夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スティルウォーター』

2022年02月03日 | 映画(さ行)
『スティルウォーター』(原題:Stillwater)
監督:トム・マッカーシー
出演:マット・デイモン,アビゲイル・ブレスリン,カミーユ・コッタン,
   リル・シュヴォ,イディル・アズーリ,ディアナ・ダナガン他
 
TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの〆。
21:10の上映開始時点でへろへろでしたが、これがまた超面白くて。
奇跡的に4本ともまったく眠気に襲われず。
 
“スティルウォーター”が地名だとは知りませんでした。
と思ったら、偶然読んでいた『償いの雪が降る』に出てきたのがまさにそこで。
 
アメリカ・オクラホマ州スティルウォーターに暮らす肉体労働者ビル。
油田の閉鎖で職を失い、今は建設現場で日銭を稼いでいる。
 
彼の一人娘アリソンは現在フランス・マルセイユの刑務所にいる。
留学していた彼女は、ルームメイトのリナを殺害した容疑で有罪になり、5年前から服役中。
面会に訪れたビルにアリソンは無実を訴え、弁護士に再調査を依頼してほしいと言う。
しかし、弁護士は再調査の価値はないとビルを追い払う。
 
娘からの信用は皆無のビルは、弁護士に追い返されたことをアリソンに告げられず、
代わって自分が真犯人を見つけることを決意。
金はない、言葉も通じない異国の地にしばらく滞在するのだが……。
 
娘の信用がない理由は途中で明かされますが、妻を喪った後の彼は酒浸り。
アリソンの世話は亡き妻の母親シャロンに任せっきりで、
父親らしいことは何ひとつしてきませんでした。
今は断酒して娘のためになりたいと思っていますが、なかなか。
 
そんな彼に手を差し伸べるのは、シングルマザー舞台女優ヴィルジニー。
『ハウス・オブ・グッチ』でパトリツィアから追い出された女性パオラ役だった、
フランス人女優のカミーユ・コッタンが演じています。
彼女の娘マヤ役のリル・シュヴォがこのうえない可愛らしさ。
このふたりが荒んだビルの心を解きほぐしていきます。
 
アリソンを演じるのは子役から着々とキャリアを伸ばしているアビゲイル・ブレスリン
あの可愛らしさはもうなくて(笑)、ちょっとおばちゃん化しているふうですらありますが、
この役にはまぁ合っていたかなぁ。
 
真相は如何に、という面白さもありますし、
スティルウォーターからマルセイユへとやってきてまた戻ってゆくビルの、
その心情は計り知れないものがあります。
マルセイユの公営住宅は『レ・ミゼラブル』(2019)のそれを思い出して怖いぐらいでした。
タクシーの運転手に行き先を告げて「正気か」と言われるような場所って、日本にもありますか。
 
幸せな話ではない。
でもしみじみと噛みしめたい物語です。

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