夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マザーズ』

2022年02月17日 | 映画(ま行)
『マザーズ』(原題:Shelley)
監督:アリ・アッバシ
出演:エレン・ドリト・ピーターセン,コスミナ・ストラタン,ピーター・クリストファーセン,
   ビョルン・アンドレセン,パトリシア・シューマン,マリアンヌ・モーテンセン他
 
大阪市内に車で出かけた土曜日、18時ぐらいに新御に乗ればきっとババ混み。
わりとよくあるパターン、シネ・リーブル梅田で映画を観てから帰ることにしました。
 
2本ハシゴの1本目は2016年のデンマーク/スウェーデン作品。
 
本当は、これを観るつもりじゃなかったんです。
『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)同様に、妊婦さんは絶対観ちゃダメなやつ。
もちろん私は妊婦じゃありませんが(笑)、怖いに決まっているじゃあないですか。
世の中に「マタニティホラー」というジャンルがあるなんて知りませんでしたが。(^^;
 
観る気ゼロだったのになぜ観ることにしたのかといえば、
私の前に並んでいたひと2名が、ふたりともこれを観る様子だったから。
えっえっ、そんなに面白いん? ほなら私も観てみよかなって。
 
監督はイラン系デンマーク人のアリ・アッバシ。
衝撃的だった『ボーダー 二つの世界』(2018)の監督です。そう知った時点でもう気味が悪い。
 
ルーマニア人のシングルマザー、エレナは、ブカレストの実家に幼い息子を預け、
デンマーク人夫婦、カスパーとルイスに住み込みの家政婦として雇われる。
 
夫婦は資産家でありながら、静かすぎる湖畔の一軒家に住み、
電気も水道も引かずに自給自足の生活を送っていた。
携帯が使えないが、かろうじてある固定電話は自由に使ってよいと言われる。
 
うら寂しい暮らしが始まるが、カスパーもルイスも善人のようだ。
貯金して家族にアパートメントを買うという目標があるエレナは、
夫妻のためにかいがいしく働き、信頼を得て毎日を楽しむようになる。
 
ある日、ルイスから予期していなかった相談が。
ルイスは妊娠しても流産してしまう体質で、それを何度か繰り返した後、
死産したときに子宮を摘出したと言う。
ゆえに自分はもう子どもを望むことができないが、冷凍した卵子がひとつあるのだと。
エレナに代理母になってほしい。もしも引き受けてくれるなら、
アパートメントの購入費用を出すし、今後家政婦の仕事をしなくてもよいと。
悩んだ末、エレナは引き受けることに。
 
お腹の赤ちゃんは順調に育っていると思われたが、
あるときからエレナはこの赤ん坊が自分を殺そうとしていると感じ始める。
げっそりとやつれ、悪夢にうなされるようになって……。
 
何が起こるわけでもないんです。だから余計に怖い。
これをひと言で片付けるならマタニティブルーということになりましょうか。
エレナの正気がどんどん失われてゆき、赤ん坊を胎内から掻き出そうとする。
狂気以外の何ものでもありません。
 
これで終わりかなと思いきや、その後が結構長い。
ネタバレになりますが、エレナは亡くなり、赤ちゃんは無事生まれる。
嬉々とするルイスに対し、カスパーのほうは赤ん坊が怖くて仕方ない。
夜中に赤ん坊が妙な音を発していると感じ、赤ん坊から攻撃されることすら考えています。
エレナと同じように正気を失っていくんですねぇ。
 
もうひとつ、特筆すべきは、ビョルン・アンドレセンが出演しているということ。
『ミッドサマー』(2019)で彼の姿に驚いた人も多いでしょう。
本作はそれより前の作品ということになります。
ルイスが信頼する呪術師なのかな、レオという役名で登場しているのですが、
彼すらこの赤ん坊を見て何かを察して怯える表情が怖い。
だから何なん!? いったいこの赤ちゃんが何だっちゅうの!?←最後まで観ても明かされず。
 
赤ん坊の目玉が真っ黒だったりキラリン♪と光ったりとか一切ないのに、
そうなりそうな予感を常に持たされるものだから、ホラー苦手な私はビビりまくり。
観終わってどんよりしましたが、でも面白かったからいいや。
これが一日の締めくくりの映画ならツライけど、この後もう1本観たから大丈夫(笑)。

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