夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の11本目@伊丹)

2018年06月08日 | 映画(た行)
『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』
監督:山田洋次
出演:橋爪功,吉行和子,西村まさ彦,夏川結衣,中嶋朋子,林家正蔵,妻夫木聡,蒼井優,
   藤山扇治郎,徳永ゆうき,小林稔侍,風吹ジュン,笹野高史,笑福亭鶴瓶他

続編は得てしてつまらなくなるものですが、これはおもしろい!
『家族はつらいよ』(2016)、『家族はつらいよ2』(2017)に続き、
今回も大いに笑って泣かせてくれます。
「妻に観せられない、夫に観せたい」、そのとおりでしょう(笑)。
前作、前々作も笑って泣いたと思うのですが、今回がいちばん泣けたかも。
ところで西村雅彦はいつから何故に西村まさ彦に改名?

三世代が同居する平田一家。
主の周造(橋爪功)と妻・富子(吉行和子)が熟年離婚の危機に陥ったのが1作目。
2作目では周造の車の運転を家族が心配、免許の返納を勧めたら周造スネる。
そんなこんなで3作目は、二世代目に離婚の危機が。

平田一家の家事一切合切を担うのは、周造の長男・幸之助(西村まさ彦)の妻・史枝(夏川結衣)。
夫や育ちざかりの息子たちに加え、舅姑の世話もすべてひとりで引き受け、
料理家事洗濯と毎日休む暇なく働く史枝だが、自由に使えるお金などない。
フラメンコ教室に通いたいと思いきって夫に申し出てもスルーされ、
お洒落なカフェへパートに出るという近所のご婦人方を羨ましく思う日々。

周造と富子が泊まりで法事へ出かけ、幸之助が出張中だったある日、
2階の掃除をしていた史枝は、疲れてちょっと腰をおろしたさいに、ついうとうと。
その隙に入った泥棒(笹野高史)に、冷蔵庫に隠していたへそくりを盗まれてしまう。

帰宅した幸之助は、史枝が懸命に詫びているにもかかわらず激怒。
泥棒に遭ったショックに沈む史枝を案じて来ていた平田家の長女・成子(中嶋朋子)を追い返すと、
「自分が汗水たらして働いている間に昼寝とはいい身分、
へそくりをしていたなんて、それは俺の金だろう」と史枝に向かって怒鳴りつける。

翌日、周造と富子は法事からの帰宅途中、
迎えに来た成子の夫・泰蔵(林家正蔵)から史枝の家出を聞かされてビックリ。
平田家の次男・庄太(妻夫木聡)とその妻・憲子(蒼井優)もやってきて、
今後について話し合おうとするが、幸之助は自分の非を全く認めようとせず……。

共感能力の高い客が多い作品のこと、
このシリーズは毎度温かい笑いと涙に包まれて、良い雰囲気の中で鑑賞できます。

橋爪功演じる周造は相変わらずすっとぼけた味を出し、
自分が妻に逃げられたことも忘れて幸之助に投げかける台詞。
「アナタがそれを言っちゃあ……」という泰蔵のツッコミがワラける。

蒼井優演じる憲子が出来すぎていて、同世代の女性陣からは反感を買わないか心配になりますが(笑)、
こんな嫁が来てくれたら、お父さんお母さんは安心ですよねぇ。
嫁が家出し、妻は腰痛が酷いからといって、
行きつけの飲み屋の美人女将(風吹ジュン)を家に上げて家事をしてもらうのもどうなんだか(笑)。
周造自身が呼んだわけではなくて、悪友の角田(小林稔侍)が呼んだのだとはいえ、
鼻の下伸ばしすぎですよ、お父さんたち!

かれこれ10年ほど前、義母がインフルエンザで入院したとき、
義父が「洗濯機の回し方がわからん」と言って電話してきたのを思い出します。
自分は家事の潜在能力が高い、しないだけだと豪語していた義父ですが、
あのときはしんみりと、「自分でやってみると難しいもんやな。
いつも文句ばっかり言って反省しています」とつぶやいていました。
なのにお母さんが帰ってきたら同じ態度に戻るのですよねぇ、お父さん。
そのつぶやきをお母さんに直接言うてあげてくださいよ。代わりに私が言うときました(笑)。

山田洋次監督がお元気でいらっしゃるかぎり、続けていただきたいシリーズです。
オススメ。

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『友罪』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の10本目@伊丹)

2018年06月08日 | 映画(や行)
『友罪』
監督:瀬々敬久
出演:生田斗真,瑛太,夏帆,山本美月,富田靖子,奥野瑛太,飯田芳,
   青木崇高,忍成修吾,西田尚美,村上淳,片岡礼子,佐藤浩市他

6月22日公開の『焼肉ドラゴン』を試写会で観たので、そちらを先にUPしました。
今日からまた観た順に戻ります。

前日にヘロヘロになりながら西宮で4本観たおかげで、
翌日曜日は楽チン、車で伊丹へ行って3本。
ダンナ出張中だから、16時に晩ごはんじゃなくていいし(笑)。

薬丸岳の同名小説の映画化。
好きな作家なのですが、彼の作品はたいていとても重い。
立て続けにはなかなか読めないので、これも未読です。
心身ともに元気なときに読むことにして、まずは映画版を。

埼玉県の町工場に就職した益田(生田斗真)。
正義感あふれる雑誌記者だったが、夢破れてこの地に流れ着いた。
同日に就職した鈴木(瑛太)とともに一軒家の寮に入る。
同じ寮で暮らす清水(奥野瑛太)と内海(飯田芳)が先輩風を吹かし、
益田は上手く話を合わせるが、鈴木は愛想もクソもない。
人づきあいを避け、皆が起きる前に寮を出て、寝静まってから帰宅している様子。

清水は鈴木の態度を良しとせず、鈴木の留守中に部屋を物色。
たいして荷物もないなか、ナイフとスケッチブックが出てくる。
スケッチブックには中年女性の裸体のスケッチがあった。

ある日、鈴木は男・達也(忍成修吾)に追われている女・美代子(夏帆)を見かける。
美代子が咄嗟に鈴木のかげに隠れたせいで、達也は激怒。
鈴木は達也から殴られるままで一向に抵抗しない。
達也が去ったあと、鈴木の介抱をする美代子。

人と関わろうとしなかった鈴木だが、終業時間に工場までやってきた美代子をまじえ、
清水や内海、益田と一緒に飲みに行くと、カラオケを歌って笑顔も見せる。
荒んでいた益田の心も、鈴木といるうちに動きはじめる。

一方、以前益田と交際していた記者の清美(山本美月)は、
近隣の町で児童殺害事件が起こったのをきっかけに、
17年前に起きた少年Aによる同様の事件を調べ直していた。
清美から原稿についてのアドバイスを求められた益田は、
少年Aの写真に鈴木の面影を見いだし。鈴木こそが少年Aなのではと考える。
しかも、少年Aの指導教官が、鈴木のスケッチブックの女性にそっくりで……。

漠然と、伝えたいことは伝わってきます。ただ、ちょっとバランスが悪い。

益田と鈴木の話とは別に、浮き彫りになる美代子の問題。
それとはまた別に、タクシー運転手・山内(佐藤浩市)の話もあります。
山内には息子がいて、この息子がかつて交通事故で児童を死なせている。
メディアの攻撃から逃れるために、妻(西田尚美)と離婚して一家離散することを選びますが、
その息子がすべて承知の上の女性と結婚するという。
しかも相手の女性のお腹の中にはすでに子どもがいる。
山内は、人の子どもを死なせた人間に、家庭を持って幸せになる権利などないと言う。

益田と鈴木の話と山内の話が繋がるならば、
ひとつの作品として見応えがあったかもしれませんが、繋がりはない。
各々それだけでも1本になりそうな話なのに、
無理やりまとめてバラバラ、という印象を持ってしまいました。

瀬々敬久監督の作品は、なんだか私にはいつもあとひとつかふたつ物足りない。
そしてひとつかふたつ、余分。
本作ではラスト近くの山本美月演じる清美が涙を浮かべるシーンに興醒め。
そう、いつもこんな感じで涙を押しつけられている気がするのです。
逆に瑛太の演技はよかった。彼が押し殺したように話すシーンでは泣きました。

凶悪な事件が起こるたび、そんな事件の犯人なんて、死刑になってしまえ。
そう思うときがあるのは事実です。
だけど、この世に消してしまってもいい命なんてないのかな。
瑛太演じる鈴木を見ていると、そう思いました。

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