prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「バリー・リンドン」

2007年10月04日 | 映画
映画全体が名画、美術、名曲そのもの。

蝋燭の光だけで撮影された室内シーン、男でも白塗りでつけぼくろするメイク、一斉射撃に対して逃げも隠れもしないで行進していってばたばた倒れる戦闘シーン、など普通だったら映画的に「リアル」にアレンジするところを、考証的にリアルにしすぎて逆にシュールとも何かの冗談みたいとも見えてくる、およそ例のない作り方。
人が心臓発作を起こして死ぬ前に平然と死亡報告書をナレーションで読み上げる冷徹なセンス。

不思議なことにキューブリック作品全般に言えるが、劇場公開版、VHS版などはモノラル音声だったのが、DVDではステレオ音声になっている。「フルメタル・ジャケット」の頃までモノラルで、しかも劇場公開時、ドルビー時代に完全に入っていたのにドルビーではなかった。ドルビー使うとどんな音使うかドルビー社に指定されるのを嫌ったから、なんて説あったけれど、ホントかな。DVDはドルビー仕様になってます。

「グレン・ミラー物語」が初公開時は映画館の設備が追いついていなかったのでモノラルで公開し、別にステレオ音源を保存しておいてリバイバルの時はそっちに差し替えた、なんて例があるが、あちらでは映画を何十年も売れる商品として位置づけているが、日本では公開したら終わり、という時期が長かった(今でも怪しい)。
差は大きい。

ライアン・オニール扮するバリーは最初と最後では20年以上時が経っているはずだが、あんまりそういう風に見えない。一応頭は白くしているのだけれど。
オニールと、義理の息子役のレオン・ヴィターリ(この後キューブリックの秘書兼助監督になる)が、ともに左利き、と揃っているのが仇同士の役なので妙な感じ。

原作も読んだが、なんで映画にしようとしたのか不思議みたいなあまり魅力のない小説。

あまりキューブリック作品としては人気がないけれど、個人的にはベスト。
(☆☆☆☆)