こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『疫病の世界史』(上・下)フランク・M・スノーデン

2022-04-09 19:54:54 | 読書感想
 
 

この本は、疫病、つまり感染症を主に西洋の歴史と並行して描いています。

医学の歴史としては、神の業と悪霊の仕業を経て生まれた紀元前五世紀のヒポクラテス医学から始めていますが、実際の感染症としては、五四一年のペストから扱われています。
そして、ペストから天然痘、結核、ポリオ、発疹チフス、赤痢、黄熱、HIV/エイズ、エボラ、新型コロナウイルスの初期を取り上げています。

特に面白く、知らなかったのは、ナポレオン戦争の敗因が冬将軍だけでなく、赤痢と発疹チフスのためだったという事。その前にもハイチでの独立戦争鎮圧のために、軍の人々を黄熱病の犠牲にしてしまった事ですね。もちろん、フランス革命を起こした割には、奴隷を解放せず、むしろ引き続いて抑圧しようとしていた事もあります。

さらに、こうして何度も感染症にさらされてそれなりに予防法など学んだはずなのに、失敗を繰り返し、あろう事か感染症を封じ込められたと思ってしまった事が、今の新型コロナウイルスの拡散と犠牲者の増加に繋がっているという事を、今度こそは学ばなければならないのだろうなあ、と感じてはいます。

ただ、人というのが一生緊張を保つのは精神的に無理だろうとも思うので、どうしたものかとも考えます。専門家であっても、交代でウイルスの発生を見張って抑止しろというのも難しいでしょうしねえ。
コメント
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