映画の話が続きます。
『ケイコ 目を澄ませて』は耳が聞こえないプロボクサーの日々を淡々と語っていきます。
(私はスポーツに題材をとった映画ではボクシングものが好きです。それ以外のスポーツものはほとんど見ていません)
耳が聞こえないとはどのような状態なのか日常の場面でさりげなく丹念に見せていきます。
会話が難しいことをはじめ、耳からの情報が得られないということの困難さは想像以上です。
ボクシングジムの会長を三浦友和さんが演じていますが久しぶりです。本当にベテランですね。
長く俳優を続けていることはその道の職人になることなんですね。
主演を務めるのは岸井ゆきのさん。クランクインする3か月前からボクシングのトレーニングを積んだそうです。
私の感覚では3か月間でこんなにできるようになるのかちょっと信じられません。
コーチとのミット打ちに驚かされます。フットワーク練習にも。
会長がスポーツ紙の記者に答えて、耳が聞こえないことのハンディの大きさについて話します。
「彼女前のジムでは練習試合もさせてもらえなかった。当然でしょう。ゴング、レフェリーやセコンドの声も聞こえないのだから危険すぎます」
スポーツ選手がどれだけ聴覚に頼っているのか映画が教えてくれます。
例えば、聴覚なくして音楽は存在しないでしょう。音楽のない世界って耐えれますか。
この映画には「劇伴」(流される音楽)はありません。
流れる音は環境音とセリフです。
彼女の日常は、夜明けとともに起きて10kmのロード。1時間程度かかるでしょう。
仕事はホテルの客室清掃、終わってからジム通い。ほぼ毎日です。
時間は分かりませんが暗くなって8時過ぎに帰宅でしょう。
(アパートは二人でシェアしています。作曲家をめざそうとする男性ですが彼女がいます)
それから食事をとって練習メモをとって就寝です。
ジムの会長が記者の質問に答えています。
「彼女の良いところは、目です。それから器量です。小さい頃いじめられてグレたこともあったとお母さんに聞きましたが」
(この器量ということばは、素直で率直と意味だと会長は話します。辞書:ある事をするのにふさわしい能力や人徳)
最高の誉め言葉だと思います。
タイトルに「目を澄ませて」とあるのはこのことなんですね。
ただ彼女には笑顔はありません。
この笑顔を取り戻すことができるか、どうでしょう。
アマゾンで配給しています。ぜひ。
お読みいただきありがとうございました。
ウクライナに平和を!