イギリスの収用所に入れられていたドイツ兵がサッカーのキーパーとしての才能を認められ、収用所内の試合だけでなく戦後もイギリスのプロチームで活躍するに至る実話。
この映画自体がイギリス・ドイツ合作というのが両国の融和を表す。
主役のデヴィッド・クロスはドイツ出身だが、英語の操り方も達者なもの。サッカーの技の見せ方にも破綻はない。ほぼ英語映画だが、監督のマルクス・H・ローゼンミュラーもドイツ出身。
サッカーのスカウト役になる雑貨屋やその娘と次第に心を通わせていくプロセスが、タバコなどの小道具を巧みに使ってきめ細かく描かれている。
ナチス=ヒットラー・ユーゲントでもあったあたりはユーゲントが子供でもあるという事実をもって不問に伏すというロジックを使っている。まずは無難な処理。
収容所の意地悪な官僚的な監視役の単純な悪役で終わらせない生かし方などにもドラマの作り手としての工夫が見られる。
ひょいと思い切って「信頼できない語り手」の技法が入ってくるのもドラマと割り切った感じ。
風俗の再現が陰影の濃い画面と共に魅力。サッカー場の大観衆は今どきCGなのだろうが、まったく違和感がない。
エンドタイトルの後に本物のが写るが、金髪のいわゆるアーリア人的容貌。