2003年アメリカ映画だが、主人公のケイト・ブランシェット以外はアイルランドの俳優。
ロケはアイルランド・ダブリンとその近郊で行われた。
ヴェロニカ・ゲリンは、実在の女性新聞記者。
麻薬組織を追及して、射殺されてしまう。
1996年のことだった。
私はこの有名な事件を知らなかった。
監督のジュエル・シュマッカーも「知らなかった」とコメントしていた。
DVDのパッケージに書かれているあらすじを読んで、「これはきつい。観るのがつらいのでは」とためらった。
最近ではルワンダを描いた作品を観なくてはと思い「ホテル・ルワンダ」を観たが、その他の作品はまだ手が出ない。
同様に旧ユーゴ内戦の映画もなかなか観ることができない。
この映画も嫌々ながら観た。
だって、麻薬組織の極悪非道な連中に正義感あふれる女性記者が殺される話ですよ。キツイ、つらい。
それも夜にモニター画面を一人凝視しているのだから救われない。
しかし、ヴェロニカ・ゲリンが遭遇した現実に比べれば...。
1994年、ヴェロニカはダブリンで麻薬汚染が広がっていることを目のあたりにする。
この事態に人々は動かない。見て見ぬふりをする。
ギャングは簡単に殺人を犯していく。
アイルランド憲法は犯罪者に対して甘いと言われていた。
追及する記者には制約が多かった。実名報道は許されていなかった。
ヴェロニカはスター記者だった。
彼女が名を上げたのは、スキャンダル事件で海外にまで逃亡した司教を追って「飛び込み」取材をしたことだ。
恐れを知らないと思われる彼女の「飛び込み」取材は、麻薬組織へも行われた。
麻薬組織のボス(ギリガン)は冷徹で凶暴な男。
影に隠れているギリガンをあぶり出していく。
そして、ギリガンの自宅へ「飛び込み」取材をして暴行を受けてしまう。
たび重なる脅迫にくじけそうになりながらも対峙していく彼女へ牙をむくギャングたち。
ついに殺されてしまうヴェロニカ。
この衝撃的な事件にアイルランドの人々は立ち上がる。
憲法さえ改正した。犯罪者の資産凍結を可能にするものだ。
死後、彼女は聖人と言われるようになった。
確かに正義への殉教者だろう。
映画は一人の人間として描いている。
顔には出さないが恐怖心も勇気も持った一人の女性として。