以前本州でサッカーをしていた知人から、「北海道のチームと試合をしていると、こちらが相手を抜いたときに『止めれー!』って言うんだよな」と笑われたことがあります。
そう言われると確かに北海道方言の一つとして、命令形の最後を"れ"にすることが多いのに気がつきます。
「止めれ(とめろ)」「片づけれ(かたづけろ)」「食べれ(たべろ)」などなど、そうした例は枚挙にいとまがありません。
本州の友人から「止めれー」を笑われたときは、(田舎くさい方言なのかな)と恥ずかしい感じになったものですが、そのいわれや語源はずっとわからないままでした。
それが先日とある図書館で手に取った北海道方言の本の中に興味深い記述がありました。
それは初期の北海道の入植者に対して聞き取りをした記録だったのですが、東北からの入植者が「なぜ"とめろ"ではなく"とめれ"と言うのですか」という問いに対して「"とめろ"は田舎くさい下品な言葉だから使うな、と言われたので"とめれ"と言っています」と答えていることでした。
その回答者は「本来ならば上品な言い方は"とめよ"なのですが、そう言わずに"とめろ"と言うなんて下品だと思います」と言っているのです。
なるほど、今では標準語が"やめろ"になってしまったためにそこから外れた表現は地方の田舎くさい方言として貶められていますが、元々はそうではなかった、という話はとても面白く感じました。
言葉は生き物なので、時代とともに感じられ方が変化することは良くありますし、この歳になると若者言葉がわからないこともしばしばです。
その時代に上品でも時代とともに下品になったり、あるいはその逆もある。
言葉って難しいけれど面白い。