こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『間の悪いスフレ』近藤史恵

2023-12-13 20:06:08 | 読書感想
 
ビストロ・バ・マル・シリーズも第4弾。
〈バ・マル〉もコロナ禍の厳しい時期に入っていきます。
そんな状況下をテイクアウトを始めたり料理教室を開いたりと、工夫しつつ乗り越えようとしています。

そして男子中学生が〈バ・マル〉テイクアウトをするだけならともかく、河原で一人で食べているという心配になる謎や、客の世間話で彼らの母親がある時期から家事に手を抜くように見えてきた理由など、今回も三舟シェフが様々な問題にいくらかの道筋をつけてくれます。

表題作はまさにタイトル通り間が悪かった出来事ではありますが、きっとこれくらいのずれなら話し合っていけば何とかなると希望の持てる話の展開でした。
巻末の他店のシェフの悩みも彼自身の考え次第で解決するでしょうし、とはいえこれに関しては三舟シェフの最後の一言にクスッと笑わせてもらえました。

7篇すべてが面白く、色んな意味で参考になりました。
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『青春をクビになって』額賀澪(※ミステリではありませんがネタバラシがあるかもしれません)

2023-12-08 20:27:56 | 読書感想
 
大学の日本文学科の非常勤講師である瀬川朝彦は、学科長から「来年度の契約更新をしない」と言い渡されてしまった。
途方に暮れつつも、母校・慶安大学の恩師、貫地谷先生にも相談に行ってはみたのだが・・・。

朝彦の同期で友人ながら二年前にポスドクから足を洗い、起業して何とか上手くやれているような栗山侑介。
母校の先輩で、今では大学に住み着いているという噂の小柳博士先輩。
そして栗山の会社がやっているレンタルフレンドのバイトで出逢った、様々な立場で色んな状況に置かれた人々。

それぞれが日々を誠実に一生懸命に生きているはずなのに、片や安定した生活で少なくとも衣食住に不安のない状態におり、片や非正規雇用で明日の方向性も見いだせなくなったりもする。
それは、ほんのちょっとしたボタンの掛け違いかもしれないのに、足りている人々は「努力が足りない」と、見下したりもする。

あまりにも理不尽で、虚しさと憤りを覚えました。

ただそれでも、何とかより良い未来をつかもうとあがいている様は、尊いと思いました。

あと小柳先輩についてですが、私としては彼はきっと思い出の地に再訪して、心の整理をつけて戻って来るつもりだったのではと感じています。
そうでなければ、蕎麦屋でのあの発言とその後の行動は無かったと思いますから。
とても切なかったのですが、せめてそう信じたいです。
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『書架の探偵、貸出中』ジーン・ウルフ

2023-12-05 20:12:27 | 読書感想
 
図書館が著者のリクローンという蔵書ならぬ蔵者を収蔵している世界で、スパイス・グローヴ図書館にいるその一人、アーン・A・スミスが、今回、図書館相互貸借のタグをつけられて他の図書館に送られる事となった。
『書架の探偵』の続篇であり、借り主の少女チャンドラから父親探しを頼まれ再会したと思いきや!と、なかなかハードな始まりばかりか異世界への冒険のとっかかりがあったり、氷穴探検があったりとワクワク要素満載なのに遺作であり未完だなんてー(泣)
どなたかこの作品の世界観を壊さずにつじつま合わせもしつつ、納得できる仕上がりの物語にしていただけないでしょうか?
面白そう!と思ったところにこの「未完」の仕打ち!つらすぎます。
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