予告編からは江戸川乱歩の「人間椅子」か「屋根裏の散歩者」みたいな一方的に好意を寄せている女性に対してあえて隔たりを置いて妄想に耽る変態的な、あまり動きのない作品かと思ったら、妄想=イメージが現実と等値されるような描き方で、さらに当人が現実に進出してくるのと現実の方で放ってはおかないのとが平行して進展し、場面設定としてもひとつところに硬直しないでおおむね室内シーンながら変化をつけて飽かせない。
DV夫の暴力のふるい方が本当にひどくて、暴力をふるわれる西川加奈子がとても華奢なだけに見ていて血圧が上がる。それを簡単にやっつけないで空想と現実で行きつ戻りつしながら何度も天誅を下すのが変態的なのとヒロイックなのが交錯する複雑な味を出す。
高良健吾の男前ぶりがないと変態側に寄り過ぎただろう。異様ながらこういう愛情表現もありうるかと思わせる。