夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『森崎書店の日々』

2010年12月06日 | 映画(ま行)
『森崎書店の日々』
監督:日向朝子
出演:菊池亜希子,松尾敏伸,田中麗奈,内藤剛志,
   奥村知史,吉沢悠,きたろう,岩松了他

ミニシアターにて順次公開中。大阪・梅田では一昨日から。
「訳あって、古書店に借り暮らし」。
このキャッチコピーに心をくすぐられて観てきました。

東京・千代田区の持つ文化的・歴史的魅力をアピールし、
文学の新たな担い手を発掘するために設けられた「ちよだ文学賞」。
その第3回大賞受賞作の映画化です。

OLの貴子は、つきあって1年半になる英明から、
別の女性と結婚することにしたと告げられる。
いつもどおりのデート中にあまりにサラリと言われ、意味わからん状態。

英明とは同僚のため、社内で顔を合わせるのもつらくて辞める。
何もする気力が起こらず、毎日眠ってばかり。
そんな娘を心配する田舎の母親は、弟のサトルに連絡する。

古書店「森崎書店」を経営するサトルは、早速、姪である貴子に電話をかけ、
無職では家賃の支払いもきついだろう、店の2階の部屋が空いている、
たまに店番をしてくれる子がほしいし、うちへ来ないかと言う。

長らく会っていないサトル叔父からの急な申し出に、貴子はとまどうものの、
幼い頃によく遊んでくれた叔父に悪い印象はない。
こうして貴子は、神田神保町の住人となるのだが……。

神田神保町は、実に170軒を超える古書店が並ぶ、世界一の本の街。
何年か前に行ったとき、それぞれに強い分野を持つ古書店に驚き、
ワクワクしながら店を回ったことをよく覚えています。

小説などほとんど読んだ経験のなかった貴子が、
物置代わりだった2階の部屋に住み始めたことから、
積み上げられた本の1冊を開きます。
最初の1冊を読み終えたときの貴子の表情が、本作でいちばん好き。

あたたかい叔父。志賀直哉を愛する常連客のオッサン。
とびっきり美味しいコーヒーを淹れてくれる近所の喫茶店のマスター。
そこでバイトするのは、大学院の文学科に通う女性。
その女性に想いを寄せる、イケメンだけど口下手な男性。
いろんな人柄に触れて、貴子の心が解けてゆきます。

後半は物語が感傷的になり過ぎていて、
冷めた目で観てしまったところもありますが、
古書の買い付けを初めて見ることができてウキウキ。
やっぱり本はいいもの。

劇場は、還暦前後とおぼしき独りでお越しの男性客でほぼ満席。
こんな客層の映画も初めて。
もしかして、かっぱ横丁の古書街の店主さんたち?

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