よく見つけ出した、というか、よくうっていけの双子がいたもので、しかもそれが柄が役に合っていて芝居ができるとなると、もう盲亀の浮木のレベル。相手は世界文学史上のトップクラスの評価と人気を誇るのだからなおのこと。
原作だと双子をキャラクターとして描きわけることをせず、二人常にひとまとめにして自我が未完成な曖昧な状態の意識を通して戦時下の残酷なできごとを描いていくという類のないスタイルなのだが、映像にすると双子はとりあえず別々の肉体を持って写ることになるので、見ている側の方が幻惑される。
複眼的な視点から描かれることで残酷なエピソードが対象化さ独特のユーモアを持つのが原作の大きな魅力なのだが、客観的な視点に接近する映画ではその点ではやや後退している。
残酷な出来事(子供に暴力をふるうのをまともに見せるのはアメリカ映画では考えにくい)は描写としては巧みに刈り込んで興味本意に堕さないよう目立たないがスタイリッシュに演出されている。
余談だが、似たモチーフの小説にポーランド出身でアメリカに亡命して作家活動を始めたイエシー・コシンスキの「ペインテッド・バード」(旧訳ではイエールジ・コジンスキーの「異端の鳥」となっていた)というのがあって、戦火が激しくなったので田舎の親戚に預けられた子供が主人公というのは一緒、その親戚が死んでしまい言葉の通じない状態で一人っきりで取り残され地獄巡りを強いられるという展開はさらに苛烈だった。ジェノサイドの描写は初版では少しカットされたほどで、映画化しようという人間は出てこないものかと思う。
(☆☆☆★★★)
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