夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『らもトリップ』

2012年09月04日 | 映画(ら行)
『らもトリップ』
監督:三間旭浩,今橋貴,松尾健太,中野裕之
出演:小島藤子,野村周平,宮下ともみ,清水くるみ,神崎れな,松尾貴史,
   嶋田久作,永池南津子,忍成修吾,勝村政信 諏訪太朗他

先月24日までシアターセブンにて公開されていました。
最終日は「みんなでトリップ♪」っちゅうことで、アルコール1杯付き。
けれども私はどうせ車だから飲むのはあきらめなあかんし、
同日にDVDもレンタル開始になるしということで、
劇場ではなくDVDにて鑑賞しました。

2004年の夏にラリって階段から転げ落ち、急逝した中島らも
超有名進学校の灘高から大阪芸大へという異色の経歴の持ち主で、
小説も書けば芝居もするし歌もうたう、ワラかしてくれる凄い人。

著作のなかで私が特に好きだったのは、『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』。
1960年代から1970年代、らもさんの青春時代を綴ったエッセイです。
いつ思い出しても笑ってしまうのは、バンド結成のときのお話。
女にモテるにはバンドに限るということで、同級生らと活動開始。
作曲なんてできる奴がいるはずもなし、だけどただのコピーじゃつまらない。
有名曲を転調して演奏しようと、決めた曲は“オブラディ、オブラダ”。
抱腹絶倒した一文を丸ごと覚えているわけではありませんが、こんな感じでした。
「演奏を始めたメンバーを見て、僕は愕然とした。
なんと彼らは〈悲しそうな顔〉で“オブラディ、オブラダ”を歌い始めたのだ」。
もちろん、長調のままですよ。

学生時代に高槻の友人宅に泊まったとき、
夜中にラジオから聞こえてくるらもさんの静かな声。
「ここ高槻のポンポン山では……」。タイムリーすぎて大笑い。

本作は、そんならもさん原作の小説3編を映画化した作品と、
らもさんと親しかった著名人へのインタビューで構成されています。

『クロウリング・キング・スネイク』は、ヘヴィメタするヘビ女の話。
かなえには最近引きこもり気味の姉のぞみがいる。
心配顔の父親に言われてのぞみの様子を見に行ったところ、
なんとのぞみの全身にうろこが発生中、脱皮までしてスッキリ。
のぞみはエレキギターを弾きたいと言いだし、かなえはギターを買いに。
地肌なのかコスチュームなのかわからん格好でライブ出演。

『微笑と唇のように結ばれて』は、吸血女に献身的な愛を捧げる男の話。
画廊を経営する丸木のもとへ、ある日、若い美女マリカがやってくる。
一夜を過ごした翌朝、まだ夢うつつの丸木の首に噛みつくマリカ。
彼女は血を摂取しなければならない病に冒されているらしい。
丸木はマリカに血を与えつづけようとするが、
マリカは別の血を求めて出て行ってしまう。
彼女の居所を突き止めた丸木は、傷つけるくらいなら殺してくれと懇願する。

『仔羊ドリー』は、自分のクローンをつくった男の話。
売れっ子作家の藤原はあまりの多忙さに嫌気が差し、
自分に代わって仕事をしてくれる奴がいればラッキーと、クローンを注文。
届いたクローンは自分とは似ても似つかないように見えるが、
他人から見ればウリ二つらしく、誰もクローンだとは気づかない。
瞬く間に藤原のことを学習したクローンは、仕事もこなせるようになり、
いつしか勝手に依頼を引き受けて、勝手に小説を書き始める。

こんな3作の前後にインタビューの『らも語り』。
らもさんについて語るのは、らもさんの奥様とお嬢さんのほか、
石田長生、宇梶剛士、大槻ケンヂ、竹中直人、チチ松村、原田伸郎、
古田新太、宮前賢一、山内圭哉の面々です。

映画はどれもいろんな意味で気持ち悪い。(^^;
『仔羊ドリー』は、勝村政信のクローンが諏訪太郎で、その時点で可笑しすぎ。
諏訪太郎に迫られる勝村政信が、「そっちの気はない」と叫びつつも、
「やめて~、気持ちいい~、やめて~、やめないで」って気色ワルっ。
そう、クローンだから、オリジナルのことはいちばんよ~くわかってるんですと。(^o^;

らもさんの数々の逸話は、この人、ほんとに愛されていたんだなぁと思うものばかり。
鼻からラーメンを出して眠りこけていた話とか、やはり凡人ではありません。
他界してから7年以上、今もこんなふうに話してもらえるのは幸せですね。

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