エド・ハリスの監督・主演・共同脚本・製作の西部劇。
相棒役がヴィゴ・モーテンセン。女に血迷う主役をはらはらしながらサポートするルパン三世に対する次元大介的役回りで、やたら格好いい。
西部劇の女というと娼婦か主婦でなければレディ(荒野の決闘のクレメンタインとかね)というのが相場なのだが、へちゃむくれのレニー・ゼルヴィガーはそれなりに教養ありげ(ピアノは弾けるけどヘタクソ、というあたり、芸が細かい)な割に、そのときどきの一番強い男にくっついて生きのびる、しかもボスが代わった時に備えて他の有力な男にもあらかじめコナをかけてすぐ仲良くなってしまう、というのがリアルでおかしい。
モーテンセンだけひっかからず、娼婦と仲良くしているのがポイント。
舞台になる街の名のアルパーサ、というのは馬の種類なのだが、白地に青っぽい班が入っているのが肌から静脈が浮き立っているくらい極端に色の白い女性がそう喩えられることがあって、エロチックなニュアンスもあるらしい。
タフでやたら乱暴で、もっともらしい顔して本読んでいるくせに、しばしば失語症的にボキャブラリーが出てこないというハリスの保安官のキャラクターがおもしろい。
後半の展開のあれよあれよ的意外性の連続が楽しめるが、ラストはちょっと短兵急な感じ。
居留地を出て新天地を目指しているインディアン(わざとこの政治的に正しくない言い方をしています)が出てくるが、ちっとも哀れっぽくなくおそろしく気が立っているのが新しいところ。ニューシネマ風西部劇の辛気臭さはなく、野趣がかったユーモアが随所に散りばめられているのが魅力。裁判官どころか大統領までが相当にいいかげんというあたりもそれらしい。
便所で用を足している敵を押さえるのは「許されざる者」調。
西部の朝日がおそろしく早く上がってきて、あっという間に明るくなるショットは「荒野の決闘」を思わせる。
銃撃戦はやたらどかどか弾数を使わず、あっという間に終わるのが昔の西部劇的で切れ味がいい。
蒸気機関車が水の補給所で止まる定石を出してくるのもクラシック。
撮影は「ダンス・ウィズ・ウルブス」のディーン・セムラー。
(☆☆☆★★)