四月七日付の建設新聞に、建設産業全体をいくつものプレーヤーにインタビューしたコーナーがありました。
そのなかの一人に東京大学政策研究大学院大学教授の家田仁先生が、「インフラ是非は冷静な議論で」と題した記事が掲載されています。
**インフラのあり方は
「インフラ投資を考える場合、国民の意識の変化、財布と金持ち度、求められる質の高さなどが影響する。たとえば、高速鉄道も、国民の所得水準が低ければ何もそんなに急いで運行する必要がないが、所得が高くなると、当然高速運行へのニーズが高まる。住まいについても、郊外でも庭付き一戸建てに住みたいという若い頃のニーズが高齢になると、駅近くの都心マンションがいいということになる」
「人がどう変わるかによってインフラも変わる。インフラは長い歴史の中で量も質も基本的には上がってきているが、人の見方や価値観の変化でその時々に変わる。その意味では、人口減少時代になったからインフラも減らせばいいという単純なことにもならない。時代が変わる、そのとき何が必要で、何がいらなくなるのかという判断には冷静な議論を尽くすべきだ」
「財政が苦しい、誰か文句も言わない悪者を見つけよう。それ、公共事業を悪玉にしようという迷信に走ること。それとは逆に、景気が悪くなるとすぐ公共事業を景気対策の糧としたがること。この二つの流れは、私にとってもインフラにとっても、どちらも敵である。いい悪いの判断と選択は高度な難しいことであり、だからこそ冷静に、慎重に考えるべきことだ」
**判断の一つにB/C(費用便益)がありますが
「そのような価値判断を持ち込むのは、インフラを十把一絡げのものと考えているからだ。防衛、教育と同様、国民の生活と安全に深く関わるインフラもB/Cを超えた判断が必要だ。明治維新後、大久保利通は自分の出身地と離れた東北にインフラ投資をした。それは戊辰戦争で傷んだ東北地域の基盤整備を急ぐことが国を一つにすることだと考えたのだ。決してB/Cではない」
(以下略)
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家田先生の主張は、『今の世の中はB/C、つまりかけた費用に対する見返りがあることが事業実施の前提となっていますが、それはそういう価値観が世を覆っているが、経済合理性だけではない別の価値観があってもよい』ということです。
実際、条件不利地を救おうという考えに立てば、国としてそういう措置を取るということはできます。
「離島振興法」という法律が1953年に作られました。これは条件不利は離島の産業基盤や生活環境の改善を通して離島住民の生活の安定および福祉の向上を目的とした法律です。
この法律策定に当たっては、歩く民俗学者として有名な宮本常一が対馬を調査研究してがその設立に尽力したことで知られていますが、長崎県も他の離島を抱える都県と連携して国に働きかけました。
真にその意義が確かなものであり、しかも思いを同じくする立場の人たちとの連携があれば世の中を動かすことはできるのです。
宗谷地域もこの北辺で国境を有する地域のB/Cではない意義をしっかりと考えたいところです。