ここでもセリフでちらっと触れられるが、「ウォール街を占拠せよ」Occupy Wall Streetと1%以下の金持ちがそれ以外の貧乏人(というより地盤沈下した中産階級)そっちのけに株価を操作し利益を貪っているマネーゲームに抗議する運動が起きて、いわばその抗議の実践版の映画化。
1%以下の金持ちがボロ(と見なされた)株の空売りを仕掛けて、SNSでゆるくつながった貧乏人たちが対抗して買い進めるというのが全体の構図。
売るものがないのに空売りするというのがすでに変なので、後で買い戻すといっても具体的なモノがあるわけではなく、数字だけが動く。
金持ちにとってはただのバカでかい数字であっても、貧乏人にとっては食費であり教育費であり医療費でありガソリン代であり光熱費であり、つまりは具体的な生活の裏打ちがある。
登場人物それぞれに現在の資産額が字幕で示されるのだが、金持ちは何十億ドル(ビリオネアね)を占有しているのに対して、貧乏人はひどい時は三ケタ。
あまりにひどい格差で、それだけの資産で何やるのかというとパーティーだったり遊興費だったり次の投資だったりで、カネがカネを産むと言うと聞こえはいいが、同じところ(日本でいう上級国民の中)をぐるぐる回っているだけではないかと思う。
とはいえSNS自体が大きく見れば資本主義的構造の申し子みたいで主人公がやっていることはYouTuberのフォロワー稼ぎで、それがたまたまバカ当たりしてインフルエンサーになったという面もある。
マネーゲームが大衆化していて好むと好まざるに関わらず参加しないわけにいかない(NISAのしつこい勧誘に見るように日本もそうなってきている)背景がある。
それらをひっくるめて全体の見取り図がしっかりしていて、しかも現在進行形なのがわかりやすくてスリリング。
主役のポール・ダノをはじめキャスティングがよく、父親役がクランシー・ブラウン(「ハイランダー 悪魔の戦士」の悪役)だったりする。
ダノが奥さんも小さな子供もいるという設定が中産階級的。
ラストで「その他大勢」がそれなりに資産を増やして余裕ができたのを見せる。
金持ちの贅沢の中に和牛Wagyu(はっきりワギュウと発音している)というのがあるのにあれまと思う一方で当然とも思う。