SF仕立てで、舞台になる星の住人たちは考えていることがもやっとした形をもってみんな頭の外に出てしまうという、言ってみれば脳味噌ダダ漏れ状態なわけだが、その中で主人公の青年トム⋅ホランドが自分の名前を繰り返し唱えることでそれ以外の思考が漏れるのを隠している。
一方で漏れ出した思考に形を与えて武器にしたり自分の分身を作る者もいたりして、SF的趣向として一応面白い。
ドラマとすると不時着した宇宙船の生き残りデイジー⋅リドリーと出会うことで青年が心を開いていくプロセスが柱になるわけだが、原作が三部作なのを第一部だけ映像化したわけで、それほど深いところまで展開しないところで終わってしまう印象。
絵面からすると諸星大二郎の「感情のある風景」に似ているが、あれが感情を外に出して切り離すことで内の感情を失っていくという深みのある展開を見せるのに対すると、どうも単調。
「スター⋅ウォーズ」新三部作で主演をつとめたデイジー⋅リドリーがブロンドにして登場するのがなんだか違和感あり。
あまりSF的とはいえない河を流されるシーンが一番スリリング。