prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「カラーパープル」

2024年02月22日 | 映画
市長夫人(もちろん白人)が傲慢な態度をとるのに反発した黒人女ソフィアが怒りの言葉を投げつけると代わりにしゃしゃり出てきた(レディファーストのつもりか)市長に殴られたので殴り返す。その市長が殴られる瞬間をスピルバーグ監督版だと前をトラックが横切って瞬間自体は見せない。

スピルバーグ版が公開された当時、「シネマレストラン」で荻昌弘は
「このトラックはナカナカ南ア的に老獪であります。私はアメリカ映画の革命とは、白人を殴る黒人女が現れるより、こういったハリウッド類型トラックがなくなることを、呼びたい」
と言っていたが、今度のミュージカル映画化は堂々とぶん殴られる瞬間を写している。
なんでもないようだけれど、「黒人女」が「白人男」を殴るというのはタブーだったのがまがりなりにもそれが撤去されたのは「進歩」なのだろう。
スピルバーグ版で助演していたオプラ・ウィンフリーがここでは製作総指揮にあたっているのも、それだけの月日をかけて発言力を得たからには違いない。

スピルバーグのシリアス作品というのは今やコメディでないウディ・アレン作品同様そっちの方が普通になっているのだが、この「カラーパープル」の時は柄でもないことをして、という受け取られ方だった。

黒人が住んで働く場所を前作では主に綿畑にしたが、今回は川辺あるいは沼地に作られた酒場にデザインされた。
それからいかにもアメリカ南部という風情の、根をはり、枝を広げ、蔦が垂れ下がった大木。

ルイス・ゴセットJrがエンドタイトルにミスターの父親(O’Mister)クレジットされる。「愛と青春の旅立ち」でアカデミー助演男優賞を受賞して、私見だけれどその後鬼軍曹役ばかりが続いて役柄が固定されていた印象だったが調べてみたら出演作はテレビが多くてそうでもなさそう。