今日は東京から一橋大学商学研究科教授の橘川武郎先生をお招きして、石炭に関する講演会を聴きました。
お題は、「エネルギー政策の転換と釧路コールマインの役割」というもの。石炭の役割を改めて勉強して、日本で唯一石炭を坑内掘りで掘っている釧路コールマインの価値を見直そうというものです。
橘川先生のお話は石炭に関わる者にとって勇気を与えてくれるものでした。その切り口はまず何と言ってもエネルギーを作り出す配分の考え方。
先生は、「エネルギー生産には、原子力の外に、水力、火力、天然ガス、自然エネルギーなどがある。しかし先に原子力ありきとして残りを外で積み上げるというアプローチは取るべきではない」とおっしゃいます。
「世論が『脱原発依存』に傾いている中で、原子力発電を増やすという声は少数にとどまっている。考える順番として、①再生可能エネルギー(いわゆる自然エネルギー)の拡充の速さ、②省エネルギーによる節電の度合い、③石炭火力のゼロエミッション(CO2放出せず)の進展具合、として、これらで賄えない部分を原子力で補うという考え方で行くのが現実的だと思う」
そのうえで、「再生可能エネルギーを大幅に拡充すべきという視点から、技術的・制度的なハードルを一つ一つ克服してゆかなくてはならない」とおっしゃいます。
また「省エネルギーによって減る分を将来の電源構成目標にしっかりと組み込むべきだ。日本の省エネ技術は世界最高水準であり、これを世界に売る力はある」とも。
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実は世界の主要国における電源別発電電力量構成比にはお国柄が良くあらわれています。
2008年のIEA資料によると、その割合はこんな感じ。
【世界の電力の4割は石炭なんだ!】
実はまだまだ石炭こそが世界の電力需要を支えている実態がよくわかります。世界の40%の電気は石炭によるものなのです。
先生は、日本が鳩山イニシアチブで打ち出した、『2020年までに日本の温室効果ガス排出量を25%(3.2億トン)削減する』という公約を実現するのは国内では無理だろう、とおっしゃいます。
「しかし視野を広げて、国内の世界最高効率による石炭火力発電技術を海外へ移出して、世界のCO2を削減することはできる。日本の技術を仮にそのまま、米・中・インドに移出できれば、それだけで13.47億トンのCO2が削減できるのです。まあ全部を日本の手柄にするのは無理があるので、二国間で折半したとしても、6.7億トンを日本が減らした、ということにはできるでしょう」
先生はさらに、石炭を燃やしてもCO2が出ない技術、つまり石炭のゼロエミッション技術を日本が行えれば世界に最も貢献する技術の確立になるだろう、とおっしゃいます。
これは発生したCO2をつかまえて、どこかに固定させるという、良く理解ができない技術のようなのですが、日々進展しているといいます。日本の変態的技術力が間に合うでしょうか。
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最後に先生はこうおっしゃいました。
「釧路市が最後の生き山として持っている坑内掘りの技術はいよいよ世界の露天掘りが坑内に移り始めている今日非常に重要なものになるから残すように頑張ってほしい」
「また、釧路の太平洋炭鉱では、早くから社員に持ち家を薦めて、短銃を形成させなかった。これは非常にまれな事例だ。結果として、かつて羽振りが良く後に落ちぶれた炭住という、他の市民から助けてもらえなかったエリアではなく、市民と一体となった石炭産業が実現した。こういうコミュニティと一体となった石炭産業という在り方だって先進的事例として世界に教えてあげられる貴重な知見だと思うべきだ」
石炭にかかわるものとしてはとても元気になるお話をたくさん聞かせていただきました。
まだまだ石炭が地域を支え続けられるように頑張ります。