以前、憲法審査会の専門家が3人とも、安保法制の違憲の意見を述べられたことがありましたが、今回も参考人の3人ともがチェック機能の強化を述べているということの重要性を、国会は真摯に受け止めるべきであると考えます。
本日5/13、朝日新聞の記事で、衆議院解散に関する重要な政治学者野中学習院大学教授の意見が掲載されています。
私たち国民は、衆議院解散の意義を正しく理解し、理由なき安易な解散をする首相には、国民の側からこそ、N0の選挙結果を示し、安易な衆院解散自体を許さぬように方向づけていくべきと考えます。
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http://digital.asahi.com/articles/DA3S12353788.html
<野中氏の意見の記事における重要なところ>
――なぜ各国は解散権を縛るようになったのでしょう。
「根底には、政治エリートが勝手なことをやるのは慎むべきだという考えがあります。そして、政府には有権者との約束実現にじっくり取り組ませることが重要だと。任期が4年なら、4年でやるという公約、マニフェストあるいは基本方針を有権者に示して選挙を戦い、与えられた任期で実行する。任期中にできたこと、できなかったことをもとに次の選挙を戦うサイクルを重視しているからです」
「日本でも、衆議院によって内閣が不信任され、内閣総辞職を避ける場合には、憲法69条による解散が可能ですが、これは他の主要国でも依然認められている解散に近いものです」
「しかし問題なのは、憲法7条を根拠とする解散です。内閣の助言と承認があれば天皇の国事行為としていつでも解散できるとされ、首相1人がだれにも邪魔されずに解散について判断できるという解釈につながっています。世論調査などが発達した現代では、いつ衆院選を行えばどの党にとって有利かをかなりの程度まで予測することが可能です。首相は自らに最も有利な選挙のタイミングを選ぶことができるのです」
「首相は解散をちらつかせて、野党ににらみをきかせるだけではなく、政府・与党内の求心力を保とうとします。日本では衆院選だけでなく、参院選、政党の総裁や代表の選挙も首相の進退にかかわるので、政局を次々と仕掛けてばくち的な勝負事に打って出ながら政権運営しなければなりません。だから、落ち着いて政策に取り組むのが難しいのです。逆説的ですが、日本の首相は内閣や国会でほとんど正式な権能を持たない『弱い首相』の典型。自由な解散権という残された武器で何とか頑張ろうとするわけです」
――とはいえ、憲法で認められているとの解釈があるわけですよね。
「憲法は明示的に恣意(しい)的な解散をやるなとは書いていないし、明示的にどんな解散もできるとも書いていません。しかし、だからといって、憲法が改正されない限り、首相が解散するのを止める方法はないというのは誤りです。責任ある政党の間で、任期満了まで、不信任にならない限り衆院を解散しないことに合意すればいいのです。つまり政治的な知恵の問題です」
「ヨーロッパの主要国は、政治家、官僚を問わず、統治のシステムをよりよいものにしようと常に工夫し、努力しています。日本は、明治維新の後には伊藤博文らが必死に政治制度を研究しました。いまはどうでしょう。政治の仕組みとしては非常に特異な進化を遂げた、あるいは進化を止めてしまったのではないかと感じています。これを私は政治の『ガラパゴス化』と表現しています」
「フランスの政府高官から『各国と行政の組織や運営について意見交換をしているが、日本からだけはまったくコンタクトがない。どういうわけか』と質問されました。政治家や政府高官たちは、諸外国の統治の仕組みがいまどうなっているか勉強しているでしょうか。私はだいぶん懐疑的に思っています」
<朝日新聞による衆議院解散の歴史の解説>
現憲法下で衆院議員が任期を満了したのは1976年12月の三木武夫内閣時だけだ。それ以外はいずれも、任期途中での解散を受けて選挙になった。
このうち憲法69条に規定されている内閣不信任決議案が可決した後の解散は、吉田茂内閣の48年、53年、大平正芳内閣の80年、宮沢喜一内閣の93年と計4回だけ。圧倒的多数の19回が69条を根拠としない解散で、7条解散とも呼ばれている。
いわゆる7条解散をめぐっては、吉田内閣による48年の解散時、連合国軍総司令部(GHQ)が69条解散以外は認められないとの立場だったため、与野党で話し合い、内閣不信任案を可決した上で解散した。しかし、52年に吉田内閣が初めて、69条によらない「抜き打ち解散」を行った。これを違憲とする訴訟(苫米地訴訟)が起きたが、最高裁は60年に「高度に政治性のある国家行為」だとして判断を避けた。統治行為論を認めた判例とされている。
80年と86年には、解散により衆参同日選挙が行われた。
<朝日新聞社による記事の記載者の紹介>
野中尚人のなかなおと 58歳 1958年高知県生まれ。学習院大学教授。現代日本政治、比較政治が専門で、著書に「自民党政治の終わり」「さらばガラパゴス政治」。政策会議について近く出版する予定。今年度は欧州に研究の拠点を移している。