北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

マメイカセラピー

2017-10-21 23:29:54 | Weblog

 

 東京の知人から朝チャットが届いて、「今日はどう過ごすの?」と言うので、「午後にマメイカ釣りにでも行こうかと思ってますよ」と返事。

 すると、「釣りってそんなに楽しいの?」と来たので、「釣りをしていると頭の中がそれだけになるので、悩みなんか飛んじゃいますよ。胃の傷みはたいてい治りますね(笑)」と返しました。

 彼は「面白い、マメイカ釣りで健康になるならマメイカセラピーだね(笑)」と絶賛。しかしその次には「だけど僕は釣りキチの気持ちは分からないなあ」とも。

 自分なりの健康法を多様に持っているというのは素晴らしいことなんですがね。

          ◆ 

 そんなわけで、午後三時くらいから小樽港のフェリー岸壁でマメイカ釣りをしてきました。

 先行していた友人からは、「サバもマメイカも釣れてるよ」と、焦らせるようなメールが届いて、気もそぞろに小樽へと車を走らせました。

 残念ながら到着時にはどうやらサバの時間は去っていたようで、マメイカ釣りに切り替えました。

 開始10分ほどで、待望の今シーズン初マメイカをゲット。(これは幸先が良いぞ)と思ったのもつかの間、そこからがなかなか来ません。

 次に来たのは1時間後、だんだん夕暮れが迫り、夜になると周りも皆、投光器をつけながらさらに釣りに没頭。

 こちらもぼちぼちは釣れるのですが、すぐ左隣に座っている地元の方と思しき人は、海底にじっと垂らした状態で、すっすっと次々にイカを釣り上げます。

 こういうイカ釣りもあるんだなあ、と勉強になりました。

 結局、5時間でマメイカ10パイ。効率は悪かったけれど、マメイカ釣りの感触が手に戻ってきて、楽しい時間でした。マメイカセラピーという言葉がぴったりです。

 一緒に行っていた友人からは、サバを二本分けてもらってこれまたラッキー。

 さて、これからは吹雪になるまでマメイカの季節です。冬のためにたくさん釣って冷凍しておかなくちゃ。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

歴史の裏話 ~ 釧路のラムサール条約国会議の思い出

2017-10-20 21:16:22 | Weblog

 

 釧路市役所時代に、部長として私の仕事の多くを支えてくれた、鈴木信さんが昨日、職場を訪ねて来てくれました。

 久しぶりの挨拶と四方山話の後で、「実はこれを差し上げようと思いまして」とカバンから出したのは、一冊の冊子で、タイトルは「ラムサール条約釧路会議『四方山話』」とありました。

 ラムサール条約とは、1971年に制定され1975年に発行した、湿地の保存に関する国際条約のこと。

 釧路市では、釧路湿原を1980年にラムサール条約登録湿地とし、それから湿原を生かした総合計画を策定し、さらにその流れから釧路湿原が国立公園になる、という歴史があります。

 それまで邪魔者と言われたような釧路湿原を、邪魔ものではなく地域の宝物だと考えを変えたことが、今日の釧路市に繋がっていて、国際会議であるラムサール条約釧路会議は1993年に釧路で開催され、大成功を収めました。

 
 鈴木さんは、当時何でもやる企画課の一番の若手として勤めていたときに、当時の鰐淵釧路市長の下でラムサール条約締約国会議開催を担当することになり、当時の上司の指導を受けながら、この会議の成功までを見届けた一人。

 ところがその一人だと思っていたら、もう当時のラムサール条約会議の苦労を知っているものはもう誰もいなくなっていることに気が付いたのだそう。

 実は鈴木さんは、ラムサール条約会議成功の立役者だったのですが、積極的にこのことを話すことを封印してきたのだそう。

 この本の中にもそのあたりのいきさつが書かれています。

「自分がこうした状況に有頂天になって浮かれ舞い上がり、そうした態度を見せることは、釧路会議の価値を貶めることに繋がるのではないか…」と考えたからだそう。

 しかしそういうことを話さずにいたなかで、今や釧路市役所の若手の中にもラムサール条約を開催したということを知らない者が増えてきた、ということもあり、当時の雰囲気などを平明な文章で残しておく必要があると考え、ご自身で冊子にまとめることを決めたのだそう。

 当時のエピソードとして、ラムサール条約事務局としては、ヨーロッパが中心になって参加登録している湿地保護の条約を、アジア各国へ広げるためには、アジアでの会議の開催が必要と考えていたこと。

 ところが、日本政府としては、条約の締約国会議のホスト国となるのは、戦後一度しかなかった、ということで、こうした会議を開催することに慎重になっていて、ここを突破することに非常に苦労をした、ということがあったのだそう。

 輝ける成果の黒子として活躍した目から見た、ラムサール条約会議の裏話をじっくりと楽しませてもらいます。


「せっかくなので御本に何か一言書いてください」とお願いすると、ちょっと考えて「地域の宝を世界の宝に」と書いてくれました。

 釧路での日々を思い出して懐かしくなりました。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ネット販売と自販機の合わせ技とは ~ だし道楽の自販機みっけ!

2017-10-17 23:48:07 | Weblog

 

 朝、通勤途中に見慣れない自販機があるのに気が付きました。

 何気なく通り過ぎた後に、知人からのSNSで『だし道楽』という"だしの自販機"だと知りました。

 自販機をまじまじとみると、売っているのは二種類の商品で、ひとつは"焼きあご(焼いたトビウオ)"いりのペットボトルで、もうひとつは宗田節いりのもの。

 面白そうなので「焼きあご入り」のものを買ってみましたが、一本700円とは結構なお値段です。

 ボトルをよく見ると、本当に中にアゴと呼ばれるトビウオが一本入っていて、かなりのインパクト。

 正しくは"だし"だけではなくて、正しい名称は「しょうゆ加工品」となっています。そのため、糖類やアミノ酸なども入っていますが、そのまま薄めればすぐにうどんのつゆやおでんのつゆにもなるそうです。

 調べてみると、作っているのは広島の(株)二反田醤油という会社なんだそう。もっぱらネット販売が中心のようですが、札幌には3台の自販機があるそうです。

 従来の売り方だと、運ぶ流通や在庫を置いてくれるお店を探す手間や、仲介料がかかりますが、ネット販売が中心だとお店はいらないし、仲介料もかからないのでしょう。

 しかしそれでは現物がなかなか身近になくて知っている人が広がらない…、となると、それほど大きな投資をせずに現物を売ることができるのが自販機という手法にたどりついたのだと想像されます。

 実際そうやって買った私がここにいるのですが、ネットショップと自販機の合わせ技とはなかなか面白いですね。

 買って家に帰ると、テレビのニュースでやっていたとかで、妻もとっくに知っていました。さてどんなお味でしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋の最後の贈り物かな

2017-10-16 23:29:05 | Weblog

 

 昨日はベランダのプランターや、小さな庭に植えた作物の片づけをしました。

 今年の夏も大いに楽しませてもらいましたが、さすがにもう枝の上のトマトも赤くはならない季節になりました。

 青いままのトマトを収穫しましたが、漬物になるとも聞きました。本当かな。


 そんななか、庭の片隅に放っておいたシイタケのホダギから、大きなシイタケが4つも生えているのを見つけました。

 思わぬ秋の贈り物でしたが、夜に焼いてバター醤油でいただきました。

 もう少し真面目に世話をすればもっと採れたかもしれませんが、来年に向けた楽しみができました。

 最後に、鉢植えのパセリは、そのまま部屋の中に入れてもう少し食卓をにぎわせてもらいます。

 遊びながら食べる、というのもなかなか面白い。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

たかがアダプタ一個なのに悩むわ

2017-10-15 23:55:55 | Weblog

 スマホを新しい機種に交換したのは良いけれど、充電のための差し込み口が変わりました。

 電圧や電流に関しては以前の充電器がそのまま使える、というのはまだ親切ですが、スマホへ差し込むには従来のアダプタの先に白い変換アダプタ(microUSB→TypeC)をつけなくてはならなくなりました。

 今までは旅先や車の中など、様々なシチュエーションでも充電ができるように、USBからスマホへ電気を供給するために何個ものケーブルを購入してきました。

 最近はこの手のケーブルが百円ショップでも売られていて、それなりに使えるので、何個も買ってそこら中に置いていたりしたのですが、今回のアダプタはお値段が一個700円~900円ほどするらしく、まだおいそれと買うわけには行きません。かと言って、こんなに小さなアダプタを四六時中スマホと一緒に持って歩くのも大変です。

 財布に入れてもかさばりそうだし、スマホと一緒にしておくにはどうしましょう…と、散々思案して思いついたことは『スマホのストラップにつけておこう』というもの。

 幸いアダプタには小さなストラップホールがついているので、ここに釣りで使う細いラインを縛りつけ、ラインのもう一方をストラップに縛り付けました。こういうときに、釣りのスキルが役立ちます。

 縛り付けたまでは良いのですが、ブラブラしても困るので、百円ショップへ行って、女性が髪を束ねるときの幅の広いゴム紐を買ってきて、これをストラップに三重巻きにし、この中に押し込めました。

 アダプタを使わないときはストラップと一緒に縛り付けておいて、充電のときは取り出して本体に差し込むのです。

 これって、きっと悩む人が多いはずだから、アダプタを入れられるようなケースが一体になったストラップを作ると売れるんじゃないかな。その時は特許料の一部をよろしくお願いします(笑)

 もっとも、アダプタも大量に市中に出回れば、百円ショップでも安く売られるようになるかもしれませんがね。


 身の回りの電化製品って、本体の性能アップは購買意欲をそそりますが、周辺小道具の使い勝手や、関連小物の持ち運びも、購入意欲にどう貢献はたまたマイナスに作用するかを考えてみることって重要なんですよね。

 小さなアダプタ一個なのに、この扱いって結構大変です。皆さんならどうしますか?

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スマホ、替えちゃいました

2017-10-14 23:17:55 | Weblog

 

 一昨日判明した、スマホの通話の劣化を受けて、早速近くのドコモショップへ行ってきました。

「通話の相手から音質が悪いと言われるのですが…」と説明をすると、担当してくれた女性は、「では実際に電話をしてみましょう」と言って、電話で会話をしてみたのですが、それほどひどいというほどではない、と言います。

 ところが機種変更も含めた話をしていくうちに、「お使いの機種もこのお値段で下取りできますよ。ただ壊れていなければ、ですが」とのことで、もし私のスマホの通信不良が故障とされると下取り価格にも影響するかもしれないとわかりました。

 それに、今さら古い機種を修理して使い続けても、OSであるandroidはバージョンアップしていますし、各種のアプリもどんどんバージョンアップしています。

 もう古い機種を使い続けるメリットも少ないと感じて、その場で機種変更を決めました。

 同じソニー製の新しいモデルにしましたが、大きさが二回りも大きくなったように感じます。

 
 機種変更をしてみて、友人知人に電話をしてみましたが、「確かに音質が格段に良くなりましたよ」と皆、やはりある程度、私の電話が聞こえにくいことを感じていたようでした。やれやれ。

 とりあえず機種を変えてみましたが、再び各種のアプリを入れなおして、IDとパスワードを入れなおします。

 手間はかかりましたが、まあ3年に一度は仕方のない作業でしょうか。

 IDとパスワードをちゃんと管理しておくと、こうしたときにもスムースな対応ができます。

 

 ちょっとした不具合があったら、うじうじして時間を浪費せずにすぐに対応を考えて行動に移しましょう。

 健康のことなら病院へ行く。

 身の回りのことなら詳しい知人やお店に相談する。

 物が壊れたら直す。

 汚れたら掃除をする。そうした些事をおろそかにしないことこそ、「生涯学習的生き方の実践」ということなのだと思います。

  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

歯科衛生士さんも驚くきれいな歯

2017-10-13 23:49:12 | Weblog

 通っている歯医者さんでは、月初めの診療時に歯を薬品で染め出して、汚れをチェックしてくれます。

 もう一年以上通う中で、どのあたりが汚れるかが大体わかってきたので、そこを集中して磨くように心がけてきました。

 今日も一生懸命に磨いてから歯医者さんに行きましたが、歯科衛生士さんから「どうですか?」と訊かれて「今日は自信がありますよ(笑)」と答えたのですが、その言葉通り、驚くほど良い成績になりました。

 汚れ具合によって黒塗りの度合いが強くなる説明図には、黒塗りがわずかに1マスだけ。

 歯科衛生士さんも、「あら、本当!すごくきれいに磨けていますね」と喜んでくれました。

「その気になれば、ここまできれいにできる、という感覚がようやく身につきました」
「そうですね、旨く磨くのに意識していることはあるんですか?」

「道具です、道具!専用の歯ブラシをちゃんと使って、汚れにちゃんと歯ブラシを当てれば汚れは落とせるという事がわかって、やっとそれがうまくいきました」


 私の場合、三種類の歯ブラシを使って歯を磨いています。

 左から、ワンタフトブラシ、基本的なフラット歯ブラシ、一番左は毛先が細くなっているデンターシステマ。

 なかでも一番効果があるのはワンタフトブラシで、これで歯と歯の間を良く磨くとしっかりと汚れが落ちてくるのです。

 この3本を駆使して表も裏も、歯と歯の間をしっかり磨いて、歯周病を防ぎましょう。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

え?電波が悪いんじゃないの?

2017-10-12 23:47:19 | Weblog

 

 最近、職場の部屋で仕事をしていて電話が来るときにどうも通信音声の品質が劣化していることに気が付きました。

 オフィスの部屋はビルの中にあって、周りもビルに囲まれていることから、(電波の具合が悪いのだろうな)と思って、電話が来るとオフィスの中を移動して別の部屋へ行ったり、外へ出たりして会話をしていました。

 あまり頻繁に動き回るので、オフィスの女性たちが、「専務、なぜそんなに動き回っているんですか?」と不思議そうに訊いてきました。

 そこで「この周りって電波が悪くない?会話がうまく聞こえなかったりするんだよ」と言うと、「そんなことありませんよ、私のスマホならちゃんと聞こえますもん」。

「ほんと?じゃあ部屋からあなたのスマホに電話してみるよ」と、自室から電話をしてみると、「え~?モワモワして声がちゃんと聞こえません」とやっぱりうまく会話ができません。

「ほらね?」「いや!これ変です。じゃあ私のスマホで専務の部屋から電話してみてください」

 すると、ちゃんと会話ができるのに、私のスマホからの声がモワモワして異常な様子。

「これって、専務のスマホがおかしいんじゃないですか?」


 思い起こすと、自宅から実家へ電話するたびに、母親が「う…ん?なんだかよく聞こえないよ」と言っていたのですが、ずっと老親宅の電話が古いせいだと思っていたのでした。

 それもどうやら自分のスマホの不調が原因らしいと分かって、ちょっと落ち込んでます。

 スマホを修理に出すか、新しい機種にするべきか…。

 やれやれ…。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寛容の精神とはなにか

2017-10-11 23:44:44 | Weblog

 痛ましくやるせない事件がわかりました。

 東名高速道路での追突事故は、パーキングで駐車の仕方を注意された男が逆恨みをして、追い越し車線で無理やり停車させた末の事故だったのだと。

 一瞬にして両親を失った二人のお嬢さんの気持ちを思うと胸が潰れそうですが、それでもこの二人が警察に事情を話して、犯人が捕まったというので、よく頑張ったなあと思います。

 それにしても、このような軽率で後のことを顧みない行動を法律はどのように裁くのでしょうか。結果的に起こしてしまった悲しい事故に見合うのはどのような量刑なのか、注目しておきたいものです。


 しかし実際には、世の中には、こういう傍若無人な輩はいるものですし、腹の立つような行為もあるものです。

 注意をすることで、社会のルールと常識に気が付くようにして、相手の考え方と行動を変えるというのは正義感の発露ですが、そういうことってあるものだ、と達観して関わらないというのは寛容の精神なのではないか、と私は思います。

 物事を自分の価値観で判断すると、自分の価値観に合わないものを"排除"したくなるものですが、それをしないのが寛容の精神。
 
 車を走らせていると、前方の車との狭い車間距離の間に入り込もうとウィンカーを出してくる車がいたら、入れてやろうではありませんか。道路は自分だけのものではないし、相手にもなにか事情があると考えれば、腹も立たないでしょう。

 簡単に腹を立てないというのは、この息苦しい社会の中で、結構役に立つ処世術です。

 困っている人がいれば助けてあげれば良いけれど、眉をひそめるような危うき者には近寄らないのが君子たるものの振る舞いです。

 それは臆病ではなく、寛容の精神なのだと理解すれば良いのです。


         ◆ 

 

 政治は数が力だけれど、我々は寛容の精神を持って、「あるある」「いるいる」と思うようにしてはどうでしょう。

 私は、そう思えた時に、ちょっとだけ視点が高くなったような気がしていますが、どうでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

羊の気持ちを尊重するか ~ 塩野七生著「逆襲される文明」を読む

2017-10-10 23:59:00 | Weblog

 

 「ローマ人の物語」で知られる、ヨーロッパの歴史小説家塩野七生さんの最新刊「逆襲される文明~日本人へⅣ」(文春新書)を読みました。

 文芸春秋の2013年11月から2017年9月号に、塩野さんが書いているエッセイを集めた新書。

 普段はイタリアに住んでいて、ヨーロッパ特にEUの混乱ぶりを目の当たりにしている著者が、ヨーロッパについて評論するとともに、日本に帰国した際に彼我の差を観て、日本を評論したエッセイの数々は、長く歴史を見て考え抜いた著者ならではの視点が新鮮です。

 著者の塩野さんは、今執筆中の『ギリシア人の物語』の第三巻で作家生活が50年になるのだそうで、「本格的な、つまり勉強して考えてその結果を書くという歴史エッセイは、これで終わりにしようと決めた」とこの本の中で書いています。

 ローマ、ベネツィア、十字軍そしてギリシアと書いてきて、最近著者は「五十年間西洋史を書いてきて、何を学んだのかと考えるようになった」と言っています。

 真の勉強とは、答えを教えてもらうことではなくて、人生の過程の中から答えを自分なりに見つけることなのです。

 塩野さんが特に『ギリシア人の物語』三部作を書きたいと思った動機は二つあるそうで、一つは古代のギリシア人を分かりたいと思ったことで、二つ目は、彼らの創造した政体である民主制が、なぜある時代には機能し、なぜある時期からは機能しなくなったのかを分かりたいと思ったから、なんだそう。

 古代ギリシアのアテネが良き民主政から衆愚政に変わった境目は偉大な政治家であったペリクレスが死んだこと、というのが定説なのだそうですが、一夜にしてアテネの民衆が愚か者になったわけでもないだろうに、というのが著者の素朴な疑問。

 そしてその思いは、「要するに『民主主義』と言えばそれだけで問題が解決すると思い込んでいる人々への疑問を、書いていくことで晴らしたかったのだ」と書いています。

 そうか、買ってあったけれどまだ読んでいない「ギリシア人の物語」をようやく読む気になってきました。

 
          ◆ 


 塩野さん自身、かなり率直な物言いをする方なので、思ったことをズバズバと書いていますが、文体に品があるのと、スパイスのようなユーモアを忘れないので、読後感は爽やか。


 『民主政が危機に陥いるのは、独裁者が台頭してきたからではない。民主主義に内包されている欠陥、(つまりは根源である権利の平等ということ)が表に出てきたからなのです』として、"リーダー国があってはならない"とされているEUのシステムは、指揮命令系統が不明確で責任が誰にあるかもわからない、という点で民主主義の欠陥品のようだ辛辣に批判しています。

 「民主主義を唱えていれば民主主義は守れると信じている善男善女は、羊の群れを柵の中に入れるには羊一匹ずつの自由意思を尊重していてはいつになっても実現せず、羊飼いが追い込んでこそ実現するのだという事実を、考える必要もないし考えたくもない、と思っているのであろうか」とも。

 どのような政体であろうとしっかりしたリーダーが必要だ、という歴史の現実を思い起こす必要がありそうですね。


          ◆  


 著者は、日本で議論されていた軽減税率は良策とは思っていないと述べたうえで、消費税について独自の提案をしています。

 それは、「ある地方は消費税が10%でもある地方はその半分、というような政治もありではないか」というもの。

 税が半分にすることで、その土地に人が住んで経済が活性化することを導くことこそ政治の領域だ、というのです。

 
 選挙が始まった今の時期なので、余計に政治と言うものを塩野さんがどう感じているかが印象に残ります。

 この本を読んで、語られている多くの政治的課題のうち、歴史に残るようなテーマは何かを長い時間的俯瞰を感じながら眺めると、ちょっと心が落ち着いてくるような気がします。

 がちゃがちゃした言葉の投げかけあいは置いておいて、自分なりの頭を整理するためにも良い一冊です。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする