prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「プラネット・テラー in グラインドハウス」

2007年10月10日 | 映画
金と手間をかけてわざと昔のB・C級映画のチープな作りを再現する、というのを映画オタクの稚気ととるか金持ちの道楽ととるかで見方が分かれる気がする。私はどっちかというと後者。
「デス・プルーフ」よりお喋りが少なくて見せ場が多い分、楽しめたが。

今はなきファンタスティック映画祭ででも見たら盛り上がるかもしれないが、女の片足がロケットランチャーつき機関銃になっている画など、バカバカしさが先に立つ。
メイキング見てた方がおもしろいんじゃないかと思ってしまう。安っぽい色の出し方やフィルムについたゴミの再現など、どうやってるのか知りたい気がした。

撃たれたゾンビ(なのかね)が水を詰めた風船みたいにぱんぱん盛大にしぶきを撒き散らしながら破裂するのは新趣向。「一巻紛失」といってストーリーがぽんと飛ぶのは笑った。

久しぶりに「ターミネーター」のマイケル・ビーンが出演、相変わらずいいところがありそうでない役どころ。それほど老けてないが、眉間のシワが深くなった。
ブルース・ウィリスはときどきよくわからない特別出演をするけれど、これもそう。何で出演を決めているのだろう。
(☆☆☆)


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プラネット・テラー in グラインドハウス - goo 映画

「プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー」 福岡 伸一

2007年10月10日 | 


プリオン説でノーベル賞を獲ったスタンレー・プルシナーの人間性に疑義をはさんでいる。
科学者といえども今は予算をぶんどってくる政治力・交渉力が要求されるのはご時世だけれど、ずいぶん強引でハッタリくさい自己宣伝家であることは確かみたい。仲間内で良く言う研究者がまったくいないというのはホントかな。
ただ、プリオン説は本当とは言い切れないけれど、代わる有力な説もないのだね。

分子生物学の研究の手順が非常に手間と費用のかかるもので、説が確定するのには十年単位の時間がかかるのが具体的に説明されていて、ため息が出るくらい。

「アメリカ政治の現場から」 渡辺 将人

2007年10月10日 | 


筆者がヒラリー・クリントンの事務所でアウトリーチ(政治的集団を取り込んでくる作業)にあたった体験記。アメリカが二大政党制といっても、それで政治家を見るのに保守か革新かといった二分法が通用するかというとまったくそうではなく、どんな人種・宗教・教育などのバックグラウンドによるかによってそれぞれまるで違うと数々の実例を挙げている。

気になったのは、日本生まれの日本人と、アメリカ人でたまたま日系というのに過ぎない人とではつながりもなく、共通するメディアもないので、マイノリティとしての日本人というのはアメリカでは政治的集団としての体をなしていない、という記述。これが政治的発言力の弱さにもつながっているわけで、中国系と比べてみれば影響力の差は歴然。

プロレスラー「肉体」の真実 ミスター高橋

2007年10月10日 | 
プロレスラー「肉体」の真実
ミスター高橋
宝島社

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プロレスは全部アングル(筋書き)がある、と暴露してプロレスファンを怒らせ普通の人をそりゃそうでしょと思わせたミスター高橋が、今回はプロレスラーの肉体の「鍛え上げ方」の非合理性を暴く。プロレスをよく見ていた時期、よくあんな真似して平気だなと思ったら、やっぱり平気じゃなかったのね。心臓疾患で四十台で死去しているレスラーの多いことに愕然となる。食生活や筋肉増強剤の副作用もあるが、心臓は「鍛える」ことができないからだ。

遠藤幸吉がレスラーはとにかく食べるからと有無をいわさずプロレスラーの収入の半分を税務署に必要経費で認めさせたというのにびっくり。


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大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す」 久坂部 羊

2007年10月10日 | 


書名を見ると週刊誌的に大学病院の内部を告発する内容かと思うが、実質はその反対に近い。

大学病院が一般の病院と違うのは、教育・研究という部門が治療部門とは別についていて、そのため未熟な若い医師のオン・ザ・ジョブ・トレーニングの場になっていることだ。それは次の世代の医療を供給するのに必須なのだが、当然一定のリスクを伴う。
それで事故が起こるとマスコミは袋たたきにするが、常にベテランが治療に当たるのは物理的に不可能だし、実践を積まないでベテランにはなれない。

筆者ははっきりと、必要もないのにいつもベテランの最高度の医療を求めるのは患者のエゴであり、マスコミの無責任なあおりのつけは必ず将来の医療や地方やマイナーな医科などにしわ寄せがいくと批判し、リスクがまったく伴わない医療はありえず、必要なのはリスクをゼロにしようとする不可能な努力ではなく患者と納得した形で合意できる保障制度だとする。

ここでの批判の対象は、むしろできもしないことを要求するマスコミと患者のエゴの方だ。そしてこの議論にはかなり説得力がある。

「USAカニバケツ」 町山 智浩

2007年10月10日 | 


上も下も金と色しか頭にない階層社会となったアメリカ(半日後の日本)のしょーもない実例のてんこもり。
特に、スポーツ選手の腐敗ぶりの記述は痛快。「格差」の象徴みたいな世界なのだが、マスコミはちやほやしかしないものね。

スーダン―もうひとつの「テロ支援国家」  富田 正史

2007年10月10日 | 


スーダンの政権はイスラム原理主義を奉じ従わない国民に対してほとんど絶滅政策をとっているにもかかわらず、アメリカはその首脳が訪問する時は特別機を用意する。
ビン・ラディンが滞在していたので、その時の情報をスーダン政府が握っているから、ともいうが、クリントン時代のテロに対する報復で首都ハルツームを空爆したため、石油資源の開発に乗り出せず、カナダと中国に先を越されたのを取り返そうとしているため、ともいう。あきれかえったご都合主義だ。

リーフェンシュタールの「ヌバ」はこのスーダンの人々だったことに思い当たる。同じ先進国のご都合主義の産物というか。

「オタク論!」 唐沢 俊一,岡田 斗司夫

2007年10月10日 | 


好きなことの知識に浸っているだけでは幼児で、理論化しないとオタクにはならない、という岡田説に従ってか、まことにリクツっぽい。
唐沢なをきが眠るのも仕事するのも椅子に座りっぱなしの生活習慣からして自分は六十半ば以上は生きない、とか、兄さんは自殺するなよ、とかマジメに言っているというあたり、冗談に聞こえない。

「言語的思考へ- 脱構築と現象学」 竹田 青嗣

2007年10月10日 | 


「言語の謎」というか、言葉は決して一義的に意味を決めることはできないという常識的には当たり前のことを、現代思想はああでもないこうでもないとわざと難しくこねくりまわして議論していたのを、発話者の「意」に対する信憑構造によって言語の意味は決まるとという現象学的還元操作を通して、形而上的「神学論争」を終わらせるのを目論んだ書。