ベルイマンの「ある結婚の風景」を参考にしたそうだが、すでに夫婦ともに相手がいるせいか互いにまったく情を持っていないのがちょっと凄い。
夫婦間だけでなく妻が妊娠した時その母は必ずしくじるからと言ったのを持ち出して突き放す、その冷たさがまた凄い。
それらの肉親同士の冷たさに加えて、警察のやる気のなさ加減はあきれるばかり。
対照的にボランティアたちの整然として規律がとれノウハウの積み重ねを見せる有能さが目立つ。ロシアでこれだけボランティアが整備されているのかと失礼ながら先入観とのギャップを感じたくらい。
夫の勤めている会社の社長がやたら熱心なクリスチャンで離婚を認めないものだから、クビになるのが怖くて離婚を隠している社員がいるというあたり、日本でもありそう。
それにしてもソ連時代にはあからさまなセックス描写は遠慮していたものだが、まあ堂々たる体躯を重ねた性交は物理的な迫力たっぷり。
紐を投げるあたりタルコフスキーの「ストーカー」みたい。
ラスト近くの冬景色は「惑星ソラリス」に引用されたブリューゲルの「雪中の狩人」を明らかに模した構図。
(☆☆☆★★)
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