北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

正義の味方の増税派はどっちだ?

2010-01-18 23:42:41 | Weblog
 いよいよ今日から始まった通常国会は、冒頭から与党のカネの問題で大荒れが予想され、マスコミはひたすら騒動を煽るだけのようにも見えますが一体どうなることでしょう。

 政権交代の原因となった自民党などによる行き過ぎた市場主義のお陰で、経済のあちこちにきしみが出ているのですが、国会審議の中でそうした問題は語られるのでしょうか。


---------- 【ここから引用】 ----------
【ロイター】市場原理主義から財政再建へ
 http://jp.reuters.com/article/kyodoPoliticsNews/idJP2010011801000910




 自民党が24日の党大会に諮る新たな綱領の原案が18日判明した。行きすぎた市場原理主義の反省から、従来の「小さな政府」路線を軌道修正し財政再建を基本政策の柱に据えたのが特徴だ。

「政治主導という言葉で少数意見を無視する独裁的統治と対峙する」などと、民主党への対決姿勢も鮮明にした。伊吹文明元幹事長が座長を務める新綱領策定委員会でさらに文言を詰め、党大会での承認を目指す。

    ※    ※    ※    ※

【YOMIURI ONLINE】行政刷新相「消費税上げ、11年度税制改正で」 
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100106-OYT1T01048.htm




 仙谷行政刷新相は6日、東京都内での講演で、今年末までに決める2011年度税制改正で、消費税率引き上げを含む税制の抜本改革を実施すべきだとの考えを表明した。


 仙谷氏は11年度予算の財源確保について「消費税はもちろん、法人税も所得税も新しい発想で臨まなければ(11年度)予算編成が出来ない可能性もある」と指摘した。「人口減少、超高齢化社会の中で、現役世代に大きな負担をかける仕組みはもたない。消費税を20%にしても追いつかない」とも述べ、増大する社会保障費の財源を確保するためには、消費税率の大幅引き上げもやむを得ないとの見方を示した。

 この後、国家戦略相の兼務が決まった仙谷氏は同日、記者団に対し、政府として、今年夏までに、中長期的な財政再建の目標を設定する意向を示した。

(2010年1月6日21時24分 読売新聞)


---------- 【引用ここまで】 ----------

 小泉さんから安倍さんにかけて「小さな政府」の名の下に市場原理主義を押し進めたのは明らかに自民党の失政でした。

 「トリクルダウン理論」という言葉があります。トリクルダウン(trickle down)とは徐々に流れ落ちるという意味。

 経済政策用語としては、、政府のお金を公共事業や福祉などで国民(特に低所得層)に直接配分するのではなく、大企業や富裕層の経済活動を活性化させることによって、富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、国民全体の利益となることを示したものです。

 これは新自由主義を標榜したアメリカのレーガン大統領が、いわゆるレーガノミックスと呼ばれる積極財政政策を行った時に取られた政策で、富裕層の所得税を大幅に引き下げることの根拠として用いられました。

 その後アメリカ経済は一見持ち直したかに見えたために、トリクルダウン効果があったという評価を得たのですが、その後のさらなる分析ではアメリカ経済の持ち直しは金融政策が効いたのではないか、ということになっているのだそう。

 結局トリクルダウン効果は単なるレトリック(単なるキャッチーな言い回し)に過ぎない、という評価に落ち着いているようです。

 ところがそんな古着を、人々が忘れた頃にたんすの奥から持ち出してきて国民に着せようとしたのが小泉~竹中ラインから安倍さんの時代というわけです。

    ※    ※    ※    ※

 その後経済危機が日本を襲い、その頃になってようやく与党でも社会保障の増大に対する国策のあり方がまずかったと気づくことになります。

 そのため、安倍政権に続く福田政権では「消費税を福祉目的税とする」と福祉の充実を明確に打ち出し、さらに麻生政権でも「景気回復を前提に消費税を上げる」と言い、社会保障の充実のためには増税を始め国民負担の増加をお願いしなくてはならないという方向に舵を切っていたのです。

 一方当時野党の民主党は、「消費税を上げるとは何事だ!」、「まだまだ行政には無駄が多いではないか、まずはそれを洗い出す」というスローガンで国民の支持を得ることに成功しました。

 これから国会で審議される来年度予算では、子供手当などの直接給付などを始めとした所得移転が萌芽を表しつつありますが、こうした政策で必要な財政の立て直しについてはまだ明確な方向性が打ち出されていません。

 しかし、増税や国民負担の増大は単にむしり取られるという現象だけではなく、医療や介護、年金、教育などが低所得でも安心して受けられるという安心感を買うための必要経費でもあるのです。

 慶応大学の権丈先生は、「これからの政治家は、社会保障を充実させるために国民負担をお願いしますと言える人や言える政党がホンモノだ。そういうことを言う政治家を落選させないような国民運動が必要だ」とおっしゃっています。

 政治的力学は、片方がある政策を打ち出せばもう片方はその旗を取れないという妙な力が働きやすいところ。

 そろそろ与野党共に、低所得者層への適正な所得移転を行うためには増税や国民負担の増大が必要だという観測気球を上げ始めました。

 この増税の旗をどちらが取り、それで政権を取れるのか、はたまた増税派はやはり政権を取れないことになるのか。

 そろそろ国民にも現状への丁寧な説明と、それでいて本当に将来を考える国民が出てくるのかを試さなくてはならない時期が近づいています。

 国会での与野党の攻防よりも、そんな静かな攻防の方が日本の将来に大きな影響を与えるのですが。 
 
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