prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「そしてバトンは渡された」

2021年11月07日 | 映画
昔(1949、リメイクは1958)、「母三人」という映画があって、実の母、育ての母、義理の母の三人が息子を想う姿を描いて女性観客の紅涙を絞り、「三倍泣けます」という宣伝文句が半ばカラカイの対象になったような映画なのだが(ただし神山征二郎監督などはすごく良く出来ていると称賛している)、さしずめこれは父三人だ。

実の父大森南朋、育ての父田中圭、義理の父市村正親がそれぞれひたすら娘を想って、一番ヘンで自分勝手に見えた石原さとみも実はという展開になる。
父と母が逆転して成立するというのは人の感情の基本を押さえていてかつ新鮮で、子供に無条件な愛情を注ぐというのもいい。
こう善意な人たちばかりというのは甘いといえば甘いが、かなり上等の甘さ。

スマートフォンやパソコンがほぼ出てこない。写っているところはあるけれど、使っているところはない。
だものでいつの話だろうと思っていたのだが、手紙が重要な役割を果たすわけで、ハイテク機器を出されると都合が悪いということもあるだろう。

時制がわからないというのは前半のわかるまで気づかせないし、わかる時も混乱させない話の仕掛けにもよる。

大森南朋こその後妻が永野芽郁たちを迎えるところで、客人二人には揃いの受け皿つきの茶碗を出して自分たちは不揃いの茶碗というあたり、この人たちの人となりが見える。

前田哲監督は助監督時代から子供の使い方には定評があったが、今回も腕を見せる。