原作のコミックでは主役のドレッドは終始ヘルメットをかぶりっぱなしで顔を見せないのだが、スタローン主演版は大スターの顔を見せないわけにもいかないのでヘルメットをとったら原作ファンにすごい不評だったという(スタローンの特徴である曲がった口で誰だかわかるというギャグがあった)。
今回の映画化は原作に忠実にヘルメットをとらないが、とらなければとらないで他のジャッジとの見分けがつかず、事実混戦になって誰が誰だかわからなくなるシーンあり。区別できるようにヘルメットを血みどろにするとかへこみを作るとかすればよさそうなものだが。
監督のピート・トラヴィスは「バンテージ・ポイント」で複雑に時制が交錯する構成をうまくさばいていたけれど、今回の上下に伸びた空間の処理はどうも単調。
顔を見せなくていいというのはノースター映画でもあるということだが、その割りにIMDbによると製作費5000万ドルと相当にかかっていて、これまでの世界興行収入が3000万ドル。うーむ。
ドレッド役のカール・アーバンって何に出ていたっけと思って調べたら「ボーン・スプレマシー」の殺し屋、「RED/レッド」の若い方のスパイ代表、「ロード・オブ・ザ・リング」のエオメル(ローハン王セオデンの甥)、エイブラハムズ版「スター・トレック」のマッコイと、意外と脇ながらいい役でいいところを見せています。ただ映画で主役はやっていない人ということになる。
相棒役のオリヴィア・サルビーは「Juno/ジュノ」でジュノの親友のレアをやっていた人。あれではブルネットだったが、ここではコミックの映画化らしくブロンドにしている。貧困層出身で警察学校出たての若者が戦いを通じて成長する話にもなっているわけで、ミュータントで人の心が読めるという設定がなかなかうまく生きている。
一瞬で誰が裏切っているのかわからせる話法も冴えていて、アレックス・ガーランド(「28日後…」「28週後…」「わたしを離さないで」)の脚本が思いのほか健闘しています。
アクションの舞台が巨大高層ビルのスラムというのが「ダイハード」第一作風でもありSF的でもあり、先日のインドネシア製アクション「ザ・レイド」風でもある。アジア系の住民がかなり目立つのが、ディストピア的未来像にはほぼ不可欠みたい。
スタローン版だと「ランボー2」ゃ「コブラ」などがだぶって過剰な自警主義を正当化する不快感が強かったけれど、これはドレッドが半分自動機械化して感情移入を強要されない分、反感は薄れた。考えてみるとドラマはもっぱら相棒側が担っているのです。
密造されているドラッグ「スローモー」というのは吸うと周囲の速度がスローモーに感じられるというもので、超スローモーションで水しぶきや砕けたガラスが宙を舞うのは3Dにした最大の効果。3Dを生かすためにこういう設定を持ち込んだのではないかと思わせる。
東映系の映画館だと、3DメガネがTOHOシネマズ系のように持って帰って再利用できるのとは違っていちいち回収するのね。ちょっと方式も違うのかも。(写真)↓。
(☆☆☆★)

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これがヘルメットの下の顔です。