こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『三人書房』柳川一

2024-06-21 19:53:55 | 読書感想
 
平井太郎、のちの江戸川乱歩が大正八年に本郷区駒込団子坂に弟二人と開いた古書店《三人書房》
その店には、なぜか変わった謎が次々と持ち込まれて・・・。

同時代の作家や画家も登場しそれが好きな方だったりすると、ついつい前のめりに読んでしまったりします。
もちろん、実在したかどうかも分からない探偵小説好きの女学生、青山梅などの行動や考え方、生きづらさに共感したり、彼女の生活背景と共に時代背景も感じながら読むのが楽しかったです。

どこまでが史実で、どこが創作なのか、当時実在した著名人の日記や手紙などの情報を調べたらいくらかは分かるのでしょうが、私自身は調べようとするまでの勤勉さはないので、熱心な方にお任せしたいと思います。ごめんなさい。
例えば、黒岩涙香がゴシップ紙で稼いでいたとか・・・気にはなりますが、どうなんでしょうね?
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『100年のレシピ』友井羊

2024-06-17 19:46:16 | 読書感想
 
2019年、大学二年生の磐鹿理央が恋人に振られた事をきっかけに通い始めた料理学校で思いがけない出逢いをし、そこから取材で時を遡る。

日常の謎を扱うミステリで一つ一つは些細な不思議なのですが、終盤においてそれらにも大きな縁がある事が分かり、大団円になるところに大満足しました。
最後にあるメッセージが残されますが、いつ届くのかなあ?
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『切断島の殺戮理論』森晶麿

2024-06-16 20:15:00 | 読書感想
 
大学四年生までそこそこの成績で世渡り上手に暮らせればよいと思うような青年だった岩井戸泰巳は、正に四年で講義をとった槇原カノンに一目惚れ。
最前列で講義を受けるようになった上、そのレポートのために大学図書館で一冊の本を読んだことをきっかけに能力以上のものを書き上げる。
それが彼女の目に留まり、その共同研究者である桐村悟のフィールドワークに同行する事となった。

なーんかその行き先が国が存在を隠している絶海の孤島というだけで怪しいですよね?
しかもその島にすむ住人の風習が、16歳になると片目や片手、片足など、どこかしらを意図的に切断などによって欠けさせるというのですから、胡散臭いです。

もうこれは逃げ場のない殺人事件の現場に他なりません。
さらに、ミステリと共にファンタジーかホラーの要素もあったりして、怪しさ大爆発です。
美と醜、善と悪、正気と狂気が共存する不安定さが恐ろしくも魅力的な物語でした。
森さんの美的感覚や論理がお好きな方には、特におすすめです。
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『地球へのSF』日本SF作家クラブ編

2024-06-10 20:34:48 | 読書感想
 
「地球へのSF」をテーマに、様々なSF作家らが短編を寄せたアンソロジー。

冒頭は昔の中国でのあまりにも報われない善良な賢者たちの悲劇で、続く話はコロナ禍における日本で、散歩しながらあれこれと物思うという真逆とも言える物語なので、思考の切り替えが必要でした。

読んでいくと詳細なテーマは違いながらも、中心は人類から始まり多彩な展開ながら、同じように人類の愚かさや傲慢さ、罪深さを考えざるを得ない物語になりますね。

それは個々人から政府、大きくは人類全体に至るまで共感しつつ自己批判も感じて、考えさせられる本でした。

人類と言っても大きなスケールのものもありますので、ホモサピエンスだけではありません。
お薦めです。
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『キッチンつれづれ』アミの会

2024-05-27 20:10:42 | 読書感想
 
思いがけずお向かいの家のキッチンと窓越しに向かい合わせになってしまったアイランドキッチン「対面式」
料理を科学実験のように行う姉を持つ、ひと回り年下の妹が家族に隠し持っている思い「お姉ちゃんの実験室」
公民館で月一回開かれている男性の料理教室に関わる不名誉な噂「春巻きとふろふき大根」
今回の「キッチン」というテーマにおいて、一番シリアスでここまで社会の暗部を描くかと思った「限界キッチン」
そしてこのアンソロジーを毎回選んでいる理由のひとつである矢崎存美さんの書く「黄色いワンピース」も、社会問題のひとつに突っ込んだものでした。

ここでは取り上げていない作品も、このテーマでこう来る?というような様々な話を語って下さっており、バラエティに富んだ素晴らしいアンソロジーです。
言うまでもなく、美味しいものが大好きな方々にも強くお薦めします。
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