prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「処刑の部屋」

2019年08月02日 | 映画
正直、驚くくらいつまらなくて不快な映画だった。
昔の映画のこととて、描写の中途半端やモラルや常識のズレ方はいちいち気にしないつもりだが、むしろここで必ずしも意図的でなく漏れてしまった、日本の悪しき女性差別意識と無神経がかえってまともに出てしまい、それが古いままに今のこの国に傲慢そのものの図々しさと腐敗として積み重なって現前しているのをイヤでも思い起こされる恰好になった。

何に飽きたのかやたら日常をつまらながっている大学生がビールに睡眠薬を混ぜて女子学生に飲ませてレイプするという、今でも司法すら法的処罰の対象から一方的に外すことも珍しくない行為が描かれ、かてて加えて相手の女子学生も警察に訴えるでもなく惚れてるんだか何なんだか妙に思わせぶりな態度をとり続けるご都合主義。本来、即逮捕で刑務所送りだろう。

この不快感の大元を原作の石原慎太郎に求めるのは原作未読でまた読むつもりはまったくない以上、決めつけはしないでおく。
とはいえ、石原個人に留まらない、一見なにものかに反抗しているかのような若者が結局は金持ちのいい気な熱の吹きようと他者(特に女性)に対する一方的な無視蔑視の上に成り立っている構造は、時間が経った分、その無神経ぶりをなお現実において悪質化しているように思える。映画が不快というより、映画に浮上した女に暴力ふるえば新しいような勘違いがねじれて進歩しないままの厚みをもって押し付けられたようなものだ。

とはいえ、市川崑の演出はこれが市川崑かと首をひねりたくなるくらい凡庸で、造形的な鋭さ、構図美、ある種の奇矯さといった才気がおよそうかがわれないのに、むしろ驚いた。

「処刑の部屋」 - 映画.com

8月1日のつぶやき

2019年08月02日 | Weblog