土曜日の朝NHK深読み、日曜日の朝シューイチ、サンデーモーニング、新報道2001など。
いずれの報道も、落としている観点は、現在、築地市場は、土壌汚染対策法上の土壌汚染指定区域のひとつ「形質変更時要届出区域」(土壌汚染対策法11条1項)に指定されているということです。
そして、その土壌汚染指定区域に、土壌汚染対策法の趣旨に則り、いかに生鮮食料品を扱う市場を作ることを可能にできるかということで、専門家会議、技術会議で出された結論である対策工事が、盛り土を行うということでした。
盛り土を行わなかったことは、土壌汚染対策法の明白な違反行為であり、「形質変更時要届出区域」(土壌汚染対策法11条1項)は解除されないことになります。
すると、卸売市場法は、土壌汚染指定区域に生鮮食料品を扱う市場を建設することは想定しておらず(卸売市場法10条2号)、国による卸売市場法に沿った市場認可はなされないこととなります。
「法律による行政の原理」による当然の帰結です。
農林水産省の考え方も報道すべきと考えます。
東京都による専門家の皆様の検討を待つまでもなく、明らかなことではないでしょうか?
いままでの検討経緯を無視した結論は、新たに設置される専門家による会議には許されません。
あくまで、建物“下”に盛り土をしなけれればならないのであって、建物内の地下空間を土で埋めても、それは建物内のことでなんらの解決にもなりません。そんなに都合よく、建物というものの範囲が変えられてよいのでしょうか?
「地下空間」というマジックワードで、都民を惑わさないでいただきたい。
*********卸売市場法****
(開設の認可)
第八条 次の各号のいずれかに該当する地方公共団体は、農林水産大臣の認可を受けて、開設区域において中央卸売市場を開設することができる。
一 都道府県又は政令で定める数以上の人口を有する市で、中央卸売市場整備計画において定められた中央卸売市場を開設することが必要と認められる都市の区域の全部又は一部を管轄するもの
二 中央卸売市場の開設に関する事務を処理するために設置される地方自治法第二百八十四条第一項の一 部事務組合又は広域連合で、前号に掲げる都道府県又は市の一以上が加入し、かつ、当該開設区域の全部又は一部を管轄する地方公共団体のみが組織するもの
(認可の申請)
第九条 前条第一号又は第二号に該当する地方公共団体は、同条の認可を受けようとするときは、業務規程及び事業計画を定め、これを申請書に添えて、農林水産大臣に提出しなければならない。
2 前項の業務規程には、少なくとも次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 中央卸売市場の位置及び面積
二 取扱品目
三 開場の期日及び時間
四 卸売の業務に係る売買取引及び決済の方法(委託手数料に関する事項にあつては、農林水産省令で定めるもの)
五 卸売の業務に係る物品の品質管理の方法
六 卸売の業務を行う者に関する事項
七 卸売の業務を行う者以外の関係事業者に関する事項(この章において業務規程で定めるべきものとされた事項に限る。)
八 施設の使用料
3 第一項の事業計画には、次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 取扱品目ごとの供給対象人口並びに取扱いの数量及び金額の見込み
二 施設の種類、規模、配置及び構造
三 開設に要する費用並びにその財源及び償却に関する計画
(認可の基準)
第十条 農林水産大臣は、第八条の認可の申請が次の各号に掲げる基準に適合する場合でなければ、同条の認可をしてはならない。
一 当該申請に係る中央卸売市場の開設が中央卸売市場整備計画に適合するものであること。
二 当該申請に係る中央卸売市場がその開設区域における生鮮食料品等の卸売の中核的拠点として適切な場所に開設され、かつ、相当の規模の施設を有するものであること。
三 業務規程の内容が法令に違反せず、かつ、業務規程に規定する前条第二項第三号から第八号までに掲げる事項が中央卸売市場における業務の適正かつ健全な運営を確保する見地からみて適切に定められていること。
四 事業計画が適切で、かつ、その遂行が確実と認められること。
*********朝日新聞*****************
http://digital.asahi.com/articles/ASJ9K5TG1J9KUTIL01N.html
「盛り土したもんだと…」 豊洲市場の認識、庁内にずれ
2016年9月18日03時02分
「昨年ごろ知った」「問題ないと思った」――。盛り土がされていなかった東京都の豊洲市場(江東区)をめぐり、前副知事が証言した。都庁内のずさんな情報共有は地下空間が設けられた問題検証の焦点で、都のプロジェクトチームが経緯を調べる。専門家会議も小池百合子知事の依頼を受けて再開され、安全性を再検証する。
「両方の思い込みがそのままにきて、今回のような事態になっている」。市場問題プロジェクトチーム座長の小島敏郎・青山学院大教授は17日の記者会見でそう話した。「盛り土をしている」と考えてきた職員と「地下に施設を造った」と把握していた職員――。小島氏は、双方の連携不足が深刻な事態を招いた一因とみている。
「技術屋(技術担当の職員)はみんな知っていたはず。ただ、それ以外は地下の空間まで気にしない」。市場移転を担当してきた都幹部の一人も、部署間に情報共有の壁があったことを認める。建物設計の担当者の間で、どこまで「盛り土」の必要性が共有されていたのか。都が進める検証の焦点になっている。
外部への情報発信も正誤が入り交じっていた。都のウェブサイトなどで「盛り土をした」と説明し続けたが、別のページには地下に施設を設けたことが分かる資料なども載っていた。
「広報担当の事務職員は、設計が途中で変わるとは思わない。心底、『盛り土がある』と思って情報発信をしていた」。元都幹部の一人は、都庁内の雰囲気をそう振り返る。結果として、都庁中枢すら、大型プロジェクトの根幹に関わる内容変更を数年も知らない事態が続いてきた。
「恥ずかしながら全く知らなかった。盛り土をしているもんだと思ってた。(資料を)見て気づければ良かったけど、なかなか難しい」。市場を管理する都中央卸売市場長の経験者も、そう語る。
「行政の手順がしっかり行われていない、コンプライアンスの問題。正すにはルールを確立することだろう」。小島氏は17日、都が抱える課題をそう指摘した。原因に関する都の調査結果を受けて、市場の安全性や移転の妥当性などを外部有識者で検証する作業に進む。
「これまでの経緯についてのチェック。(私が)帰った時点できっちりと整えていてほしい」。パラリンピック閉会式のため、リオデジャネイロ出張中の小池百合子都知事は16日(日本時間17日)、そう話した。
■ベンゼン拡散防止、焦点
「前提条件が変わった。現状を見て再評価する」。2008年に土壌汚染対策として「盛り土」を提言した「専門家会議」の座長で、今回も座長を務める平田健正(たてまさ)・放送大学和歌山学習センター所長は17日の記者会見で、安全性を再検証する考えを示した。
再び盛り土をする可能性について平田氏は「施設が入った今の地下で盛り土をするのは物理的には難しい」とし、「4・5メートルの盛り土と今の状態とどっちがいいという議論ではなく、今の状態を改めて評価する」と述べた。まずは現在の地下空間内で、地下水と大気で有毒物質のベンゼンの数値などのデータを集める考えだ。
都の地下水モニタリングの最終結果は1月に出る予定だが、専門家会議が安全性の結論を出す時期については「予想がつかない」とした。
焦点となるのは、コンクリートで揮発性のベンゼンの拡散を防げるかだ。平田氏は08年の提言で、盛り土によって地下から上がるガスの拡散が抑えられると結論づけたことを説明。「コンクリートが盛り土に代わる効果を持つか、データを観測する必要がある」と述べた。
都が17日に公表した地下にたまった水の検査では、環境基準を下回る微量のヒ素と六価クロムが検出されたが、ベンゼンやシアン化合物、鉛などは検出されなかった。平田氏は「環境基準以下なので問題ない」とした。
地下の水については、「雨水ではヒ素がこういう濃度で出ることはない。地下水の影響が大きいのではないか」と指摘。地下水にベンゼンやシアン化合物が含まれれば、揮発して上部の建物に入り込む可能性もあるため、施設直下の地下水位の確認も進める。
平田氏はまた、「提言の内容と違うことをするなら、当事者に説明するのが大事」として、築地市場の関係者の意見を専門家会議の中で聴く方針も示した。