しまった、と思ってあわてて電車から飛び降りた。
二次会までしこたま飲んだので、どうやって駅に行き着いたのて電車に乗ったのかまるで覚えていない。
電車の中で目を覚ました時、直感的にこれは違う方向に向かっていると思うより早く直感的に身体が動いて、気づいたらホームに出ていた。あまり急いだので、電車の閉まりかけていた扉が身体をかすめたようだった。
降りて改めて気づいたが、明らかに、乗る電車を間違えていた。
駅には誰もいない。客はもちろん、駅員すらいなかった。
窓の外の暗さがいつも通っている住宅地のそれとは明らかに違い真っ暗だったが、そう改めて気づいたのは飛び降りた後だった。
降りたはいいが、今のが終電車ではないかと改めて気づき、すぐに後悔して振り返ったが、すでに電車はどんどん小さくなって暗がりの中に消えていった。
これはまずかったな、と私は駅に一人佇んで途方に暮れた。
駅名も全く聞いたこともないような名前だ。どこの県かもわからない。
駅にかけてある時刻表とスマホの時計と照らし合わせてみた。どうやらやはり今出て行ったのが最終列車だったらしい。
私はいまさらのように後悔した。
飲み過ぎて明らかに乗るべき電車を間違えてしまったことも、あわてて変なところで降りてしまったことも、いかにもまずかった。
(酒を控えないと)
反省したが、もう遅い。というか、これに似た反省するの、何度目だろう。
探しても駅員はやはりおらず、自動改札にすらなっていない。勝手に出入りしていいようだ。今時こんな駅があるのだろうかと不思議に思った。
改札をやや申し訳なさを感じながら勝手に通って駅の外に出てみた。
やはり誰もいない。自動販売機が何台か、こうこうと明かりをつけているだけだった。
ここから金はかかるが、タクシーを捕まえて戻れるかもしれないなどと考えてそのまま車の音がする道路の方に歩いて行った。
だが近づいてみると、道路を走っているの轟々と恐ろしい音を立てて走り抜けていくトラックばかりで、巨大な怪物たちが暴走しているようで道路に近づくのもはばかられるようだった。おそるおそる手を挙げてみたが、トラックの群れはまったく気づく様子もなく機械的に走り抜けていく。
これはもう、明日の朝の始発に乗って戻るしかないなと私は諦めて駅に引き返した。
比較的暖かい時分だったが、ただベンチでごろ寝するのでは冷えそうので私は自動販売機に寄って暖かい飲み物は売ってないか探してみた。
並んでいる商品をひやかしているうちに酒は売っていないかと期待してしまい、それだからいかんのだと自分を叱ってみたが、幸いにして酒は置いておらず、ホットティーを買って構内に戻った。
明日の朝まで仮眠をとりながら待つしかなさそうだ、と私はティーをすすった。
どうやって改札をくぐったのか、いつもの習慣で電子改札を電子マネーカードを入れた財布を当てて通ったのだろうが、日をまたいでしまうとどうなるのだろうと心配になった。
ティーを飲み終えると、そのままごろりと横になった。スーツを着たままなのでいかにも寝心地が悪い。スーツ姿のまま酔いつぶれているサラリーマンの姿を見ることがあるが、あのみっともなさと似たり寄ったりの姿を自分がさらしているかと思うと、酔いがますます醒めてきた。
ふと、気配を感じた。
電車が来る?
少し早すぎないだろうか。そう思いながら起き上がり、ホームに出てみた。
まだ電車の姿は見えないが、音と振動が近づいてくるようだ。
また気づかないうちに眠っていたから時間の感覚がずれていたのかもしれない。
そう思っているうちに、電車の明かりが近づいてくるのが見えた。
バカに早いな。こんな時間にから始発が走っているのだろうかと思ってまた時計を見てみた。
(あれ?)
時間が表示されていない。寝ころんだ拍子にぶつけたのだろうか。
しかし電車は確かに近づいてくる。スピードを落として表示されている行先も目に入ってきたが、覚えがあるようなないような、どうもはっきりしないが、明日も仕事は待っている。いやもう今日か。できるだけ早く帰った方がいいに決まっている。
電車が停車して扉が開いた。乗ってみると誰もいないようだったが、よく見ると人影がポツリポツリとあるようだ。が、みな体を縮めて目をつぶり眠り込んでいるようだった。
始発から眠っている客ばかり運んでいるのだろうか、それともやはり終電だと思った後から別に電車が出ているのだろうか。
既に扉が閉まり電車は動き出していた。
外は真っ暗だ。
キイキイいうような車体が軋む音が聞こえてくる。音源は近いはずなのに遠くから聞こえるようなのが不思議だった。
車内に貼りだされている路線図をよく見て、どこにどういう風に向っているのか掴もうとした。
だが、おかしなことに聞いた覚えのある名前の駅名がさっぱり見つからない。
まるで全然馴染みのない別の県に紛れ込んでしまったようだった。いや、隣の県だったらいくらか地名くらい知っているはずだ。
一体、どこに連れていかれるのか、また不安になってきた。
しばらく走ると、電車は止まって扉が開いた。少人数のスーツ姿の男たちがもそもそと乗り込んでくると、アナウンスもなく出発した。
みな椅子に互いに距離をとって座ったままうつむいて動かない。
外は真っ暗なままだ。
電車がどこに走っていくのか、どこを走っているのか私は見当もつかず、立ちすくんでいた。
二次会までしこたま飲んだので、どうやって駅に行き着いたのて電車に乗ったのかまるで覚えていない。
電車の中で目を覚ました時、直感的にこれは違う方向に向かっていると思うより早く直感的に身体が動いて、気づいたらホームに出ていた。あまり急いだので、電車の閉まりかけていた扉が身体をかすめたようだった。
降りて改めて気づいたが、明らかに、乗る電車を間違えていた。
駅には誰もいない。客はもちろん、駅員すらいなかった。
窓の外の暗さがいつも通っている住宅地のそれとは明らかに違い真っ暗だったが、そう改めて気づいたのは飛び降りた後だった。
降りたはいいが、今のが終電車ではないかと改めて気づき、すぐに後悔して振り返ったが、すでに電車はどんどん小さくなって暗がりの中に消えていった。
これはまずかったな、と私は駅に一人佇んで途方に暮れた。
駅名も全く聞いたこともないような名前だ。どこの県かもわからない。
駅にかけてある時刻表とスマホの時計と照らし合わせてみた。どうやらやはり今出て行ったのが最終列車だったらしい。
私はいまさらのように後悔した。
飲み過ぎて明らかに乗るべき電車を間違えてしまったことも、あわてて変なところで降りてしまったことも、いかにもまずかった。
(酒を控えないと)
反省したが、もう遅い。というか、これに似た反省するの、何度目だろう。
探しても駅員はやはりおらず、自動改札にすらなっていない。勝手に出入りしていいようだ。今時こんな駅があるのだろうかと不思議に思った。
改札をやや申し訳なさを感じながら勝手に通って駅の外に出てみた。
やはり誰もいない。自動販売機が何台か、こうこうと明かりをつけているだけだった。
ここから金はかかるが、タクシーを捕まえて戻れるかもしれないなどと考えてそのまま車の音がする道路の方に歩いて行った。
だが近づいてみると、道路を走っているの轟々と恐ろしい音を立てて走り抜けていくトラックばかりで、巨大な怪物たちが暴走しているようで道路に近づくのもはばかられるようだった。おそるおそる手を挙げてみたが、トラックの群れはまったく気づく様子もなく機械的に走り抜けていく。
これはもう、明日の朝の始発に乗って戻るしかないなと私は諦めて駅に引き返した。
比較的暖かい時分だったが、ただベンチでごろ寝するのでは冷えそうので私は自動販売機に寄って暖かい飲み物は売ってないか探してみた。
並んでいる商品をひやかしているうちに酒は売っていないかと期待してしまい、それだからいかんのだと自分を叱ってみたが、幸いにして酒は置いておらず、ホットティーを買って構内に戻った。
明日の朝まで仮眠をとりながら待つしかなさそうだ、と私はティーをすすった。
どうやって改札をくぐったのか、いつもの習慣で電子改札を電子マネーカードを入れた財布を当てて通ったのだろうが、日をまたいでしまうとどうなるのだろうと心配になった。
ティーを飲み終えると、そのままごろりと横になった。スーツを着たままなのでいかにも寝心地が悪い。スーツ姿のまま酔いつぶれているサラリーマンの姿を見ることがあるが、あのみっともなさと似たり寄ったりの姿を自分がさらしているかと思うと、酔いがますます醒めてきた。
ふと、気配を感じた。
電車が来る?
少し早すぎないだろうか。そう思いながら起き上がり、ホームに出てみた。
まだ電車の姿は見えないが、音と振動が近づいてくるようだ。
また気づかないうちに眠っていたから時間の感覚がずれていたのかもしれない。
そう思っているうちに、電車の明かりが近づいてくるのが見えた。
バカに早いな。こんな時間にから始発が走っているのだろうかと思ってまた時計を見てみた。
(あれ?)
時間が表示されていない。寝ころんだ拍子にぶつけたのだろうか。
しかし電車は確かに近づいてくる。スピードを落として表示されている行先も目に入ってきたが、覚えがあるようなないような、どうもはっきりしないが、明日も仕事は待っている。いやもう今日か。できるだけ早く帰った方がいいに決まっている。
電車が停車して扉が開いた。乗ってみると誰もいないようだったが、よく見ると人影がポツリポツリとあるようだ。が、みな体を縮めて目をつぶり眠り込んでいるようだった。
始発から眠っている客ばかり運んでいるのだろうか、それともやはり終電だと思った後から別に電車が出ているのだろうか。
既に扉が閉まり電車は動き出していた。
外は真っ暗だ。
キイキイいうような車体が軋む音が聞こえてくる。音源は近いはずなのに遠くから聞こえるようなのが不思議だった。
車内に貼りだされている路線図をよく見て、どこにどういう風に向っているのか掴もうとした。
だが、おかしなことに聞いた覚えのある名前の駅名がさっぱり見つからない。
まるで全然馴染みのない別の県に紛れ込んでしまったようだった。いや、隣の県だったらいくらか地名くらい知っているはずだ。
一体、どこに連れていかれるのか、また不安になってきた。
しばらく走ると、電車は止まって扉が開いた。少人数のスーツ姿の男たちがもそもそと乗り込んでくると、アナウンスもなく出発した。
みな椅子に互いに距離をとって座ったままうつむいて動かない。
外は真っ暗なままだ。
電車がどこに走っていくのか、どこを走っているのか私は見当もつかず、立ちすくんでいた。