雨、11度、80%
この家の改築が終わったのは8年前です。7年前帰国して住み始めると、以前なかった場所に電燈線が出ているのに気付きました。玄関の三和土の上です。三和土を上がった2畳の玄関の間にはこの家らしい和風の照明器具をつけました。 この灯りは4球の電球のおかげで思ったより明るく、これで十分と思っていたのですが、三和土の上の裸の電燈線が目障りでした。二股に分かれた電燈線はみっともいいものではありません。そこでこの家らしからぬ「ステンドグラス」のシェードを買い私が取り付けました。ところがスイッチを押しても明かりがつきません。庭の照明の修理に来てくれていた電気屋さんに見てもらったら、「この電燈線、電気が来てないよ。屋根裏から配線をやり直してもらいなさい。」と言われました。途端に億劫になりました。「屋根裏」しかも出費が嵩みそうです。そんなわけで明かりがつかないまま、7年が過ぎました。
11月も終わりの頃、急にこの「ステンドグラス」に灯りを入れようと思い立ちました。見積もりに来てくれた電気屋さんがその場で配線のやり直しをしてくれました。微量な電気は来ているけれど、どこかで電気が漏れているとの診断でした。2階から屋根裏に入り、2時間近くかかりました。若いお兄さんが手際よく仕事をしてくれました。
こんな風に三和土の上を照らします。バラの模様の「ステンドグラス」です。小ぶりでさして明るいわけではありません。電気屋さんが帰った後も嬉しくてしばらく玄関にいました。 飾ってある額に写り込む「ステンドグラス」もいい感じです。色合いがこれからの季節に温かさを運んでくれます。
「ステンドグラス」に興味が出たのは帰国後です。小さい時から教会のステンドグラスに馴染んでいたはずなのに、美しさを知らずにいました。この春の「マチス展」ではたくさんの「ステンドグラス」が紹介されていました。ますます好きになった「ステンドグラス」です。
壊れたもの、使えないものが家にあるのは好もしくないと思います。それぞれがその役割を果たしてこそ「もの」です。まして家の顔の玄関です。明かりがついたことで空気の流れも変わると信じています。新しい年が来る前に家自体も整えました。電気屋のお兄さんも「可愛い明かりですね。」と言ってくれました。私の心にも明かりがつきました。