マリオン・コティヤールで売っているが、娘役のエイリーヌ・アクソイ=エテックスが主役。
ネグレクトといってしまうとこぼれるものが多いが、コティヤールが美人なだけに男にだらしがなく遊んでいるうちに娘を忘れてしまうどうしようもない母親の悪さと悪気のなさを演技派的になりすぎずに演じる。
ネグレクトといってしまうとこぼれるものが多いが、コティヤールが美人なだけに男にだらしがなく遊んでいるうちに娘を忘れてしまうどうしようもない母親の悪さと悪気のなさを演技派的になりすぎずに演じる。
子連れの結婚式でもう別の男と戯れているのを、再婚相手の男が連れ子になるはずのエイリーヌが見ないよう隠して抱いてそっとその場を離れる、と同時に呆れはててコティヤールを見放すあたりの簡潔で厳しいタッチ。
孤独に過ごすうちにあろうことか小学三年くらいで酒、それもウィスキーのストレートに手を出すあたり、ぞっとさせられる。この歳では麻薬に手を出すのと変わりはないだろう。
中盤から「シベールの日曜日」ばりの心に傷を負った大人の男と親に見捨てられた幼い女の子とのかなり危うさを孕んだ交流が入ってくる。
「万引き家族」同様、登場人物が打ち上げ花火を見ていて、しかも花火が画面には現れないシーンがある。手が届かない曖昧な幸せからの隔絶感の表現として想像したイメージが偶然に一致したのだろうが、おそらく一般的な意味の家庭の崩壊と子供へのしわ寄せというのは世界的な現象なのだろう。
「アーティスト」でアカデミー賞撮影賞にノミネートされたギョーム・シフマンのカメラが冒頭の夕陽をバックにした船の映像からすでに素晴らしく、原色に近い華やかで透明な色彩をややファンタジー寄りに使いこなす一方で、結婚式などで点景の人物にドキュメンタリー調のリアリティを捉えている。
さりげなく張られたさまざまな伏線が一気に回収されるクライマックスの設計の鮮やかさ。