夫婦仲が悪いわけではなくもう子供たちも独立しているくらい一緒に大過なく過ごしているのだが、それでも違う人間同士である以上ストレスはなくなるわけではなく、ときどき別の男と会って息抜きしたくなる感覚に忠実に沿っていて、話をムリに作ろうとしてどろどろの嫉妬劇や修羅場を見せたりせず、さらっと二晩のアバンチュール仕立ててにしているのがフランスらしい。
独立して芸人の修行をしている息子を夫が訪れるシーンの、その芸のなんとも幻想的な感じが、息子がしっかりやっている安心感だけでなくそれ以上にちょっと日常から離れる息抜きとして、妻が楽しんだ解放感とつながっている。
出会う男たちが実にさまざまな国と人種に及んでいるのが今のパリというかヨーロッパの都会なのだろう。ヒロインがサンドイッチみたいなのをぱくつく店のガラスにさりげなくHARAL(イスラムで許された食を提供している印)と書かれているのが見えたりする。
かといって社会派的にそういった状態を扱っているわけでもない。扱うとしたら、すごく面倒になるだろうが。
夫が嫉妬に内心さいなまされながらランプ肉をヒレだと言い張るレストランに対して畜産業者としてのプライドにくるみながら怒りを噴出させるあたり、なんでああ怒っているのか妻にも周囲にも(もしかすると夫当人にも)わからないが観客にはありありとわかるのがユーモラス。
さらにしばらく後でその夫の内心に気付くあたりのユペールの芝居が見事。
見ている間すごくおもしろいというわけではないが退屈はせず、見終わってからむしろ味が出てくるタイプの映画。
イザベル・ユペールも還暦過ぎているのね(1953年3月16日生)。スタイルが崩れていないし、もともと美人ではないのもむしろ強み。
(☆☆☆★)
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映画『間奏曲はパリで』 - シネマトゥデイ