prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「アルキメデスの大戦」

2019年08月25日 | 映画
冒頭で史実通り戦艦大和が撃沈される場面を見せてしまうのだから、空母=航空機派と巨大戦艦派との争いがどういう結末を迎えるかはわかっているわけで、その上でドラマをどういうところに落とし込むのか、が興味になる。

 傾く船から滑り落ちていく乗員や、浸水とともに船体が海上に高々と突き出るあたり「タイタニック」そのもので、技術的に日本映画もやっと追いついた感があるとともに、ひとつの巨大な船が驕れる者の力の誇示のシンボルになったかと思うと同時に崩壊するところで共通している。
機銃掃射で撃たれた人体がどうなるかちゃんと見せているのも良い。

数学という合理性の極致の天才が一方で不合理な狂気を覗かせてしまう。ひとつは恋愛絡みで、もうひとつは数学の「美」そのものに酔いしれるという、より本質的なところ。
余談だが、右脳左脳で感情と論理を分担しているという説を否定するのに、思考中の数学者の脳が全体がフル回転しているという観察結果があるという。

こういう「頭の良さ」とまるっきり不合理な判断とがねじれてくっついてしまう日本の体質を指し示すドラマの落としどころは巧妙。
田中泯を一見無能で旧弊な戦艦設計者役にキャスティングした企みが終盤効いてくる。

数学的思考というのはまあ映像化不可能だろうけれど、黒板にすごい勢いで計算式を書き連ねるのに、記号はあまり使わずふつうの観客に理解可能な数字が並ぶアナログ感が映画的。



8月24日のつぶやき

2019年08月25日 | Weblog