先日、北星学園大学の藤崎さんという講師が訪ねてきてくれました。
彼とは彼が知床でガイド業をしているころからの知り合いで、彼が稚内の北星学園大学に移ったことも知っていたのですが、なかなかタイミングが合わずに会えないでいたのですが、やっと会えました。
開口一番、彼は「小松さんの先日のブログの『稚内の強風のエピソードをもっと掘り起こしたり創作すれば良いのに』という記事を読んで感じるところがありました」と言いました。
「私もよそから来たので、風の強いところだなあ、とは思っていたのですが、それを地域の価値としてとらえる視点に改めて気がつきました。そこで、このいわゆる『強風あるある』ですよね、これを学生たちへのテーマとして授業で展開してみようと思うのです。そこで小松さんの了解を得ておこうと思いました(笑)」
「別に僕もパテントを主張する気はないので、大いにやってください(笑)。テレビ番組の『あめトーク』みたいにみんなでネタ探しをして笑いをとるようなことをやればたくさん出てくるんじゃないでしょうか。それに地域を彩るエピソードってたくさんあった方が紹介やガイドの時に使えるでしょ?」
「そうなんです。こちらで観光のためのガイドを養成する活動をしていますが、皆さんゲストに対して、本に書いてある知識を紹介しようとしすぎるんです。もちろんそれも大事ですが、ガイドさん一人一人の経験やエピソードを語るともっと語りが受け入れられやすくなります。ところが、『自分のことを語るなんて…』と最初は躊躇される方が多い。少しずつそういう話をすることに慣れてくると語りがぐっと滑らかになるんですけどね」
「やっぱりそういうことが大切だ、と言い続ける人がいないとね。藤崎さんのよそ者としての役割でしょうね」
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「ところで、僕より先に稚内に来ていて、強風のエピソードって何かありますか?」と今度は私から藤崎さんに訊いてみました。
「ええ、市内のある有名ホテルのお話なんですが、そこで部屋の消臭をしようとファブリースとかいろいろな消臭剤を使ってみたそうなんです。ところがかえって微妙な香りがついてしまったりして、部屋の匂いってなかなか取れなかったそうなんです」
「ほうほう」
「そこで風なんです。何のことはない、窓を少し開けて稚内の強い風を部屋の中に取り入れて空気を入れ換えるのが結局一番匂い取りに効果があったそうなんです」
「風に価値があるって話ですね。いいですねえ。そうそう、僕も一つ創造考えましたよ」
「どんなのです?」
「先日自転車に乗っていて、風が強いのをいつも向かい風に感じていたんです。まあ前に向かって自転車を走らせれば大抵は向かい風になりますよね。でも向かい風って向きを変えれば追い風になりますよね」
「ははあ(笑)」
「そこで北門神社を『日本一の追い風神社』と銘打ったらどうかと。皆さん向かい風に耐えながら神社へ向かってお参りをする。すると帰り道は反対方向なので追い風になるわけです。これぞ『日本一の追い風神社』ってわけですが、どうでしょうねえ(笑)」
「ははは、風そのものには良いも悪いもないので、それは自分にとっての価値がどうかってことですね。考えてみれば、摩周湖の霧だって、霧がなければ景色がよく見えるけれど、霧が立ちこめたら『霧が出ていた良かった。きれいな湖面が見えたら結婚しにくくなる』なんて話を創っていますよね。あれなんかうまいなあと思いますよ」
「風がなければそれでよし。風向きが逆だったら、『追い風に乗ってここまで来たんだから、これからの向かい風に耐えてゆけ』くらいのことを言えばいいんじゃないかな(笑)」
まあ冗談はこの程度にして、稚内の『強風あるある』の話は集め甲斐がありそうです。集まったら今度は発信の仕方として、四コマ漫画にしてみるとか、動画を作ってみるとか、今日のネット時代を生かすような工夫もあるともっと良さそうです。
地元民として慣れてしまった自分の限界を超えて見せてほしいものです。
【丘陵に立つ風車群】