新米編集者の舞羽美海がマンガ家=表現者としての原点を探るという触れ込みで自伝を聞き書きして、その原点に母親がいるという構造かと思いきや、原点に遡るのではなく、母親が先導してどんどん狂気が暴走して拡散していく、という展開で、だいたいキャスティングにしてもメイクにしても母親というには若すぎるし人間離れしているしで、いわゆるリアリティは完全に無視している。
ただ、それが楳図マンガみたいにひとつの世界を作っていればいいのだが、映画にするには金も技術も足りないもので、特に後半暴走に弾みがつかなければいけないところでいささかチャチで見るのが辛くなってくる。低予算でも低予算なりの生っぽいリアリティを出すこともあるので、どうも全体として計算が立っていない。
楳図かずおその人が写ればまた別なのかもしれないが、やはり別人が演じたのではウソっぽい。
赤と白を画面全体にアレンジしたカラーデザインは凝っている。父親がまるで登場せず、ただ母を赤の皿に象徴させるのに対応させて緑の皿だけで表現しているあたりの存在感の切り捨て方は、後で考えるとちょっと凄い。
(☆☆★★★)
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映画『マザー』 - シネマトゥデイ