prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「キング・コーン」

2009年12月18日 | 映画

ドキュメンタリーの作り手でいる若者ふたりが自分たちが作ったコーンを一口食べてベエッとなり、「おがくずみたい」とか「チョークみたい」と形容するのがまことにひどい。
どういうコーンだそれはというと、密集しても育ち収穫量がやたらと多く、でんぷん質を高めて直接食べるのではなく加工専門に品種改良かつ遺伝子組み換えされたコーンで、牛などの家畜のエサ用、コーンシロップとして甘味料をはじめポテトを揚げるコーン油に使われ、ジャンクフードはつまりこのコーンを食べているのと一緒というわけ。ベテランの農夫で一エーカーあたり五トンの収穫があるところを、ど素人の大学出たての若者でも四トンはとれてしまうという育てやすいコーンでもある。

若者たちがその甘味料をやはり自分で作ってみて、一口味見して吐き出していた。
もっともそこから作られたジャンクフードは好物なわけだが。

舞台になるアメリカ最大のコーン産地であるアイオワは、考えてみると「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台でもある。あれの当初予定されていた日本題名は、「とうもろこし畑のキャッチボール」だった。

本来なら草を食べる動物である牛がコーンばかり食べさせられるためアシドーシス(酸血症)にかかり、それを防ぐためにまた薬を飲ませるといった具合。実験のため胴体に穴をあけて胃の中身を取り出せるようにしてある牛というのは、何度見ても気持ち悪い。

なんでそんなコーンを作っているのかというとまさにアメリカの国策で、とにかく食料を増産し安く供給する。それによって食べ物以外の消費を促進するというわけ。キューバ危機のあと砂糖が入ってこなくなって、代用品の甘味料が必要になったせいもあるらしい。

安価な食料を輸出にまわすことで、他の国を支配下に納める戦略物資にもなるわけ。その結果がまさに今の日本だ。

行き過ぎた経済効率至上主義で、人間を含めた生物の身体がめちゃくちゃになっているのがまざまざとわかる。