2022年1月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3770ページ
ナイス数:955ナイス
■常設展示室 (新潮文庫)
妹・マハよりも兄・宗典を応援したい派です。そのせいかどうかはわからないけど、こんなにも人気作家のマハさんをそこまで好きにはなれません。長編小説の序盤ではいつも引き込まれて涙さえ流してしまうのに、終盤に熱い様相を呈すれば呈するほど、私は冷めてしまうのです。そして気づきました。短編小説ならば熱くなりすぎる前のちょうど良い加減で話が終わる。たぶん私は彼女の短編のほうが好き。表紙に惹かれて買いました。絵についての知識が皆無でも、目の前にこの世界が広がるはず。大阪では再来週までメトロポリタン美術館展開催中。観たい。
読了日:01月02日 著者:原田 マハ
■あなたとなら食べてもいい (新潮文庫)
「あなたと食べたい」じゃなくて「あなたとなら食べてもいい」。どんな上からなんだよと思わなくもないけれど(笑)、素直に「あなたと」と言えない気持ちが込められているように思います。特に1つめの『くろい豆』はそう。男性より女性にお奨めしたくなる話が多いですが、3つめの『居酒屋むじな』は私には「つげ義春の優しい版」みたいなイメージで、こんな居酒屋が本当に存在していたならと可笑しくもあり切なくもあり。2つめの『消えもの』のみミステリータッチで異質です。7つの物語にハズレは無し。知らなかった作家に会えるのもうれしい。
読了日:01月05日 著者:千早 茜
■氷に閉ざされて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション ハ 7-18)
まったく、二見書房ってどうしてこんな表紙にするのかしら。『そして彼女は消えた』といい、物憂げなブロンド美女が載っていると買いづらいってば。しかし映画なら雪山遭難ものは外せない私は読んでみることに。表紙が思わせぶりなだけかと思ったら、本作に関しては正しい表紙でした(笑)。小型飛行機に乗り込んだ未亡人がマッチョなパイロットと共に墜落。もとは敬遠し合う仲だったのにこの状況下でラブラブに。中盤以降は欲情に駆られるのをどう抑えるかが焦点(笑)。ふたりの死を目論んだ犯人は、そいつじゃなきゃそいつしかおらんっちゅうの。
読了日:01月09日 著者:リンダ・ハワード
■明け方の若者たち (幻冬舎文庫)
映画版の鑑賞後、彼女が既婚者だったという事実、それを彼は最初から知っていた事実が原作ではどう描かれているか知りたくて買いました。衝撃的なのは原作も映画版も同じ。映画版はほぼすべて原作のまま。変更に笑ったのは、原作ではサイゼリヤだったのが、映画版では餃子の王将だったところ。原作を読んでわかった私の勘違いにも笑う。ふたりがあるバンドのアルバムについて言い合うシーンで、私には“Ratt(ラット)”だと聞こえていたのに、原作を読んだら“RADWIMPS(ラッド)”でした(笑)。人生のマジックアワーはいつでしたか。
読了日:01月11日 著者:カツセ マサヒコ
■かなしきデブ猫ちゃん (集英社文庫)
年初だから、まずは薄めの本で冊数を稼いで今年の読書に弾みをつけようという姑息な考えから読みました。ついには絵本まで書きはじめた早見さん。捨てネコカフェから温かい家族にもらわれていったデブ猫ちゃん(♂)。安泰かと思いきや、チビ猫の登場で立場が危うくなります。悲しくて家出した彼が愛媛県内を巡るロードムービー。猫らしく描かれていた第1部から一転、第2部では二足歩行。堤防に腰かけて物思いにふける様子など人間のまんまです。温泉では頭にタオルのせてババンバンバンバン。絵が猛烈に可愛くて、早見さんの本というよりは……。
読了日:01月12日 著者:早見 和真,かのう かりん
■きみはだれかのどうでもいい人 (小学館文庫 い 49-1)
原田マハの『あなたは、誰かの大切な人』の真逆を行くタイトル。凹みますねぇ。だけどそんなもんでしょう。職場でどれだけ「あなたがいないと困る」と言われている人であったとしても、辞めたところで仕事は普通に回る。県税事務所に勤める4人の女性の視点から描かれたこの連作短編集は「あるある」だらけ。ひとつ言えるのは、どんな人にも必ず悩みはあるということ。いかに能天気に見えようが、物事に動じないように見えていようが、生きていれば悩む。あと、映画や本での総務係の扱われ方がいつも不思議。総て務める、なくてはならない係なのに。
読了日:01月16日 著者:伊藤 朱里
■はるか (新潮文庫)
『ルビンの壺が割れた』を読んだとき、失礼な言い方ではありますが、執筆するに当たって特に何の知識も下調べも必要としない物語だと思いました。その点で本作は前作とはまったく違います。AIのいろいろ、へーっ、ほーっの連続。『夏への扉』へのオマージュなのだろうかと思いきや、幸せには終わらないのを見ると、主人公がだんだん取り憑かれたようになって行く『人魚の眠る家』を思い出したりも。映画『レプリカズ』ほどの無茶ぶりにはならずとも、死者を生き返らせようとすれば良いことは起こらない。技術が進歩すれば、こっちが消されるかも。
読了日:01月17日 著者:宿野 かほる
■下町ロケット ゴースト (小学館文庫 い 39-5)
池井戸さんの著作は、たいてい最初から引き込まれて頭に血が上るものなのに、本作はこちらのエンジンがかかりにくい。ちょっと退屈だなぁと思っていたら、半分に差しかかった辺りでいきなり全開に。要はそこまではあからさまに悪い奴が出てこなかったからでした(笑)。ライバルになりそうな中小企業を姑息な手を使って潰そうとするなんてことが普通にあるならばとても寂しい。正義が勝つシーンは恒例のスッキリ、でもその後は少し悲しい。儲かるかどうか以前に、人として正しいかどうかという基準での経営判断。それだけでは駄目なものでしょうか。
読了日:01月21日 著者:池井戸 潤
■桜底 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
新シリーズは幽霊が見える青年が主人公。映画『さんかく窓の外側は夜』で志尊淳が演じた青年はその能力を呪っていましたが、この青年・怜はちゃっかりそれで金稼ぎ。そうしないと生活が立ち行かないという事情もあります。そんな彼がスカウトされて警視庁の地下室へ。秘密の捜査班のメンバーはみんな異能者。起こる事件は相変わらずえげつないから、想像力をあまりたくましくはしたくないけれど(笑)、思った以上にコミカルです。しかしやっぱり凄いわ内藤さん。どうして次から次へとこんなにおもろいシリーズを書けるんですか。次巻以降にも期待。
読了日:01月23日 著者:内藤 了
■償いの雪が降る (創元推理文庫)
タイトルと表紙と帯からしみじみとした大人のミステリーを想像していたら、『自由研究には向かない殺人』と似た設定のサスペンスフルな青春ミステリーでした。但し、あっちのピッパは複雑な家庭環境ながらも温かい家族に恵まれ、こっちのジョーの親はアル中DV。大学の課題で身近な年長者の伝記を書くことになったとき、親には近寄りたくないから老人介護施設に入居する余命わずかな他人、しかも元殺人犯から話を聴いて冤罪を確信します。隣人の女子学生やジョーの自閉症の弟との関係性がイイ。ピッパ以上に無謀でハラハラさせられたけど。面白い。
読了日:01月27日 著者:アレン・エスケンス
■殺した夫が帰ってきました (小学館文庫 さ 40-1)
ストーカーに襲いかかられそうになっているときに、殺したはずの夫が現れて助けてくれる。ストーカーと幽霊、いったいどちらがより怖いか真剣に考えてしまいます。ま、幽霊だったらこの物語は成立しないんですけれど。主人公と同じく私が考えつくのは「双子の兄弟」。しかしそんな安直なオチもあり得ない。最終的には「実はこうでした」とあちこちから人が出てきて、ちょっと複雑にしすぎ、しかも都合よすぎの感があります。でもDVに遭っている人の切実な思いは伝わってくる。どうにか逃げて、二度とひっかからないで、安住の地を見つけてほしい。
読了日:01月28日 著者:桜井 美奈
■沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)
500頁の厚さも何のその。20頁目に至るまでにすでに面白くなっているからどんどん読めます。ガリレオ湯川教授が謎を解き明かす今回の事件は、絶対犯人に間違いないのに黙秘権を行使する奴が登場。しかも20年以上前にも殺人を犯して逃れることに成功している。遺族や親しかった人たちが鉄拳制裁を加えたいと思うのは当然。私は『オリエント急行殺人事件』よりも映画『親切なクムジャさん』を思い出しました。さすが東野圭吾だけど、やっぱり足りないんですよね、ギューッと胸を絞られるような切なさが。当人たちの気持ちを思えば十分切ないか。
読了日:01月31日 著者:東野 圭吾