Y1と訴外亡Aは、両名の共有にかかる本件建物を、Xに売り渡した。その後、Y1は、自己の単独所有を装ってY2に二重に売り渡しし、Y2はY3に売り渡した。
Xは、本件建物につき所有権保存登記を経由するとともに、Y1とAを仮処分債務者として処分禁止の仮処分を執行したところ、Y3もまた、両名を仮処分債務者として同様の仮処分を執行した。
Xは、亡Aの訴訟承継人であるY2及びY4に対する本件建物の所有権移転登記請求訴訟(第1訴訟)を提起。また、Y3に対し本件土地明渡し、及び本件土地建物の不法占有を理由とする損害賠償請求の訴え(第2訴訟)を提起。
その後、第1訴訟の第1審継続中に第2訴訟との間で弁論が併合された。第1審では、Xの請求が認容。
原審が、第1訴訟について提出された証拠を、Y3の援用のないままに第2訴訟について主張の当否の認定資料に供したのは弁論主義に違背するかどうかが問題点となり、Y3は不服申立てを考えている。
問題となる条文:
民訴法39条
(共同訴訟人の地位)
第三十九条 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。
条文のどの文言の解釈の問題か
共同訴訟人独立の原則があるが、共同訴訟人の1人が提出した証拠については、援用の有無にかかわらず、他の共同訴訟人についても事実認定の資料とすることができるかどうかが問題となっている。
自分と反対の考え方:
援用必要説。
上記考え方の問題点:
証拠は、裁判所が判断すべきものであり、援用がなければ、その共同訴訟人に関する事実認定の資料にできないとなると、自由心証主義に反することとなる。
自分の考え方:
通常共同訴訟において、共同訴訟人の1人が提出した証拠は、援用の有無に関わらず、他の共同訴訟人についても証拠として事実認定の資料とすることができると考える。なぜならば、 共同訴訟をするのであるから、統一的処理ができることが望ましいから証拠も統一的に扱われるべきである。さらに、証明しようとする事実は一つなのであって、自由心証主義のもと、裁判官が証拠の評価をするべきであるからである。
従って、Y3の不服申立てには理由がない。
また、Y3にとっても、その証拠が、自分に関する部分について、事実認定の資料に使って心証形成をしてほしくないのであれば、その旨を第1審係属中に弾劾する機会が与えられているのであり、Y3にとっても許容されるべき結論であると考える。
以上
最判昭和45年1月23日民集98号43頁、(主要判例96)