prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「梟 フクロウ」

2024年02月19日 | 映画
17世紀、中国が明から清に代わった頃、日本では徳川時代の初め頃の朝鮮半島の話。
目が不自由で明るい場所ではモノが見えず、暗い、それも真っ暗な場所だと見えるという(だからフクロウになぞらえられる)鍼医が主人公。
朝鮮王朝時代の記録物「仁祖実録」に記された“怪奇の死”にまつわる謎をモチーフにしているから実録ものにして伝奇ものといったところ。

隣の大国の王朝が代わったあおりをもろに受けた激動の中、朝鮮宮廷ではあらゆる疑心暗鬼と陰謀が跋扈する。
その中で「見て見ぬふり」をしないと生き延びられないという苦しい立場を維持し続けるというのは、一種象徴的な表現ということになる。

画面はほぼ全編ロー・キーで通していて、暗いなりに鮮明に写っている。
ロウソクの炎を吹き消して真っ暗になり、他の者が見えなくなると見えるようになるというのもアイロニカル。

人間性を失った宮廷の人間模様には、ちょっと息をひそませるものがある。