ美味しいわ、でも、新しい味は試していないのである
特にオチのないお話

【読書】スワン

2020-08-25 21:19:09 | 読書感想文とか読み物レビウー
スワン  作:呉勝浩

無責任なテロ事件が起きる
そこに居合わせた少女の苦悩と事件の真実を描いた小説でありました
コテコテなミステリで、少しずつ事件の真実が解き明かされていくというスタイルが、
次々と読み続けたくなる感じで、非常に面白かった

とはいえ、事件が結構陰惨で、
またその副産物ともいえる、その後の中傷も悲惨きわまりなく、
そのストレスがなかなかきつい小説なんだが、
それに負けないというか、強いヒロインの姿が心強くて、
また、その影にある謎、あえて隠されている真実というのが気になって
途中断念なんてさせられない感じで読み進めるのでありました

目的のわからない座談会で、罪が暴かれていくという
実に古典的なというか、よくあるミステリの手法が、
がっちりとかみ合ったというか、
事件の全貌を知りたいという読み手の気持ちと
参加している人たちの思惑が異なるのに
手段が一致するというところが面白くて
なんというか、謎解きを楽しむよりも
物語の展開を楽しめた読書になったのであります

ところどころ、あえて理路整然としていこうと
嘘を整理していくところなんか、
正直、その論法があってるかどうか、
考えようともしないで、物語を進めてしまうんだが
複数の嘘が絡み合うというスタイルが面白くて仕方なかったのでありました
こういう謎解きを読むという読書が好きなんだな
あってるかどうかは関係なく、理路を整理しているという姿を見るのが
楽しいというお話であります

そんなコテコテの内容で、しかも、隠されていた真実は
なかなか壮絶なもので、物語のしまりもよかったのでありまして、
よくよく物語を楽しみ、
ヒロインの強さを読むという、ごく単純な小説としての楽しさまで堪能できて
凄いよかったとおもった読書であります

【読書】十字架のカルテ

2020-08-24 20:48:14 | 読書感想文とか読み物レビウー
十字架のカルテ  作:知念実希人

精神科医を主役にした、
犯罪の精神鑑定を描いた小説であります
非常に興味深いというか、面白い物語だった

よく聞くし、なんか、ふわっとしたイメージだけで語ってしまいそうな、
心療という行為と、それが犯罪に結びつく、いわゆる精神鑑定というのは
ちょっとしたタブーめいたというわけでもないが、
詳しく知らないけども、なんか、文句なり、意見なりをつけたくなる
そういったものだと思っていたところ
それを描いている本作は、非常に面白いと思えたのであります

あくまで、そういった舞台装置という色合いが強くて、
実際、あまりにも小説しすぎているというか、
そういう話を読みたかったところを書かれたかのような、
詐病や、精神障害を巧みにつかった、エンタメといっても差し支えない
読み応えのある物語が面白かった、すごくよくできてる

実際の現場がどうなのかは、まったくわからないけども、
こういうことであって欲しいというか、
そこに嘘が見当たらないで、犯罪とそこにかかわる人の心の動きを描いているのが
物語として大変読み応えがあった部分だと思うのでありました
あくまで、精神科医という部分は舞台装置でしかないんだが
すごくよく機能していると感じたのでありました

実際と、どの程度の乖離があるのかわからないけども、
なんか、誤解を助長させてしまうような、らしさがあったのが
気になるというか、ドラマか映画にすぐなりそうだなと
思ってしまうくらいよくできているのが心配なところであります
これを読んだだけで、精神科医やら、鑑定やらについて
一家言ぶってしまいそうな、知識的な面白さがあったように思うのである

精神鑑定を使うことで、別の目的を達成しようという
動機の解明や披露というところが新しいというか、
古くからある犯罪系の小説のそれであり、
読みやすかったのもよいところだと絶賛してしまうわけですが、
小説内で語られていた、鑑定により無罪となった人がどうなってしまうのか
それが医療に丸投げされているという現実は
知らなかった事実としては、重すぎるものだと感じるのでありました

このあたりの理不尽というのか、
解決できない社会問題というものが、隠されている、
あるいは見えないように配慮されているという
なんともいえない気持ち悪さも見えたりして
面白いと思えたのでありました

麒麟がくる  総集編3  誇り高く

2020-08-23 21:05:47 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」、視聴完了しました
総集編もいよいよ最後、しかも、道三の最後と桶狭間がセットということで
濃厚な内容でありました
結構飛ばしていたけども、ちゃんと筋は追えるのは当たり前なんだが、
インパクトのあるシーンばっかりで、
観ているとすげぇ面白いと感じたのであります
朝倉の殿様、インパクトすげーな、楽しみで仕方ないわい

道三の最後は、やっぱり、連続で見ていたときよりも
やや、熱量が落ちて見えてしまったのは、
積み重ねてきたしがらみというのが
総集編だと薄いと感じるせいなのか、
それでも、一騎打ちのシーンはやっぱりかっこよくて、
マムシの毒がまわるところなんか、ステキすぎたように思うのである
むしろ、そこから、高政が死ぬまでの間のところが
より印象的になっていたようで、
本編と印象が変わって面白かった
マムシの毒の回り方が、まざまざ見えたようで凄いよかった

そして桶狭間は、今川の描写がほとんどなかったので
割と唐突な感じであったものの、
弟殺しから、今川撃退まで唐突に一気に片付けて、
帰蝶の凄さが隠れてしまって、か弱い女っぽくなってたのが
結構意外だったんだが、織田家のあらましとしては
あんなもんかしらねと感じたりするところである
それでも、権六はしっかりと映してたから、
今後、キーマンになるんだろうか、権六と光秀ってどうだっけかな
秀吉とのあれこれしか印象にないなぁ
新たな楽しみが出てくるのか

桶狭間についても、ジャンピング討ち入りがステキで
何回見てもあのシーンはかっこいい
今後も、ああいったアクションシーンを使って欲しい
コロナとかあるだろうけど、剣豪将軍の最後だけは華々しく
お願いだからやってほしいと、せつに願いつつ
いよいよ来週からの本放送を待つのでありました
楽しみだ

【読書】逃亡者

2020-08-20 20:48:24 | 読書感想文とか読み物レビウー
逃亡者  作:中村文則

難しい小説だった
作者特有の空気感と、お約束のような悪というか、舞台装置が出てくるのだが、
人智を超えた理不尽というか、神がいるのかいないのか、
そういうものと別なのか、一緒なのか、
まったくわからない恐怖と背中合わせのまま、
大きな謎に引きずり込まれていく感じでありました

隠れキリシタン、第二次大戦中の謎の喇叭、怪しい宗教組織、
暴走する政治なんていうものが、
ごたまぜに、あれこれ出てくるんだが、
どれもこれも、確かにそういうもので、しっかりと描かれているけども、
どこか意味をなさないというか、
それが何かをしているというのではなく、
複雑にあわさって、漠然とした不安というか、
ただ、言語化できない気持ち悪さというのが空気として描かれているのが秀逸
もやもやするといったらいいのか、
なんとも居心地が悪い世間、そこに対する不審が極まって、
一種の精神障害めいた状態になるあたりとか、
どこから現実で、どこから虚妄なのかもわからないのが
読み応えあるというか、恐ろしいというか

現代の日本を揶揄したような内容も含まれているけども、
そのあたりはわざとらしく浅く書いている節もあって、
あんまり、そういう政治思想の物語という感じではなく、
人間という生き物が、根っからいじめが好きで、
暴力を肯定し、どうしようもなく争うということを
歴史から、また、その中で虐げられた側なんかを描きつつ、
共通する何か、それは人間のカルマ的なものではないかと
思わされるような、臭わせ文章で進むのでありました
でも、そういうことを言いたいわけでもなさそうなのが
不思議というか、結局何を書いているか
わからなくなるといった本でありました

ちょっと難しくなりすぎている感じがしたので、
もっと、軽くというか、テーマは同じでも、
するっと、爽快さをまとったものを読みたいと
願ってしまいたくなるような、
なんとも陰鬱とした、でも、そんなに暗い話でもない
不思議な物語でありました

読み解けてないということなんだろうかな

【読書】選ばれる女におなりなさい

2020-08-18 20:47:53 | 読書感想文とか読み物レビウー
選ばれる女におなりなさい  著:ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ

あのデヴィ夫人の本であります
正直、スカルノ大統領ともども、よく知らないのだけども
読んで結構驚いた、すごい人、と言ってしまうと陳腐なんだが、
黒柳徹子さんと同じようなすごさを感じた
戦中戦後を生きてきた人特有の強さと、
信念をもって、自分で人生を切り開いてきたという強い自負を持った人という、
うらやましいとは違うんだが、強い、それを感じることができたのであります

かなり貧しい生まれであったらしいのだけども、
持前の才覚を相当に発揮して、スカルノ大統領に見初められたと
そういうお話だったようであります
自伝というか、自身からのお話なので、
どこまで語られていて、どこまで本当なのか
そのあたりはわからんのだけども、
書かれている以上にひどい生活もあったのではないか、
そんな風に感じたのでありました

まさに成り上がりというにふさわしいその生き方、
そして、それを叩いた世間、そのはざまで死んでしまった親族というのが
なんとも、さらりとしか書かれていなかったけども
壮絶な生きざまの結果であるなと思わされるのであります
母親と弟を追い詰めたのは夫人そのものだったのか、
そうではない、何かもっと、悲しいものであったのか
このあたりは、当時のこともわからないので
なんともいえないのだけども
それを乗り越えて、スカルノ氏に嫁いだというのは
世間に対してというか、自分の人生を自分で切り開いていくそのものの結果のように見えて
なかなかすごいことだと衝撃を受けるのでありました

のほほんとしているはずもなく、
己で考え、そして成功を収めてきたという
この結果からして、鋭い洞察と胆力があってのことだろうと
思うほどに、この人のすごさというのが
感じられたのでありました
その方法がどうであったかは、さっぱりわからんところだが
のし上がったという結果こそが、すべてを物語っているんでありましょう

話としては、そこから、若い男に入れあげて
男を立派な紳士に仕立てたという、ちょっとした自慢話みたいなのが、
いかにもという感じがして読んでいて楽しかったのでありました

テレビでみかけたタレントとしての姿しか知らないでおくと、
とんでもない勘違いをしてしまうんじゃないか
そう、今更ながらに思わされたのでありましたとさ
正しいかはわからんが、すごい人で、その人が自分を立ててきた
それだけで、大変立派だと思い知るのである

【読書】暴虎の牙

2020-08-17 21:29:02 | 読書感想文とか読み物レビウー
暴虎の牙  作:柚月裕子

バイオレンスな小説でした
ヤクザとヤクザモノと、マル暴の刑事を描いた小説なんだが、
どうやら、続き物の最終巻だそうで、
凄く面白かったのに、ひとつ重要な物語の終点が描かれておらず
多分、それは以前巻に描かれているんだろうなと
そのあたりちょっと残念に感じたんだけど、
特に前のことを知らないでも読める、面白い小説でありました

今でいう半グレといったらいいのか、
どこのヤクザ組織ともよしみを通じないで、
愚連隊をかこって、対ヤクザ闘争に血道をあげる不良が主人公の一人、
生い立ちの不幸もさることながら、
持ち前の一種異常な狂気が凄まじく、結構簡単に人を殺してしまうし、
殺されることを厭わない感じが恐ろしい男でありました

その男が、広島でのし上がっていこうという話だったんだが、
マル暴のクセのある刑事とのやりとりがなかなか面白く、
この刑事もまた、ヤクザを憎むものとして、
共闘にも似たようなことをけしかけていくというのが
なかなか読み応えがあって面白かった

その共闘の最終盤というか、一番読みたいと思ったところが
この巻には載ってない、あるいは、そもそも
そこは描かれていないのかわからんのだけども、
凄くもったいないというか、面白いのになぁという感じながら
読み進めていくと、なんだかんだで男が監獄送りになって
20年の歳月が経ったというところの話がまた、
目に見えるような悲しさでよかった

今更ながら、監獄送りという刑罰は、
人の時間を奪うというとても怖いことなんだと
実感できるような話の進みがよく、
20年ぶりに娑婆に出てきたら、何もかもが変わっているし、
何もかもがわからなくなっている、
昔知っていた人や、町や、場所や、本当に、
どれもこれも過ぎ去っているという寂寥が感じられて
非常によかったのでありました
なんだかんだ、何もしていないようで、ただ、毎日、
同じ場所で行き続けていたら、それは継続するという
重要なことを行っていて、
世間から置いていかれるという、もっと恐ろしいものからは
遠ざかっているんだなと、今の自分を思い知ったりするのであります
まぁ、そこは主題じゃないから、語るほどでもないんだが

最終的に暴虎がどうなったか、
その末路が描かれて終わるんだが、
最期まで生き残った男の姿で終わるシーンが、なかなか興味深く
彼がまた、どのような人生を歩んでいたかとか
そのあたりも気になる
フィクションなんだろうけども、ヤクザ世界、
暴力に塗れた世界に生きるということが描かれた
面白い小説でありました

麒麟がくる 総集編2 動乱

2020-08-16 20:47:19 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」
総集編第2弾でありました
今回は信長との出会いから道三散る寸前と、
どうせだったら、道三死ぬところまでと思わなくもないところでありましたが
思い出すのに大変ありがたい総集編でありました
細かいシーンとか、覚えていないというよりも、
ちょっと見逃したというところがあったりして
観ていて楽しいのでありました
道三が槍ふるっていたのは覚えていたけど、
宋銭を抜いていたと知らなかったわ、
あれも小説でいいシーンだったから、再現されていたのねと
惚れ惚れである

何はともあれ、今回は信長が主人公かと思わせて、
帰蝶大活躍の巻きで凄いよかった
女優さん可愛いなぁというところから、
帰蝶の姿がものになっていく感じがして、
信長との奇妙なラブラブぶりが、もうちょっと描かれてもよさそうだったけど
道三を通して、夫婦仲のよさが見えるあたり
凄いよかったのでありました
このあたりの光秀が狂言回しっぽいけども
それはそれで、面白いからいいやと
見入ってしまったのでありました

大きくは、織田家のいざこざと斉藤家のいざこざを描いていて、
その役者たち、その立場というのが対比になっているのが
コンパクトにまとめられていて
非常に面白かったのでありました
そこも含めて、対談シーンもあったという感じがまた
いい塩梅だと、脚本のよさもかみ締めたように思うところ

次回で、いよいよ振り返りお終いということで
早くつづきが見たいと楽しみを募らせていくのであります
まぁ、来週は道三の最期とか、桶狭間とか
見所多そうだから、楽しみで仕方ないですな

【読書】兄の終い

2020-08-13 21:14:50 | 読書感想文とか読み物レビウー
兄の終い  作:村井理子

疎遠だった兄がなくなったと突然の連絡を受け取ってから
5日間ですべてを片付けるというお話
小説だと思ってたら、実話なんだそうで、
驚いてしまったのであります
でも、体裁が私小説めいた感じなので
小説として扱いたい

関西で、ほとんど連絡もとることなく過ごしていたというのに
突然に、兄の在所であった福島から連絡があって
物凄い短期間で、すべてを片付けないといけないという
そのあわただしさというか、なんか、壮絶な感じが
死という事象の感情とは違う側面を描いていて
凄い興味深い、面白い読み物でありました

息子が居たようなのだけども、それはまだ幼く、
それゆえか、物凄く汚れた家を片付けるというのが凄まじい苦難だったようで、
親の仇をとるように、どんどんと片付けていく
一種、心というか、何かを殺して、ひたすら片付けるマシーンのように
物凄く働いていく姿というのが、文章から読み取れるんだけども、
こういう時、どれほど働けるかというのは
とても重要な、人間としての何かを試されているかのようだなと思うのでありました
昨今の自分ののらりくらりさでは、
とてもじゃないが、この事態を5日間で片付けられる自信がないわ

兄の元嫁と、基本二人がかりで片付けていったようだけども、
あれこれの手続きだとか、様々な人間社会のしがらみも見つつ
その人を悲しむという行為がほとんどなく、
不思議な残滓というか、残された思念のようなものを遺品から
少しだけ感じたりするだけで、あとはただただ、
平常にしていくために、片付けていくという作業が
膨大で、とてつもなくて、なかなか大変だと思わされたのでありました

何を感想ともつのが正しいのかわからないし、
この本も、そういったことを求めていない
ただ、そういうことがあったという事実と、
まだ消化しきれていない自身の感想のようなものを
無理やり形にしただけの文章、そういった装いがステキだと
読み終えて思うのでありました

断捨離というか、身の回り片付けておこう
夏場に死んだら、大変な迷惑をかけてしまうなぁ

【読書】実家が全焼したらインフルエンサーになりました

2020-08-11 21:23:27 | 読書感想文とか読み物レビウー
実家が全焼したらインフルエンサーになりました  著:実家が全焼したサノ

SNSの有名人が書いた、ネタ帳的な本かなと読んだら
ネタの内容が高度で驚いたというか、笑ってしまった
この人凄いなぁと感心しきりの本でありました

笑い話にしているけども、結構不幸な生い立ちのようで、
その中であった話を淡々と、でも面白く書いているというのがよろしく、
ウケを狙いにいく感じが、漫才とかコントのようで、
かなり高度な笑い本だと思うのであります
構成作家みたいだなぁ

そんな面白おかしいエピソードなんだけども、
よくよく考えると当たり前というか、
凄く頭もよくて、行動力もあって、一途に面白いというあたり、
広告代理店の営業マンみたいだなと思ってたら、
案の定そうなっていたんだそうで、
なかなか凄いというか、こういう人種は一定数存在するんだろうなと
妙な感心をしたのであります

重めな生い立ちも、冷静に流している感じなので
暗い気分になることもなく、ちょっと、そこからいい話にしていたり、
優しい説諭みたいなこともしているのも、
割とすんなり読めるのが、文章力というか、何か力なんだろうと思うのである

しかし、並外れた行動力は尊敬に値するところが多く、
思い立って、唐突に100km走ってみて疲労骨折するのは、
わりとありそうなオチなのに、さらに、その体験を売り込みにいって、
プレゼンしてきたというのが、極度のオチで、
この行動力が、ある意味ホンモノだなと思わされたのであります
若くても、この行動力はなかった、これは人間力の差だ、すげぇ

まぁ、子供の頃から、あれこれ稼ごうと稼いだ経験を
なんなし生かしていたというか、ただでは起きない根性を育んでいたような話もあったので、
推測するに、結構な不良少年であった可能性もあるよなと思いつつ、
それが、頭の良さとあわさると、こういう凄い人になるのかと
改めて世の中の当たり前を思い知った本でありました
というか、この人を知ったお話でありましたとさ

【読書】茶聖

2020-08-10 21:04:40 | 読書感想文とか読み物レビウー
茶聖  作:伊東潤

千利休を主役にした生涯を追った小説でありました
いわゆる、織豊時代の動静を追ったもので、
その裏に利休がいたという筋書きのもと、
様々な政治的な駆け引きを茶の湯とともに進めるといった感じ、
色々な物語で読んだそれこれに、
またひとつ新しい見方が増えたと思える内容でありました

信長の時代から、利休が重宝されていたというのが新しいところで、
そのあたりから、堺の町衆が、その繁栄を望むため、
武家を傀儡にしようと画策してきたという筋書きのもと
利休をはじめ、商人たちが暗躍していくという様が面白い
やがて、大きな志として、世の中の静謐というものが現されて、
そのために利休は己の人生をかけていくという話だったんだが、
まぁ、そういう言葉はあまり意味がなく、
生涯をかける何かがある、
それをまっとうした男の話という感じで、
武家よりも武家らしいとすらいえるような、男らしさあふれる感じが
ステキな内容なのでありました

このジャンルというか、この時代は
様々な小説や漫画、ドラマなんかで見てきてしまったので、
正直、まっさらな感じで見られないのが残念なところ
特に、茶の湯というジャンルにおいては、
個人的に漫画の影響が強すぎるので、
もっと感触よく読めそうなところが、どうも、過去のそういった作品にひっぱられて、
違う感覚を覚えてしまったりとか、
知っているということは、必ずしも物語を楽しむうえでよいものじゃないなと
改めて思い知ったりするのでありました
ひらたくいうと、出てくる織部正が、清清しすぎる
いいんだけどもさ
代わりでもないが、不肖の長男紹安がユニークなキャラながら
興味深い立ち回りでよかったのでありました
彼と山上宗二の扱いがよかったというか、二人そっくりだったな
利休の別の一面を体現したキャラだったように思う

全般に、察しのいい人たちの会話というか、
その考え方の披瀝が多いので、読んでいて正直疲れてしまうところもあった
そこまで、あれこれ考えて会話をしないとならんかと、
まぁ、大人としては当たり前なのではというところが
ありあり描かれていると、物語なのに、なんか反省を強いられるようで
辛かったのは、自身不徳のいたすところながらも、
素直に楽しめなかったのでありました

何かを言うということは、意味があり、
それは言葉通りということではないと
考えていかないといけないと、
わかるようで、わかりたくない、わからないものだと
改めて思い知りつつ
そういうものから離れた、ただただ、作意を楽しむという茶の湯に
ひかれるという気持ちも芽生えるようでありました
正しく使えば、そういう洞察、言葉を使わない会話というのが
楽しいと思える
それもまた、茶の湯のよいところなのかなと勝手に思ったりする

麒麟がくる 総集編1 旅立ち

2020-08-09 23:19:02 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」
いよいよスタートまでの助走といった感じで
総集編が始まりました
正直、最近の私の記憶力では、ドラマ休止になった
最後がどういう話だったか、まったく覚えがないので
大変ありがたいことだと楽しみに見たのでありました
まずは、序盤、それぞれの英雄たちとの出会い部分、
そして、信長に嫁いでいく帰蝶のお話まで
改めて見ると、帰蝶のヒロイン力が高いと思い知るのでありました

描き方の問題もあろうけども、
総集編だと、帰蝶と光秀の間になんかあったんじゃないかと
濃厚なかかわりを思わされるようになっているのが不思議で、
いろいろな加減で、序盤のやりとりを描いていないのは
同じのはずなのに、短くまとめられると、
そういう位置にいたんだとわかるようになっていて、
改めて脚本というか、演出ってすごいなと感心してしまったのである
まぁ、このあと、信長とラブラブというか
似たもの夫婦っぷりがさく裂するから、
来週が楽しみでならんのだけどもさ

そして、序盤、なんだかんだ楽しかった
様々なパターンの殺陣が、えりすぐりで見られてすごいよかった
最初の村が襲われるシーン、本能寺前での藤孝との攻防、
そして三好松永を助けるシーン、
それぞれの見せ場がするりと盛り込まれていて、
まぁ楽しいったらありゃしないという具合でありました
本当、アクションに力が入っている
珍しい大河だよなと、つくづく思い知るのでありました

あまり細かなやりとりまでは描けないので仕方ないとはいえ、
見せ場と、キャラの紹介めいた感じは
きっちりこの短い時間でやりきっているのがすごいと
改めて編集能力の高さというものも感じつつ
麒麟がくるを少しずつ思い出していけると
頼もしく思えたのでありました

尺の都合とはいえ、思った以上に岡村さんにスポット当たってないのだけ
ちょっと気になったというか、まぁ、そんなもんかという感じなんだが
主要ではないのに、結構記憶に残る出方をしてたんだなと
改めて思うのでありました
あと2週かぁ